谷内修三

権力にこびつづけるマスコミ、マスコミを支配する権力。「記事」そのものを分析することで、…

谷内修三

権力にこびつづけるマスコミ、マスコミを支配する権力。「記事」そのものを分析することで、マスコミと権力のいびつな関係を指摘し続けます。 詩人、評論家。著書『詩を読む 詩をつかむ』『谷川俊太郎の「こころ」を読む』『詩人が読み解く自民党憲法案の大事なポイント』。

最近の記事

ポスト岸田(読売新聞の「読み方」)

 2024年08月16日、17日の読売新聞の一面の見出し。 ポスト岸田 相次ぎ意欲/小林氏 推薦20人めど 麻生氏 茂木氏支持に難色 小林氏 19日立候補表明へ/麻生氏 河野氏の出馬了承 「早期解散・秋選挙」広がる  読売新聞は、総裁選を岸田対河野の対戦と見ている。小泉は、総裁選へ目を向けさせるための「ダシ」につかわれている。  で、なんのために岸田を辞めさせ、「新顔」を必要とするのか。早期解散・総選挙が必要なのか。自民党政権への「不信」がつづいているというのが「表面的

    • 岸田退陣(読売新聞の読み方)

       岸田が突然、退陣を表明した。自民党総裁選(9月30日)まで一か月半。なぜ、いま?  いろいろな「見方」があるが、「新総裁」が舞台裏で決まったからだろう。「政治とカネ」の問題に「ケジメ」をつけるためと言っているが、これは表面的。だいたい、そう言わなければ、次の衆院選で敗北は必至。それだけはダメだ、とあらゆるところからケチがついて、もう持ちこたえられなくなったのだろう。  で、舞台裏で決まった「次期総裁」はだれ?  読売新聞2024年08月15日の朝刊(14版・西部版)の記事は

      • 日米2プラス2の読売新聞の「書き方」

         2024年08月02日の読売新聞(西部版・14版)に7月28日に行われた日米2プラス2の解説記事がのっている。編集委員室・内田明憲が書いたものだ。  この2プラス2は、4月の日米首脳会談で「日米の指揮・統制の枠組み」を決めたことにつづく「実務会議」である。「日米の指揮・統制の枠組み」というのは、簡単に言いなおせば、何かあったとき、アメリカ軍が自衛隊を指揮しやすいようにする「枠組み」をつくるというものだった。だからこそ、バイデンが「手離し」で岸田を持ち上げた。  で、実際に、

        • 読売新聞・特ダネ記事の読み方

           2024年07月18日の読売新聞(西部版・14版)に、「特ダネ」が載っている。見出しに、 台湾上陸 1週間以内/中国軍、海上封鎖から/日本政府分析/日米の迅速対応 焦点  記事は、こう書いてある。  日本政府が中国軍の昨年の演習を分析した結果、最短で1週間以内に、地上部隊を台湾に上陸させる能力を有していることがわかった。政府は従来、1か月程度を要すると見積もっていた。中国軍が米軍などが反応するまでの間隙(かんげき)を突く超短期戦も想定しているとみて、警戒を強めている。

        ポスト岸田(読売新聞の「読み方」)

          特ダネ記事の「危険性」(読売新聞を読む)

           2024年07月11日の読売新聞(西部版、14版)に、「特ダネ」が載っている。リーク先は「複数の政府関係者」。誰かがリークし、それが本当かどうか確かめるために、別の政府関係者にも確かめたようだ。  政府は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」で、自衛隊の新任務を創設する方向で調整に入った。武力攻撃事態に至らない平時に、発電所などの重要インフラや政府機関を守るため、攻撃元サーバーへの侵入・無害化措置を行う権限を与えることを検討している。  複数の政府関係者が

          特ダネ記事の「危険性」(読売新聞を読む)

          特ダネ記事の「いやらしさ」(読売新聞を読む)

           能登地震から7月1日で半年。その前日、2024年06月30日の読売新聞に「輪島4地区 集団移転検討」という記事が載っていた。「特ダネ」である。なぜ「特ダネ」とわかるか。  記事の前文。  能登半島地震の被災地・石川県輪島市で、少なくとも4地区(計257世帯)が集団移転を検討していることがわかった。今回の被災地で計画が明らかになるのは初めて。いずれも高齢化と過疎が進む主に山あいの地区で、道路寸断などで一時孤立した。住民らは災害時に孤立するリスクの低い場所への移転を希望してお

          特ダネ記事の「いやらしさ」(読売新聞を読む)

          「資源」ということば(読売新聞の「書き方」、あるいは「罠」)

           最近、読売新聞でつづけて「資源」ということばに出合った。いずれも「安保問題」に関してのアメリカ人の発言である。とても奇妙なつかい方をしている。  ひとつは2024年6月6日の、欧州各国がインド太平洋で「安保を強化している」というもの。アジア安保会議に出席した米調査研究期間ジャーマン・マーシャル財団の中国専門家、ボニー・グレーザー。  南シナ海、台湾海峡で欧州の艦艇が活動しているのは「(この地域の)安定維持に欧州が貢献する意志があるという中国へのシグナルになっている」と語った

          「資源」ということば(読売新聞の「書き方」、あるいは「罠」)

          ジョナサン・グレイザー監督「関心領域」(つづき)

           きのう書けなかったことのつづき。  「距離」を考えるとき、きのう触れなかたっふたつのシーンが気にかかる。  ひとつは、ラストのアウシュビッツ資料館(?)の映像。収容されたユダヤ人の鞄、靴が積み上げられている。その前にガラスの仕切りがある。そのガラスが気になる。私はアウシュビッツを訪問したことがないのでわからないのだが、あるガラスのせいで、ずいぶんこころが落ち着くのではないだろうか。(落ち着くという表現でいいかどうかわからないが、とりあえず書いておく。)もしガラスの仕切りがな

          ジョナサン・グレイザー監督「関心領域」(つづき)

          ジョナサン・グレイザー監督「関心領域」

          ジョナサン・グレイザー監督「関心領域」(★★★★★)(Tジョイ博多、スクリーン5、2024年05月24日) 監督 ジョナサン・グレイザー 出演 クリスティアン・フリーデル、サンドラ・ヒュラー  注目したのはふたつのシーン。  ひとつ目は、リンゴをひそかに配給(?)していた女性が、お礼の楽譜をみつけ、それをピアノで弾いてみるシーン。無残に殺され、死んでいくしかない人間がつくりだした、その音。彼は(彼女かもしれないが)、その音を実際に聞くことはない。音楽家の頭のなかには音が鳴

          ジョナサン・グレイザー監督「関心領域」

          「落下の解剖学」と「悪は存在しない」

           最近評判になった二本の映画。共通点は、脚本がともに完璧であること。違いは、「落下の解剖学」には偶然というか、発見があるが、「悪は存在しない」には偶然の発見がないということ。  具体的に言うと。  「落下の解剖学」は、前に書いたが「音」がキーポイントになっている。起承転結の「転」の部分で、少年の弾くピアノの音が突然透明な輝きを発する。びっくりすると同時に、その瞬間、少年の「こころ」がわかるのだが、驚いているのは私(観客)だけではない。弾いている少年もびっくりしている。自分には

          「落下の解剖学」と「悪は存在しない」

          濱口竜介監督「悪は存在しない」(★★★★)

          監督 濱口竜介 出演 山の風景  映画の冒頭、カメラが冬の木立をとらえる。下から、梢を見上げる形で。その木立の緑が、セザンヌの緑に見える。灰色に、とてもよく似合う。森を下からとらえた映画では、黒沢明の「羅生門」を思い出すが、あのぎらぎらした空ではなく、この映画では深く沈んだ緑、灰色と黒に侵食されながら、それでも保たれている緑が、さらに深く沈んで行く。見ているうちに、見上げているのではなく、見下ろしていような感じになる。たぶん、灰色の空のせいで。灰色は、凍った雪の色にも見える

          濱口竜介監督「悪は存在しない」(★★★★)

          自民党のキックバック問題

           自民党の裏金、パーティー券収入のキックバック問題。いまでは、だれもキックバック問題とは言わないようなのだが。2024年03月31日の読売新聞(西部版・14版)を見ながら(読みながらではない)、私は不思議な「フラッシュバック」に襲われた。  見出しに「安倍派元幹部 離党勧告へ」。どうやら、安倍派の大物(?)を処分することで、問題にカタかつけようとしているのだが、ふと私の頭の中に蘇ってきたのが、田中首相の逮捕である。表向きは、やっぱり金銭問題。ロッキードから金をもらっていた。そ

          自民党のキックバック問題

          「オッペンハイマー」の問題点、その2

           物理学者、数学者は、核分裂、核融合の夢を見るとき、あの映画のような光が飛び回るシーンを夢見るか、という疑問を書いた。私は彼らはイメージではなく、数式で夢見ると思ったからだ。これに対し、ある友人が「それではふつうのひとにはわからない」と言った。なるほど。では、ふつうのひとはあのシーンで、核分裂や核融合の仕組み、あるいはブラックホールのことがわかるのだろうか。私はふつうのひとのように想像力が豊かではないのか、あんなシーンを見ても、何も感じない。「もの」のなかで、電子や素粒子があ

          「オッペンハイマー」の問題点、その2

          クリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」の酷たらしさ

          クリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」(★)(Tジョイ博多、スクリーン9、2024年03月29日) 監督 クリストファー・ノーラン 出演 キリアン・マーフィ、ロバート・ダウニー・Jr、エミリー・ブラント  私は数学者でも物理学者でもないから、私の想像が間違っているのかもしれないが、オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)の頭の中で繰り広げられる「核爆発」の映像(イメージ)がなんとも理解できない。星が爆発し(死に)、ブラックホールが誕生するという映像(イメージ)も信

          クリストファー・ノーラン監督「オッペンハイマー」の酷たらしさ

          大谷の問題(素朴な疑問)

          私が不思議でしようがないのが、あれだけの金を稼ぐ人間が、あれだけの金額を「自己管理」していたかのように報道されていること。 簡単に言いなおすと、私が大谷なら、まず「金を管理する人間」を雇う。 球団からどんな形で金が支払われるか知らないが、日本のサラリーマンの給料のように、毎月銀行振込というわけではないだろう。 その巨額の金を、どうやってつかう。 これだって、年金生活者にはおもいつかないが、日々つかえる金なんて、どんな金持ちだって「限度」がある。 毎日自家用飛行機を買うことはな

          大谷の問題(素朴な疑問)

          こころ(精神)は存在するか(4)

           和辻哲郎全集第五巻。545ページ。 法華経は文学と哲学との合い子であって、純粋の文芸作品でもなければ、また純粋の哲学書でもないのである。同じようなことはプラトーンの対話篇についても言える  読みながら、これは和辻の文章についても言えるのではないか、と思う。和辻の文章には、文学的魅力と哲学的魅力がある。逆に言った方がいいかもしれない。哲学的魅力と文意学的魅力がある。別な言い方をすると、哲学(論理)を追究して言って、ある瞬間に、論理を打ち破って感覚が世界を広げる瞬間がある、

          こころ(精神)は存在するか(4)