岸田退陣(読売新聞の読み方)
岸田が突然、退陣を表明した。自民党総裁選(9月30日)まで一か月半。なぜ、いま?
いろいろな「見方」があるが、「新総裁」が舞台裏で決まったからだろう。「政治とカネ」の問題に「ケジメ」をつけるためと言っているが、これは表面的。だいたい、そう言わなければ、次の衆院選で敗北は必至。それだけはダメだ、とあらゆるところからケチがついて、もう持ちこたえられなくなったのだろう。
で、舞台裏で決まった「次期総裁」はだれ?
読売新聞2024年08月15日の朝刊(14版・西部版)の記事は「刷新 若手に期待」という見出しで、まず小泉進次郎、小林鷹之を紹介している。その記事の書き方が、おもしろい。
小泉について、こう書いている。
「総裁選で変わったことを示せなければ、自民党は終わってしまう」
小泉氏は周囲にこんな思いを吐露している。周辺は「出馬を視野に入れて準備を進めている。気持ちも固まりつつあるようだ」と明かした。
「周辺」は「出馬もある」と言っている。が、小泉自身の「動き」は書いていない。
一方、小林は、どうか。
小林氏は知名度は低いものの、「新顔」として注目を浴びている。14日には首相の不出馬表明を受け、「党が生まれ変わったと思ってもらえるような改革努力を我々が引き継いでいかなければならない」とのコメントを出した。安倍派で当選同期の福田達夫・元総務会長(57)ら中堅・若手が擁立に向けて会合などを重ね、出馬に必要な推薦人20人のメドはついたとされる。小林氏を推す衆院議員は「近く出馬表明に踏み切るだろう」と語った。
首相退陣を受けた「コメント」を出している。(小泉は、出したかどうか知らないが、読売新聞で読むかぎりは、出していないようだ。出しているなら、紹介するだろう)。さらに「出馬に必要な推薦人20人のメドはついたとされる」といちばんのポイントを明記している。
これは、他に出馬が予想される(?)石破について、
石破茂・元幹事長(67)も訪問先の台北市で出馬意向を表明したが、記者会見で「推薦人20人をそろえるのは非常に難しい作業だ」と明かした。
こう書いているのと比較すると、小林が「先行」していることは明瞭である。岸田退陣劇の裏側で、推薦人20人を確保したのは小林だけである。ほかの候補者は、確保していない。
つまり、岸田は、小林が総裁選に出馬するのに必要な推薦人20人を確保したことが明らかになったから、退陣表明をしたのだ。単に推薦人20人確保だけではなく、たぶん、根回しもすんだから退陣表明をしたのだ。
それをうかがわせるのが、次の文章。
ただ、小林氏は9日のインターネット番組で、政治資金規正法違反事件で処分された安倍派議員が要職などから外れている現状を見直す必要があると発言し、「改革に逆行している」との批判も広がった。
小林は、すでに「要職」に安倍派議員を復活させる「閣僚名簿」も用意している。それに対しては反発はあるようだが、すでにそこまで準備を進めているのは小林だけである。わざわざ「批判」も紹介しているのは、先に新聞に書いておけば、「衝撃」が少ないからである。これは、読売新聞が「よいしょ記事」を書くときの、重要な要素である。
小泉については、
無派閥を貫く小泉氏が出馬を決断した場合、党内で幅広い支持を集めつつ、いかに派閥の力学に左右されないかが課題になる。
と「課題」を紹介しているが、これは逆に言えば、小泉がまだぜんぜん動いていない「証拠」でもある。
私は政治には疎いから、小林鷹之という人物については何も知らなかったが、突然、新聞に「候補」と書かれ、しかも、その動きまで、批判を含めて書いている。これは、新首相が小林で決まっていることを「暗示」するものである。
きっと、これから小林の顔、発言がマスコミでどんどん報道され、国民にアピールされる。そうやって小林人気をあおり、総裁誕生(新首相誕生)後、すぐに国会を解散し、衆院選で勝利する。そこまでシナリオを書いて(そういうシナリオで、いろいろな人を説得し)、その結果として岸田が退陣表明をしたのである。そして、読売新聞は、この「岸田シナリオ=作者は岸田ではなく、ほかの人だと思う)を「応援」している。次の衆院選で「自民党大勝」の先取り応援をしている。
読売新聞の記事は、ほんとうに、「裏」が透けて見えて、とてもおもしろい。
(いちいち引用しなかったが、これまで「総裁候補」としてうわさされた石破や河野太郎、茂木敏充、高市早苗、野田聖子については、いろいろ「難癖」をつけている。詳細は、紙面参照。)
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