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今だから月姫を語ろうと思う(ネタバレなし)

TYPE-MOONが好きだ。
今ではアプリ売上げランキングで上位に常に居続ける「Fate/Grand Order(通称FGO)」や、アニメでは最近話題の鬼滅の刃を手掛けたufotableが作成した「Fate/Stay night Unlimited Blade Works」やまどマギなどの代表作を持つ虚淵玄がシナリオを担当した「Fate/Zero」などクオリティが高い作品を出し続けて世のファンを熱狂させている企業がTYPE-MOONです。
遡れば、ufotableが奈須きのこ原作の「空の境界」(空の読みは「から」です。「そら」じゃないのです。原作は小説で読み方がわからないので、しばらく「そら」だと思っておりました。略称が「らっきょ」だから尚気づきにくいですね!)を7部作の映画としてミニシアター系で上映していたり、アーケードゲームでは渡辺製作所と作成した月姫のキャラクターを題材とした格闘ゲーム「MELTY BLOOD」あたりもTYPE-MOONのコンテンツとして皆さんが楽しんだのではないでしょうか?
毎年実施される、インターネット業界の悪ふざけであるエイプリルフール企画にかける情熱とコストとクオリティがものすごいことでも有名で、TYPE-MOONについて語ろうとしたら、酒樽が3つほど必要なること間違いなしですし、ギルガメッシュに王の酒を出して貰わないといけなくなるほど、素敵な場になることは間違いないのですが、今回は私をこのインターネットの海という名の底なし沼に引きずり込んだゲームと言っても過言ではない、TYPE-MOONの同人時代の初のゲームである「月姫」について話そうと思います。

月姫は2000年前後にコミケで販売されたサウンドノベルとかビジュアルノベルと呼ばれるゲームです。
↓あらすじ

物語の主人公である遠野志貴は、幼い頃に一度死にかけた後、「モノ」の壊れやすい部分を黒い線として捉えることのできる特別な眼「直死の魔眼」を持つようになった。その能力を持つ負担に苦しんでいたときに、偶然出会った女性からたしなめられ、その眼の力を封じる眼鏡を受け取ったおかげで、外見上、普通の少年として平凡な生活を送ることができた。しかし、子供の頃から預けられていた親戚の家から、実家に帰ることが決まった頃と時を同じくして起きる、全身の血液を抜かれて人が殺されていく連続猟奇殺人事件が、志貴の生活を非日常へと急激に変化させてゆくこととなる。
Wikipedia(月姫)より引用

IFを楽しめるマルチエンディング

選択肢を選ぶとストーリーが変化するマルチエンディングで、5人のヒロインは必ず1つのTrue Endを持ち、そして5人中4人はキャラクターに応じてGood EndかNormal Endのどちらかが割り振られているわけですが、これが素晴らしい。
面白い小説に出会えた時に、よく思うのです。この魅力的な登場人物達の物語をもっとみたい。主人公はあのキャラとくっついたけど個人的にはこっちのキャラとくっついて欲しかった。もし、あのキャラがあの行動をしなかったらどうなっていたんだろう、と。
自分の嗜好とマルチエンディングのゲームはとても相性が良かったのだと思います。
マルチエンディング自体は当時から恋愛シミュレーションゲームやノベルゲームなどでは珍しいものではありませんでしたが、どのキャラも好きになってしまう登場人物の背景や個性の厚み、今でもFateシリーズに受け継がれるほどの多様で綿密な世界観の設定、それらを緊張と緩和で紡いていくシナリオ。もう三冠王と言って良いでしょう。何のかはわかりませんが。
自分の嗜好と好みの作品内容が噛み合うことで、発売から20年経った今でも好きな作品として出てくるほどの衝撃を与えてくれました。

私としては物語はハッピーエンドの方が好きなのですが、どうしてもハッピーエンドというものは物語内で様々な事件が起きれば起きるほどご都合主義的になってしまうものです。それはそれで好きなキャラクターの幸せな姿を拝めるということでありがたい話ですし、大好きなのですけれども、それだけですとせっかくの綿密な世界観から少し一貫性が抜けていってしまう様な感覚を受けてしまいます。
月姫のTrue Endは、世界観やシナリオ、それぞれのキャラクターの背景や目的などの整合性を保ったまま、一番物語として美しい終わり方を致します。True Endは物語の最中に自身が感情移入していったキャラクターが、必ずしも幸せになるわけではないんですよね><
でもそのキャラクター達の信念であったり、譲れないものであったりで幸せになる選択肢を選べない時があるわけです。それを後押しも出来ず止めることも出来ないプレイヤーのわたくしは、ただただ見守り、True Endを迎えるわけです。
そこに残るのはTrue Endによる物語を堪能した満足感と、キャラクターのその後を憂う、しこりのような引っ掛かり。
その余韻を味わいながら、Good Endを迎えると満足感を残したまま、しこりも流され、エンディングを迎える度に月姫の世界観にずっぷりと、ターミネーター2のシュワちゃんくらい沈み込んでいくのです。

また、通常のエンディングとは別にBad Endと呼ばれるゲームオーバーになるエンディングがストーリーの随所にあり、選択肢を選んですぐに主人公が即死する物もあって、セーブの重要性を教えてくれます。
Bad End後には「教えて知得留先生」という、そのBad Endに来てしまった理由や回避方法を教えてくれるコーナーがあるのですが、ここはストーリーとは違った世界観で後述するメインヒロインの2人がふざけ倒して掛け合いしており、これがまた月姫という作品内の緩急の緩として楽しませてくれて、月姫ファンならすべてのBad Endを見るために主人公の遠野志貴くんを幾度となく死地に送り込んだことでしょう。

ヒロインの魅力

月姫には5人のメインヒロインが居ます。
・アルクェイド・ブリュンスタッド
・シエル
・遠野秋葉
・翡翠
・琥珀

アルクェイド・ブリュンスタッドはアルクェイドやアルクと呼称されるキャラで、金髪で赤い眼を持つ、月姫の物語の主題になる吸血種の中でも特別な真祖と呼ばれる種別となります。
月姫の正ヒロインであり、TYPE-MOON主催のキャラクター人気投票で4度中すべてで1位を獲得するフォータイムスチャンピオンです。つまり、ほぼアーネスト・ホーストです。
アルクはですね、金髪で天真爛漫で猫みたいに気まぐれで志貴を振り回すんですよねぇ。でもそれは社会経験が無かったり、知識はあるが人とコミュニケーションするということがなかったりという背景があるわけです。そんな無垢で綺麗であるのに可愛いという素晴らしい正ヒロインにふさわしい魅力を持っているからこそ?彼女に課せられた責任や障害、重圧、運命はあまりにも大きいのです。
アニメや漫画になっている「真月譚月姫」は正ヒロインである彼女のルートです。「真月譚月姫」は長さの都合上かゲームよりもシリアス成分多めというか、ふざけ成分が薄め(これはTYPE-MOONのゲームにおいてありがちではあります。その分ふざけ倒しているカーニバル・ファンタズムというアニメがあるので、TYPE-MOONの魅力であるふざけ成分はそちらで摂取しましょう)ですが、ストーリーを把握するには十分かと思います。

シエルは青髪にメガネの先輩属性とメガネ属性とカレー属性を併せ持つ、お姉さん的なヒロインとなります。
月姫は5人のヒロインのルートがあるわけですが、ざっくりと「表」と「裏」に方向性が分けられます。アルクとシエルのルートが「表」で、学校に通いながらあらすじに記載の猟奇事件に別々の立場から迫っていくものです。
シエルルートはいろいろな形で、アルクと対をなしています。
例えば、アルクェイドルートではヒロインは志貴をどんどん物語の中心に引っ張っていく一方で、シエルルートではヒロインは志貴になるべく首を突っ込まないようにと諭してくるわけです。
シエルルートでは自由に動こうとする志貴がシエルを困らせることも多いのですが、なんだかんだでシエルは志貴には甘いんですよ。
正義・優等生の様な振る舞いが多いキャラであまり本心などが出にくいのですが、物語が進み核心に近づいていくとシエルの過去が明らかになり、それに合わせて感情も表に出てくるわけです。
性格も、立場も、主人公との関係でも様々な顔を持つのが、シエルの魅力だと思います。
他のヒロインのルートでも主人公を助けてくれるとても優しい先輩です。

遠野秋葉は、主人公である遠野志貴が物語の冒頭で戻ってくる、遠野家という名門の現当主であり、志貴の妹です。
黒髪ロング、貧乳、ツンデレ、妹、名門令嬢と、属性の中でも強めなものを持っていながら、芯がしっかりと通った女性です。
誰よりもと言えるくらい、志貴のことを想っている・愛しているのに、それを本人にはなかなか素直に言えないんですよねぇ。しかも志貴を優先するがあまり、自身を含む他のものを犠牲にすることを厭わなくて、プライドも高いので様々なところで軋轢を生んでしまうのです。
先述の、月姫の表裏でいうと秋葉、翡翠、琥珀のルートは「裏」で、別名「遠野家ルート」と呼ばれます。
「裏」ルートは共通ルート後、ほぼ遠野家の屋敷と夜の街とキャラクターの心理描写で物語が進んでいくためです。
弱い面や主人公のための行動は表に見せず、他のキャラクターなどには一切媚びず、でも内面はとてもか弱いギャップが秋葉の魅力ですかね。

翡翠。かわいい。











翡翠は遠野家に仕える、双子使用人の妹です。紫に近い様なピンク色の髪で、主人公の遠野志貴付きでメイド服を着ております。もう一度言います、メイドさんです。
口数は少なく、無表情であることが多いですし、秋葉が決めた遠野家のルールに厳しいように描写されるのですが、立場上逆らいにくいこともあり志貴の門限破りを黙認していたり、志貴の帰りを門で待っていたり、場合によっては雇用主である秋葉より志貴を優先するような献身性が胸を打ちます。
かわいい。
月姫では、死の線が見える魔眼持ちの主人公を筆頭に、吸血鬼やら、身の丈半分の剣を投げつけてくる聖職者やら人外の力を持ったキャラクターが沢山出現しますが、翡翠はその中でも戦うような能力は一切持たず(「MELTY BLOOD」ではめちゃめちゃ戦っていますけど)、事件や誰かの意思によって死地に赴く主人公の帰ってくる場所の象徴であると思います。
かわいい。
無表情と言いつつ、照れ屋で顔を赤くすることも多く、翡翠ルートでなくても、志貴が自分の部屋に帰った際に翡翠の照れ顔に癒やされたものです。
かわいい。

琥珀さんは、遠野家に仕える双子使用人の姉で、翡翠と同じピンク色の髪をしております。
割烹着を着ており、翡翠とは対象的にいつも笑顔を絶やさない明るい性格で、遠野家で唯一お姉さん的な魅力を発揮する人物です。
月姫は、コミケで体験版配布、半月板販売、完全版販売(その後はPLUS-DISC、歌月十夜)と段階を経てシナリオが増えていったわけですが、琥珀さんは半月版時点では、エンディングのあるメインヒロインではなく、ユーザからの反響と人気が高かったため、完全版では隠しシナリオという位置づけでメインヒロインとしてエンディングを持つことになります。
当初はメインヒロインではなかったという設定もあるためか、いつも絶やさない琥珀さんの笑顔の裏には、なかなか壮絶な思いや過去があります。
アルク、シエル、秋葉のルートでは、笑顔で優しく志貴とプレイヤーであるわたくしを迎えてくれたり、たまに叱ってくれる頼りになるお姉さんでありながら、翡翠・琥珀ルートで判明する琥珀さんの想い。
そして琥珀ルートのエンディングは、クリア順からして月姫という作品の締めに相応しい、味わい深い終わりになるわけです。

死ねない物語

メインヒロインをメインヒロインと表記していたには理由があります。
志貴が通う学校の同級生である、弓塚さつき、通称さっちんを語らずして月姫を語ったとは言えないのです。
弓塚さつきは、琥珀さんとは逆に専用ルートがあったらしいのですが、諸般の事情によりカットされ、エンディングの無いサブヒロインになってしまったたとのことです。諸般の事情の詳細については全くわからないのですが、その不遇な状態をいじられ続けています。
月姫本編のストーリーの事情で、続編とも言えるファンディンクの歌月十夜では出番が無く、格闘ゲーム「MELTY BLOOD」では、さっちんの必殺技名が「見果てぬユメを掴むさっちんアーム」や「届かないユメを追うさっちんアーム」としていじられ倒しております。
しかし、人気投票ではメインヒロイン達に匹敵する人気であり、カットされたというシナリオも"他のヒロインの話が食われてしまう"ほどの完成度を誇ると言われていますし、20年経った今でも、さっちんルートを望む人が大勢居ます。わたくしです。
個人的には、エヴァの映画の完結、ハンターハンターの完結と並んで、それを見るまでは死ねない3大物語の1つとして君臨しています。

待ち望む続編

――本職というと、リメイク版『月姫』にも期待したいところです。
奈須:いま少しだけテストプレイをしているけど、おっさんゲーマーほど超楽しいと思うよ。

【FGO】奈須きのこ氏インタビューで迫る過去・現在・未来。第2部完結後の構想は2パターン存在(3/4)

月姫は2008年にリメイクの制作が発表されたものの、出る出る詐欺を繰り返していたのですが、2019年にファミ通のインタビューで、TYPE-MOON創設者の一人であり、月姫シナリオライターの奈須きのこ氏がリメイク版のテストプレイについて言及しています。
あれから20年待てたわけですし、あと20年くらいなら待てる気がします。嘘です。早くやりたいです。
リメイク版は、さっちんルートの追加や、新キャラクターの追加なども楽しみですし、当時同人版でも素敵な登場人物とシナリオだった作品が、現在商業として大成功を収めているTYPE-MOONの力やサプライズ精神が加わるとどうなることやらと夜も眠れません。嘘です。毎日寝てます。

続編で言えば、まだ奈須きのこ氏の脳内にしか無いという「月姫2」も、この世に出る可能性が無いことはないはずですので、生きる希望の1つとして楽しみにしています。

月姫プレイの思い出

作品の魅力は(全然語り足りないですが)ある程度は伝えられたとして、当時の思い出を少々。
わたくしが最初にプレイしたのは2001年の夏〜秋頃ですかね。一緒にフットサルをしていた年上の先輩から、CD-ROMを借りてプレイしました。
完全版が出て歌月十夜が出た後くらいだと思います。
これだけ作品愛を語っておいてなんですが、初見で全エンディング見ることは無かったです。
なぜかと言うと、当時使っていたパソコンがCerelon 600Mhzだか800Mhzくらいでしたかねー?
WindowsMEで、メモリも256MBとかしか無かったんじゃないかと。
そのせいで、そんなにマシンパワーを必要としないはずのビジュアルノベルである月姫をプレイするのにも一苦労で、通常のプレイであれば1秒ほどで切り替わるキャラの立ち絵や背景画像の切り替えですが、わたくしの環境では、テキストが変わるだけならすぐ、キャラの立ち絵は変更は10秒くらい待つ、背景切り替えは2分待ちといった苦行で進めていました。
ほんとISDNで画像DLしているくらいのイメージです。
多分アルクェイドルートは、その苦行の中でもクリアしたんですよね。
シーンの切り替えなんて通常小説を読む速度であれば1,2分に1度あるような頻度ですが、そんな苦行状態でもクリアしたくなる作品ってものすごいですよね。とはいえ、すべてのエンディングを見るまでは至らず。
一発死亡Bad Endの選択肢があるのに、そこまで読み進めた時間が無駄になるとかかなり致命的なので、セーブしていようが選択肢選びは真剣でした。

そこから数ヶ月だか半年くらい後に、ネットで知り合った友人の力を借りて、自作PCを組み立てたおかげで、ノベルゲームを正常にプレイできるようになりました。
再び月姫の世界に飛び込むために起動したときに本当に感動したんですよね。
あ、こんなにサクサク動くんだって笑

作品を楽しむ上での障害がなくなり、Bad Endにも安心して突っ込めるようになり、攻略サイトも多少見ながら全シナリオを堪能しました。
アルクェイドルートだけクリアして月姫を知った気になっていましたが、こんなにも世界観に広がりがあり、キャラクター達のいろいろな面に触れて、月姫という作品やその周辺に広がるコンテンツにのめり込んでいくのです。

ファンディスクのPLUS-DISCや歌月十夜、小説作品の空の境界も大好きですし、商業化初の作品であるFate/Stay nightは予約して購入しました。
様々なバックボーンを持った、英霊を召喚するというFate/Stay nightにおける発明により、Fateシリーズは現在のFGO含めて無限の広がりを見せておりますし、Fateシリーズも大好きで、また別で語りたいです。
ただ、やはり多感な時期に苦行を乗り越えて身に染みて吸収した、月姫という作品はとても思い入れがあるなぁと改めて感じます。
キャラ一人一人であるとかもっと深くネタバレも気にせず書きなぐるとかもやりたい気持ちでいっぱいでしたが、長くなりすぎるのも良くないかと思いとどめた結果がこの記事です。

現在、月姫をプレイするためには中古で買って、動作保証のない新しめのWindows環境でなんとかやるしか無さそうですが、この記事を書いていたらなんだかやりたくなって来ました。
一番現実的なのはリメイク版を待つことです。もしこの記事を読んで、未プレイだけどやりたくなった、プレイ済みだけど記憶が戻ってきてやりたくなったという方がいらっしゃいましたら、わたくしと同じ様に声を挙げていきましょう。
そうです。わたくしがこの記事を通して伝えたかったことはこちらです。

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