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エムバペ分析再考。

最近松岡沙由理選手の復帰をサポートし始めました。


オンラインでのトレーニングに試行錯誤しながら2人で良いトレーニングが詰めてきております。

原志帆選手、堀江美月選手のトレーニングも今月より始動したのでより一層選手と対話すること、一緒に試行錯誤することを楽しみながら自分自身も成長していきたいと思っています。


FCpSolsではSunnyさんはじめ、キックに特化したトレーニングが行える田所フィジカルコーチ




Jリーグアカデミートレーナーの田中五大くん等多種多様なトレーナーいますのでぜひオンライントレーニング一緒にやってみませんか?

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今回は以前にも書きましたエムバぺのスプリント記事をもう一度考えていきたいと思います。


サッカーにおいて10m~30mのスプリントが主で、ほとんどは全力疾走を伴わないことが多い。そして、多くは一瞬の加速で勝負が決まります。


エムバぺは2019年シーズンの第33節モナコ戦1点目のゴールの際には最高速度38.0㎞と驚異的なトップスピードを記録した。

トップスピードが非常に速い上に、最初の数歩の加速、そしてトップスピードに乗せるまでが非常に短い印象を受けます。

特に今回は1から4歩程度の初速の局面についても考えていきたいと思います。

彼はなぜ速いのか。



▼フリーランニング、通常スプリント



動画はボールを持っていないときの走りになります。

▼足から背中までの力伝達が上手い

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これはFCpSolsの多くの記事で書かれていることではありますが、アキレス腱~足底腱膜のバネ機構、ハムストリングス、広背筋が十分に使えていることを示します。
バネの力をハムストリングス、広背筋に伝えて推進力を得ています。
この足から背中まで力が上手く伝わっていると写真のように足裏がしっかり見えるほど蹴りあがったフォームになってきます。
この特徴に際しては前回のエムバぺスプリント記事でも述べた通りの内容になっています。



▼丸まって伸びるのくり返し

以前記事では常に良い姿勢でスプリントを行っていると言っていましたが、動画をよく見ると丸まって、伸びあがるのサイクルで走っているのがわかります。
常に姿勢を立てた状態だと足から頭の先への力の伝達が滞ってしまいます。
バネの力、つまり伸張反射を用いるには必ず緩む、伸びるという要素がなくてはなりません。

バネは緩むからこそ大きな力を発揮してくれます。
また、丸まる、伸びることで広背筋と腹筋群の反射サイクルが利用できます。

丸まることでより一層伸びるパワーを発揮できるというわけです。
丸まって伸びるについては以下の記事を参考にしていただければと思います。

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▼スタート時の丸まり

特にスタートの1歩目は身体が丸まりまがら進んでいることがわかります。
陸上競技100mのスターティングブロックからの蹴り出しでも同じことが言えますが、スタートの際には頭を下げる、背中を丸めて蹴り出していることがわかります。

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姿勢反射の中には頸反射というものがあります。
”首を曲げると足は伸びる”
”首を反らすと足は曲がる”

という反射です。
また、丸まることで落ちる力(位置エネルギー)をより利用することが可能になります。
ギアを入れて加速するときも首、体を丸めて加速する姿がとても印象的です。


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▼肘を伸ばして腕を使う

クリスチャーノ・ロナウドにも同じようなことが言えるのですが、肘を大きく後ろに伸ばして進んでいるのが印象的です。
以前書いた記事にもありますが、肘より末端を積極的に動かすことで体幹・足の回転を誘導することができます。
内側運動制御系という不随意な運動への誘導を行えるからです。
内側運動制御系は体幹・股関節の不随意的な動きを担うことができます。

また、肘の伸展を行うことで上腕三頭筋内側頭と筋連結をもつ広背筋への収縮伝達が可能になります。
そうすることで腹筋ー広背筋サイクルや足~背中までの力伝達がしやすくなります。

上記の記事でも書きましたが、肘の伸展は地面を押すという補助的な役割もあります。

以上が走りの中での全体的な特徴かなと思います。
続いては各シュチュエーションでの身体の使い方を考えていきます。


▼瞬時の加速

続いてはボールに反応して、そこに到達するまでの加速を見ていきます。
背が大きいにも関わらず瞬間移動してるのではないかと言わんばかりの速さです。

2つの動画で特徴的なのが進行方向を変える、スプリントに入る際に軽くステップを踏んでいることにあります。

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テニスのリターンでよくみられるスプリットステップによく似ています。


選択反応移動動作の予備HOPの効果を検討した文献では、予備HOPを行うことで移動速度が有意に上昇し、動作時間が有意に短縮したと報告している。
また、ターゲット到達までの時間は約100ms短縮したとしている。

ステップを踏むことで予備緊張が生じます。この予備緊張は次の動作での伸張反射を誘発しやすくなります。

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↑ステップにて予備緊張。反射を引き出す準備。

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↑ステップ後に外側の足を地面に突き刺す。あくまで外側に位置する足で蹴ろうとはせずに”突き刺している”ことがわかる。突き刺して得られたバネに加えてその後の内側の足で主に蹴り出して加速している。

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↑内脚の膝のお皿を進行方向(ボール)に向けて素早く加速しているのが見て取れる。

外側の足の地面への突き刺しはまるでbear walkの足のようです。

ステップ、そして予備緊張に関してはHOPのトレーニングにて次の動作を予測して準備することが習得できればプレーへの応用が可能だと思います。




▼ボールを持った際の加速(インサイドタッチからの加速)


右足でボールタッチすることが主なので左足を踏み込み、右足でボールタッチしながら相手を抜き去る場面です。

加速して仕掛ける場面の写真になります。

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ボールよりも前に左足を踏み込む。その際SHIKOのような態勢になっているのが見て取れます。

右の脇腹が伸ばされる。この態勢では右足が比較的自由に使えるようなポジションになります。

かつ、踏み込んだ左足裏の体重は内方に集められ、膝関節や股関節が内旋に入りやすい。いわゆるしまりの肢位になります。

右足はフリーにボールを扱え、かつ左の軸足はいつでも加速に入れる態勢と言えます。


この姿勢で相手の重心変化や動きを見極めて仕掛けることができれば、相手を抜きやすくなると考えます。

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▼ボールを持った際の加速(アウトサイドタッチからの加速)


アウトサイドでタッチして加速する場面です。

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↑予備緊張にてバネ(伸張反射)を使いやすい環境に

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↑左わき腹を軽く伸ばす(伸張)

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↑外脚を突き刺す

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↑左わき腹を伸ばした際の反射を利用して胸郭を並進させる。加えて踵の重みを利用して振る

こうすることで一瞬のうちにキレのある加速を生み出していることがわかります。

エムバぺが相手を抜き去るときによく用いるインサイドでのタッチからの加速、アウトサイドタッチからの加速パターンを考えてみました。
インサイドタッチからの加速はSHIKOトレーニングが有効であり、アウトサイドタッチからの加速は横の伸張反射を使うサイド系のトレーニングが有効だということがわかります。


走りの本質をつかみつつ、多彩な反射、理にかなった動かし方を使いこなすエムバぺ。
彼の活躍を楽しみにリーグアン観戦をしていきたいと思います。

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理学療法士/スポーツシューフィッター  安田智彦






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