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とわの庭【読書感想文】

とわの庭
著者 小川糸

 小川糸さんの本を読むのはツバキ文具店ぶりだ。黄色い色味、女の子のイラストが可愛い表紙の本。主人公は盲目の女の子だ。優しい母さんとの2人暮らし。幸せな日々が綴られていてそれはまるでおとぎ話のようで、舞台は海外なのかな?香りがする木を沢山植えれる土地があるということは大きくて森の中にあるようなカントリーなお家なのかな?と想像を膨らませながら読んでいた。

 しかし物語はどんどん雲行きが怪しくなってくる。お母さんが外に働きにでかけ始めてからどんどん幸せが崩れていく。物語の中盤に差し掛かるときにはもうお母さんは出てこず、目の見えない女の子は家の中から出ることもできず、やっと外の世界へ出れたときにはもう大人になっていた。

 はじまりはあんなに幸せなおとぎ話のような世界観だったのに、急に現実味を帯びた話になる。主人公が住んでいた家は普通に日本の一軒家だったし、親になにがあったのか、とわがどういう状態なのかがここで判明する。保護され、一人で生きていけるよう周りに助けられながら自立していく。そして盲導犬との出会い。恋人、ご近所さんとの出会い。たくさんの経験を経て、夢をたくさんもって人生を楽しんでいるとわをみると心がジーンと暖かくなった。生きているって、本当にすごいことだ。

 作中にはたくさんの香りがでてくる。特に印象に残っているのは、とわの庭に咲く花たち。知っている名前のものもあるが知らない花もあった。とくにスイカズラ。いつか道端で見つけたときはどんな香りなのか匂ってみたい。

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