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繰り返し

僕には妹がいて
その妹には娘がいる
その子は僕を

名前で呼んで
かなり懐いてくれている様子だ

だからなのか
妹の家庭は共働きで忙しく
姪っ子がひとりで留守番することが多いので
その度、都合が合えば

妹の家で
一緒に留守番をすることが少なくなく
今日もそうだった


一緒にお絵描きをしていたはずの姪っ子からの視線を感じて
「どうしたの?」と声をかけると

「かおりって、パパみたいにジョリジョリじゃないよね!」
と嬉しそうにいう
「ジョリジョリ?あーあご。ひげのことかー、そうだね、おじさんはあんまりひげ濃くないからかな」
「へー」
「でも、ほら」

「少しだけ、ジョリジョリなんだよ」

「あ、ほんとだ!」
(あ…)

無意識だった
無意識に姪っ子の小さくて細い手首を引っ張ってしまっていた
それに姪っ子は僕に懐いているから
なんの警戒心もなく笑っている
あぁ…これじゃあ、あの時の、あの人と一緒じゃないか

『ほら、触ってみて』

すぐに手を離して
距離をとる
自分から引っ張っておきながら避けるような動きをした僕に
姪っ子は不思議そうな顔をむける

『あはは、ほんとだ、かたいね』
腕を引っ張ってきた手が大きくて、強くて、怖かった
笑っておかないといけない気がした
あの記憶…

自分も同じような感覚を、恐怖を
大事な姪っ子の記憶に植え付けてしまうのではないか

無力の自分が変わりなく存在するとともに
自分も誰かにとっては、誰かを脅かす存在であるということを
意識しなければ
いつまでも「被害者」ではないのである
そう自分に言い聞かせた

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