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宇宙と繋がった男、マイケルジャクソンが教えてくれた偏見の無い世界

奇行、肌の色の変化、幼児虐待、整形…私が抱くマイケルのイメージは、物心ついた頃には当時世間で言われている良くないものにまみれていた。


でも中3の秋、学祭でダンスを踊る事になり、友人が参考に持ってきたビデオの数分間が私の価値観を180度変えてしまった。
こんなに凄い人だったなんて…!何で今まで知らなかったんだろう!

その日から20年以上、彼の作品を愛している。多分オタクの域に入るのだろうけれど(笑)それを横に置いても彼はとても魅力的な人物だし、彼を通してアメリカの文化に詳しくなった。同時に、世間の価値観に囚われ、自分の世界を自ら狭くしていた事を悔やんだ。彼の言葉を借りるなら

偏見は無知なり

マイケルジャクソン

私達は、相手を表面的な物事ですぐ決めつけてしまう。例え相手が深い信念や、それに乗っ取った行動をしていても理解しようともせずに。それを教えてくれたのはマイケルだった。



マイケルは子供の頃からトップスターだ。
10歳程の幼い少年が兄弟グループのリードボーカルを完璧なまでに勤め、全米チャートを総なめにする。貧困家庭に産まれたが早くに親が歌の才能を見出し、そこから子供らしさとはかけ離れた、虐待ともとれる厳しい練習の日々を積み重ねていく。

エンターテイメントの頂点、ハリウッドの世界。華やかで夢のある煌びやかな裏側は、人種差別やお金と欲にまみれた大人達の世界。マイケル少年の目にはどう映っていたのだろう。黒人レーベル大手のモータウンからデビューする際、制作陣は入念に世間に受けいられる方法を考えて、マイケル達をデビューさせた。
その時点で、黒人がハリウッドでいかにマイノリティであるかが窺い知れる。


声変わりでレコードが売れなくなる事を危惧したモータウンは、ストックとして300曲以上レコーディングさせる過酷な日々を強いる。この時点で働きすぎだけれど、その他にTV、アメリカ国内外を巡るコンサート、その度のリハーサルなど、学校に通う暇が無い程仕事に忙殺された子供時代を過ごした。


大人になっても常に自分を律し、病的なまでに努力し続けたのは子供時代の厳しい経験が元になっているのだろう。
そこには純粋な一つの信念があった。

肌の色で分ける不平等なこの世界を変えたい。


ベストを尽くした最高の作品を作っても、国内での評価は白人に負けてしまう。受賞式のスピーチは意図的にcmを流され放送されず、当時のMTVは黒人だと出られなかった。白人が作った有名雑誌は黒人を表紙にしてくれない。映画や音楽のスターは白人ばかり。アメリカでは、度々黒人が白人警官に誤認逮捕され、暴力を振るわれるニュースが舞い込んでくる。当たり前と諦めていた日常をマイケルは変えたかった。そして自分が世界一の売上を立てて黒人初のキングとなる事を心に決めた。次の世代を生きやすくする為に。

スリラーが世界的ヒットを飛ばして有名になった後のマイケルが書いたメモ。
【歴史の中で平等に評価されたい】【スリラーより2億枚多く売って偏見を無くし新しい時代を作る】
怒りに込められた決意表明が綴られている。
引用: https://yomodalite.blog.fc2.com/blog-entry-2180.html

マイケルの凄い所は、自分を絶対的に信じる力と、誰にも負けない純粋さだ。
自分が世界を変える事を疑わずそれを実現させた。事実、King of popという称号は最高の褒め言葉だと私は思う。RockでもSoulでもない、人種の枠を超えたPopジャンルの王様に、彼はなったのだ。
Youtubeがまだ無かった時代に、音楽を映像で何度も魅せる手法を作ったのも彼の功績だろう。今のアーティストは、映像無くして世界中でヒットする事はほぼ不可能である。時代を先読みする才能もあった。




最近ではグラミー賞でビヨンセの旦那(ジェイ・Z)がこんな発言をした。

「グラミー歴代最多受賞者が、最高の名誉である年間最優秀アルバムをもらっていないんだ。おかしいだろう。審査する方はちゃんとやって欲しい。それとは別に、自分達の納得する評価が得られるまで私達は努力し続けなければならない。」

ビヨンセの最新アルバムは、デビュー時にテイラースィフトが歌っていた白人支持の多いジャンル、カントリーミュージックをかなり意識している。
作る側からしたら音楽をジャンル分けせず評価して欲しいと願っても、黒人作品はR&Bのジャンルにカテゴライズされる事も多く全ジャンルの頂点に立つ事は難しい。そこを見据えての作品作りかと思われる。




皆、自分の能力を疑いすぎる。自分が自分を疑っていては最善を尽くすなどできないです。
自分が信じなかったとしたら誰が信じてくれるのでしょう?

マイケルジャクソン

私達は自分を信じる事ができるだろうか?
諦めて人のせいにしていないだろうか?

あえて難しい方を選び、努力を続けマイケルは黒人初と言われる記録を沢山作り、世界も認める大成功を収めた。
また、差別を受けている人達のヒーローとなり、自分が活躍する事で平等な世の中を作るという純粋なパワーは、莫大なお金となって彼に還元された。
世界で1番成功したアーティストの名の通り、マイケルが稼いだ金額も世界1を更新し続けているが、お金を横取りする人達にうんざりし、世界ツアーの売上を全額寄付してしまったのも、誰にも真似できないスケールの大きさだ。



しかし純粋さは時に残酷さとなり、関わる人間の汚さを露呈してしまう。


晩年の彼への集中攻撃の悲劇は、何でこんな事になってしまったのかと理解に苦しむ。また、彼の自分に素直な行動は冷酷さと紙一重で誤解されやすい面もあった。マイケルがビートルズの版権を獲得したのは代表的な例で、この行動は一部の人達から猛烈な反感をかった。彼からしたら手元に良い曲を置きたかったのかもしれないし(実際にカバーしている)、自分が王になった事を証明したかったのかもしれないし、単純に版権で利益を得たかったのか。いずれにせよマイケル以外の人が所有したら大きな問題にはならなかったはずだ。嫉妬や妬み、お金欲しさに群がる人々が持つ欲の感情と、自身の純粋さからくる極端な行動がズレ始めた時、大きな波のうねりのように全てがマイナスの方向に動き始めたと感じる。



そして私達は常にマイケルを疑って生きてきた。本人が病気で肌の色が変化したと言っているのに、白人に憧れているとマスコミの記事を鵜呑みにする。幼児虐待もしていないというのに、裁判の様子や彼の訴えをちゃんと判断せずに勝手に犯罪者と決めつける。
私はマイケルが亡くなった時、私達が殺してしまった、と思った。
純粋な行動を奇人と決めつけ、嘘を鵜呑みにして信じ込む世界中の力の強さはあっという間に彼を飲み込みダークサイドへ落としてしまった。これは現代のsnsでの署名批判攻撃と同じ事だと思う。私達は真実を確かめもせず集団で人を攻撃してしまう。本当は自分の中に間違いがあるのに人を攻撃する事で正当性を確かめるかのように。


幼児虐待疑惑でマイケルを徹底的に追い詰めた検事はどんな気持ちだったのだろう。もしかしたら彼は彼の正義の為にあんな酷い行動を起こしたのだろうか。その根底にあるのは、子供の頃から大人達に無意識に刷り込まれた思い込みにあるのではないだろうか。無意識の価値観を他人が変えるのは難しい。マイケル自身も子供時代の傷ついた経験に悩まされ内向的になったと言われ、そこに付け込もうとたくさんの人達がマイケルに群がってくる。
きっとマイケルはわかっていた。子供時代がいかに重要であるかという事。子供時代に愛情をもらい我慢せずに適切に過ごせたなら、大人になっても健全な判断ができる。子供時代を癒し無意識の思い込みを捨てて自分を信じる事ができたなら。目先の物欲に囚われない豊かな社会ができる事を訴えたかったのかも知れない。周りの環境に押さえ込まれず自分を信じ、変化を恐れないで行動すること。自分の中に間違いはないか。マン・イン・ザ・ミラーがその全てを歌っている。

娘パリスのお葬式でのスピーチ「マイケルは最高のパパだった」の言葉が彼の全てを表しています。






余談ですが、多くのアフリカンアメリカンが長い歴史の中で多種の血が混ざっているように、マイケルの祖先には白人もインディアンもいます。そんな彼が黒人としてこの世に生を受け、病気で肌の色が白くなる、というのは、何とも神様は過酷な運命を与えたものだな、と私は思ってしまいます。肌の色へのマイケルの思いは全てこの歌に詰まっています。





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