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似非

読書感想(続き)です!

この本の中のエッセイでは、「爽快な気分について」と「健康のしるべ」がとくに面白かったです。


「爽快な気分について」は、主に精神の健康について書かれています。気分を爽快にするのに役立つのは、たとえば自分の持っている良いもの、自分の恵まれた環境について考えてみることだといいます。

ありふれたことでも無視せずに数の中に入れ、そして今こうして生きていること、健康に恵まれていること、太陽を拝めることを感謝すべきなのだ。
戦争もなく国内の争いもないことや、大地は欲する者に耕作を許し、海は欲する者に無事に航海させてくれること、また我々は、話すことも行動することも、黙っていることも閑暇のうちに過ごすことも、思い通りにできることを感謝すべきなのだ。
こういうことは、もしこれができなかったらと想像すれば、これができることを思っただけで気持ちを明るくさせてくれる。
P227

良いこと言ってるのでつい引用が長くなってしまいますね。

自分の境遇を検証する、もしそれができなければ、自分より恵まれない人の境遇を観察する、これも気分を爽快にするのに大いに役立つ。
ただしその際、そういう人がじつは多いのだが、間違えても自分より恵まれた境遇の人と自分を対比してはならない。
P228〜229

ただ本を読んでいるだけで実際にある自分の悩みが消えて無くなるなんてことはありません。しかし、原因よりも対処の仕方がまずくて爽快な気分になれていないというのは、往々にしてよくあることだと思います。いや、むしろその方が多いのかもしれません。
このエッセイには、爽快な気分になるための具体的なシミュレーションだけでなく、爽快な気分になれない人がやってしまいがちなことについてもたくさん書いてあるので、そちらの記述を拾い読みしながら、自分はやってないか、反省してみるのもいいでしょう。


続いて「健康のしるべ」。こちらは主に肉体の健康についてです。至言の数々をいくつか引用させていただきます。

病気になると、我々の仕事や期待や旅行や娯楽は奪われておじゃんになってしまうが、いちばん台無しにされてしまうのは快楽だ。
だから、快楽を何よりと心得て求める人には、健康を軽んじるのはいちばん不利益なことになる。
P122
性交、食事、風呂、酒、こういうものの楽しみも、
体の調子が悪くて自然本来のあり方にはない場合には、
体の中のそういう不安定でいたんだ分子とまじるので、気分を暗くさせ、胆汁を動かして怒りっぽくさせ、心身をかき乱して調子を狂わせるだけだ。
P130

目新しい結論はあまり出てこないのですが、常識的な主張が論理や具体例で肉づけされていて、説得力があります。

僕がとくに面白いと思ったのは、学者にふさわしい体の鍛え方についてのところです。

毎日声を出して言葉を使うというのが、何と運動になっていることか
P135

人と話すことといえば、むしろ精神にとって良いことだと思っていたので、これが(体の)運動だ、というのは新鮮な指摘でした。

それにこれは、「学者にふさわしい」体の鍛え方となっています。たしかに、学者は討論ができればいいわけで、別に筋骨隆々になる必要はありません。

そう考えると、アスリートや、農夫や、技術者などにも、それぞれの人にあった体の鍛え方があるでしょう。
たとえば現代でもジムに通ったり、筋トレに精を出している人はたくさんいますが、運動不足解消とか痩せたいとか、もちろんそれも全然いいと思うのですが、自分にふさわしい体の鍛え方について考えてみるのも一興です。
僕としては、仕事で重いものを持ったり、趣味のランニングで長く走れたり、友達とサッカーしたり、カラオケ行ったり、対話したりできるくらいの身体は作っておきたいところです。

……あとちょっとだけ書きたいことがあるのですが、ずいぶん長くなったので今日はここまでにしておきます。気が向いたらあとで続きを書く、……かもしれません。

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