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ぐるんぱとジョブズ

ドラマ・映画好きなキャリアコンサルタント xyzです。

今日は絵本『ぐるんぱのようちえん』を取り上げます。

この絵本、単なるお気に入りの絵本ではなく、わたしにとって今やキャリアの教科書のような存在です。

あらすじはこちらから
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ぐるんぱは、ひとりぼっちの大きなぞうです。ビスケットやさん、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場……。ぐるんぱは、色々な仕事場で一生懸命に働きますが、つくるものが大きすぎて失敗ばかり。そんなときぐるんぱは、子どもがたくさんいるお母さんに出会います。子どもたちの世話をたのまれたぐるんぱは、とても素敵なものを作ります。それはぐるんぱが作った大きなものでたくさんの子どもたちが遊べる、すてきな幼稚園でした。
内容紹介 by  福音館書店

ぐるんぱ=ニート?

このストーリーを実社会風に描写するとこんな感じでしょうか。

ずっとニートだった若者が社会に出たものの思うように仕事で結果を出せず離転職を繰り返しながらも働くことを諦めずにいたら、これまでの経験をフルに活かした、新しいコミュニティーを作ることができた。

こう書くと、なんだか身もふたもないですが、職を転々とするぐるんぱと、働く意欲はあっても働く場所になかなか恵まれない、就職氷河期のロスジェネ世代が思わず重なってしまいました。

自分さがし

いつもひとりぼっちだったぐるんぱ。定職につかず、ぶらぶらしていたぐるんぱも、そろそろ社会に出るお年頃。
【シュロスバーグの4S シチュエーション】

そんなぐるんぱを心配してくれるゾウたちが、ぐるんぱが働きに出られるようにと、あれこれと世話をやきます。自立への支援、就職準備ですね。
【シュロスバーグの4S サポート】

ぐるんぱが社会人(社会ゾウ)デビューするために、ほかのゾウたちが会議を開いたり、好感度を上げるよう身だしなみを整えてくれたり(付き合いがないからお風呂にも入っていなかったぐるんば……笑)
【シュロスバーグの4S ストラテジー】

ぐるんぱが今まで行動できなかったのは、自分が何をしたいのか、どう生きたいのかわからなかったから。
【自己理解不足】
シュロスバーグの4S セルフ←これが欠けていました

さて、周りの協力もあって準備OK!
ぐるんぱは働き始めます。ぐるんぱと社会との接点が生まれました。

規格外?不適合?

ぐるんぱの最初の就職先は、ビスケット屋さん。
その後、靴屋さん、お皿屋さん、ピアノ工場、自動車工場……と職場を転々とします。製造業という共通点こそありますが、取扱商品はさまざま、あまり脈絡はありません。そして、ぐるんぱの仕事もなかなか長続きしません。

ぐるんぱは、真面目に一所懸命働きますが、作るものがみんな大きすぎて、売り物として規格外となってしまい、お店の主人からは「もうけっこう」と言われ、ぐるんぱは「しょんぼり」……。

この「もうけっこう」「しょんぼり」というセリフのかけあい、ぐるんぱがお店を追われるたびに繰り返し出てきます。解雇されるたびに、ぐるんぱの「しょんぼり」の数が増えていきます。

言葉の面白さやリズム感、繰り返しの妙か、子供の頃はこのセリフが出てくると、待ってました!とばかりに「もうけっこう!」「しょんぼり、しょんぼり、しょんぼり」などと大きな声で唱和していましたが(周りの子達も同じで、みんなで大合唱)このくだり、大人になって改めて読むと、本当に切ない……しょんぼりしょんぼり、どころじゃないです……。辛すぎます><

やる気はあるし真面目、丁寧に作っているので「製品として」クオリティは高いはずですが、店や顧客の求めているものではないという点で「商品として」の規格を満たしていない
残念なことに、商品価値のない物をいくら作っても評価されない現実……。
【仕事理解(商品理解、市場理解、組織理解、役割理解)の不足】

製品が劣っているわけでも、ぐるんぱの能力が低いわけでも、勤怠に問題があるわけでも、やる気がないわけでもないだけに、評価されないのは、本当にやるせない気持ちになります。

物の価値も、人の能力も、評価するための「物差し」はありますが、その物差しは唯一絶対な物ではなく「たまたま、そこでは合わなかった」だけ。ぐるんぱはダメなやつではない!

でも、自分が受け入れられない、評価されないのは辛いこと。しかもそれが連続して起こるなんて……若者なら自己肯定感、自己効力感だだ下がりになりかねない案件です><

ぐるんぱの転機

それでもぐるんぱは、ふてくされず、次の仕事にチャレンジします。

いろいろなお店で働いたぐるんぱは、さまざまなものづくりの技術を身につけます。
【スキル(技能)の習得→仕事理解が進む】

そんなぐるんぱに、転機となる出会いが!

12人も子供のいるおかあさんに子供の面倒を見てほしいと頼まれたぐるんぱ。

ぐるんぱは喜んで子供たちと遊びました。子供たちも大喜び!
その評判を聞きつけて、他からもたくさん子供が集まってきます。ぐるんぱ、意外な才能を発揮!
自己理解が深まる】

そして、なんとようちえんを開設!

さて、ぐるんぱの全財産。退職金代わりに現物支給で渡された(言い方)物たちのリストです。

・特大ビスケット
・池みたいに大きなお皿
・人が中に入れるくらいの特大サイズの靴
・大きすぎて誰も弾けないピアノ
・大きすぎて誰も運転できないスポーツカー

お皿はプールに、靴はかくれんぼの遊具となり、本来の用途とは違うけれど、人の為に活用されることに。グッドアイディア、ぐるんぱ!無用の長物だった物たちに新たな価値が付加されました。

ぐるんぱが誰かに必要な存在となり、ぐるんぱの作った物が誰かの役に立ったり、楽しみを生み出したり。

誰かにとっては意味のないことでも、他の誰かにとっては意味があることもある。

誰かにとっては何の助けにもならなくても、他の誰かを助けられることもある。

無駄な経験なんて一つもないし、全ての経験には意味がある。

うまくできないこともあるだろうけれど、自分にしかできないことだって、きっとある。

これまでのぐるんぱの経験が新天地で活かされたのです。
キャリアチェンジ

ぐるんぱは、ひとつの職場で長く働くことはできませんでしたが、組織に属するのではなく、個人事業主として独立する道を選びました。

初めから「よし!幼稚園を作ろう!」と頑張っていたわけではなく、成り行きでそうなったというのがなんとも興味深いです。
【クランボルツのプランドハプンスタンス

キャリアは偶然の出来事、予期せぬ出来事に対し、最善を尽くし対応することを積み重ねることで形成される。

ひとつひとつの経験の積み重ねのおかげで、ぐるんぱのキャリアに転機が訪れました。

居場所は作るもの?

どの職場でも「規格外」だったぐるんぱ。

誰かが決めた「作られた」環境やルールに適応できなくても、自分らしさを発揮できる環境を探せばいいこと。
もしそんな環境がなければ、自分で作っちゃえ!の精神です。

自分の居場所は自分で作る。

ひとりぼっちだったぐるんぱの周りには、いつしかぐるんぱを慕う人の輪ができていました。

ぐるんぱもhappy、子供たちもhappy、おかあさんたちもhappy!
みんなhappy、win-winな空間が生まれました。

でも、よく考えてみると、ぐるんぱの場合は居場所を「作った」というよりは、自然と居場所が「できていった」感じでしょうか。

人の役に立ちたいというぐるんぱの優しい気持ちと、持っているリソースを活用する柔軟さ(型にはまらないクリエイティブさ)とで、素敵な場づくりができたのです。

点をつなぐ

この絵本からわたしが得た一番のメッセージは「人生に無駄な経験なんてひとつもない」ということです。

全ての経験には意味がある。
……うーん、違うな。ちょっとしっくりこない。

自分の経験を意味あるものに捉えることができる。

または、

自分の経験にどのような意味を与えることができるか。

これは、一種のリフレーミングと言えますね。新たな意味づけ。

一見何の脈絡もないように見えたぐるんぱの職歴が、まるで点と点が繋がったようにみごとに融合して、ぐるんぱのようちえんができました。

点と点が繋がる……ぐるんぱの絵本から、わたしはあのスティーブ・ジョブズの「伝説のスピーチ」を思い出しました。

将来を予想して点と点をつなぐことはできない。後になって振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。
今取り組んでいることが、将来何らかの形で自分の役に立つ(connecting the dots =点と点がつながる)と信じることだ。

ぐるんぱは、ようちえんを作るためにさまざまな仕事を「戦略的に」経験したわけではありません。

与えられた環境で、愚直に「今できること」にベストを尽くしただけでした。しかし、そのどれもが、振り返ってみれば「ぐるんぱのようちえん」を開くために必要な点のひとつひとつとなっていました。

今自分が取り組んでいることにベストを尽くすこと。
振り返った時に、点と点を繋ぐことができるような、そんなキャリアを作っていきたい、そんな気持ちに新たになれた絵本でした。

「ぐるんぱのようちえん」、大人になった今こそ、あなたももう一度読み返してみませんか?

最後まで読んでくださってありがとうございました^^