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「ポッド・ジェネレーション」を観て【カウンセリング】の未来に思いを馳せる

ドラマ•映画好きなキャリアコンサルタント xyzです。

前回に引き続き、映画「ポッド・ジェネレーション」について書きます。

日本向けポスターは、またまたピンクやパステルのファンシー系

前回の記事はこちらからどうぞ^^

執事からセラピストまで何でもござれ

近未来ではAIが日常生活にすっかり溶け込み……というか、AIによって人間の生活が起床から就寝まで(つまり全部)コントロールされています。

学生時代の就活で参加した某総合商社の説明会で「揺り籠から棺桶まで(笑)ありとあらゆるものを扱うのが私共、総合商社です!(ドヤァ)」(意訳)と説明がありましたが、近未来は揺り籠どころか人工子宮ポッドから始まるのですね!守備範囲、広っ!

アルヴィーとレイチェルの家では、執事のようなAI、エレナがおり、起床から就寝まで、全ての活動はエレナにより把握され制御されているように見えます。

エレナはスマートAI、Amazon Alexa(最近新Alexaが誕生しましたね!)のようなAI音声認識サービスで、ただマニュアル通りのセリフを発するだけではなく、きちんと相手のリアクションを汲んで実に当意即妙に返してくるのです。

たとえば……コーヒーマシンから無言でコーヒーを取って行こうとしたアルヴィーに対してエレナはすかさず、

What's the magic word?
(そういう時は何て言うの?)

ヒアリング適当でうろ覚えですが、こんな感じのことを言っていたはず。

これ、英語圏のママやパパが、子供によく言います。

人に何かしてもらってちゃんと Thank you を言わなかったり、頼み事をする時にpleaseをつけないで話したりすると、親は秒の速さで〝The magic word?“と尋ねて、言い方をその場で直させます。

こんな歌もあります。

まるでオカンのようなエレナさん(笑)

エレナ、アルヴィーやレイチェルの一挙一動にあれこれ言ってくるので(口うるさいオカン)特にアルヴィーは煩そうにしてます。時にAIのアドバイスを適当にやり過ごしつつも、それでも基本、AIの言う通りの日常を送っている様子……。

近未来の世界では、エレナのようなAI執事(と勝手に命名)の他に、AIセラピストまで登場します。

今回は、映画に登場したAIセラピストについて書きながら、キャリアコンサルタントとしても非常に気になる近未来のカウンセリング、相談業務についても考えてみたいと思います。

イライザ様、なぜ……

レイチェルが頼りにしているAIセラピスト、その名はイライザ

目玉…!ガン見されてる…‼︎

イライザは、眼球状の丸い物体の周りにグリーンや色とりどりの花が飾られています。遠目には曼荼羅模様のようにも見えますね。

何か相談したいことがあると、イライザのもとを訪ねるレイチェル。

和モダン調のすっきりとした空間に、目玉のオブジェ(胴体のない目玉おやじ)のようなイライザ様がいらっしゃいます。その正面に胡座を組んで相対するレイチェル。

レイチェルは悩んでいることをイライザに向かって話します。

イライザはレイチェルの言うことを聞きつつ、短い問いかけを挟みながら、レイチェルの気持ちの整理を手伝います。

しかし、イライザ……なぜ眼球だけ?

カウンセラーといえば傾聴、「聴く」の象徴といえば。耳のシェイプのAIでもよさそうですが、なぜ目なのでしょうね?

カウンセリング面談においてカウンセラーは、相談者を理解しようとあらゆる五感を駆使します。「聴く」が主体だと思われがちですが、一方で人は情報の80%を視覚から得ているそうですし。

メラビアンの法則でも「人と人とのコミュニケーションにおいて、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%のウェイトで影響を与える」とのことです。

目は心の窓目は口ほどに物を言う目配り目星をつける……目にまつわる表現も数多くありますね。

相談者の発話内容以上に、非言語(non-verbal)的要素から得られる情報は多い。

そうした情報を視覚的に認識するために……目玉に搭載されたカメラで相談者の顔を認識し、顔のパーツの動き、目線、顔の向きなどの表情をAIを用いた独自のアルゴリズムで解析……

という流れでしょうか。目/視覚は相談場面においてかなりの働きを担います。それゆえに、シンボルとしての目?

セラピストとカウンセラー

イライザの肩書きはセラピストですが、セラピストとカウンセラーの違いって何か気になったので、調べてみました。

セラピストとは…

「セラピー」がメイン。能動的なアプローチを施すことが多く、体を動かしたり、五感に作用したり、心身に働きかけることで自己治癒力を促します。

NPO法人メンタルヘルスケアサポート協会HP

療法士、治療士と日本語で表すことも。

では、カウンセラーは…

「聴く」がメイン。受動的な立場で話を聞くことが多く、答えを与えるのではなく「気づき」を促すことで、心の癒しを導きます。

NPO法人メンタルヘルスケアサポート協会HP

この定義の後に、説明が補足されていました。

セラピストが聞くことを一切しないわけではないし、カウンセラーにセラピスト的要素が全くないわけではなく、要はどちらを主軸にしているか、ということのようです。カウンセラーのこと、サイコセラピストと表現することもありますものね。

カウンセラーの定義として「受動的な立場で話を聞く」とありましたが、立場は受動的、聴く姿勢としては受動的(カウンセリングの主体は相談者です)でも、聞く技術としては積極的に(傾聴=Active Listening 積極的傾聴法)、ですね。

さて、セラピストであるイライザは、レイチェルの悩みに対して助言を行います。

AIセラピストが助言するプロセスとしては「相談者の発話内容や非言語情報を解析、プラス蓄積された膨大なデータを元に最適解を導き出す」といったところでしょうか?カウンセリングの精度は、将来どこまでAIが人間の精神活動に近づけるのかにかかっていますね。

2045年問題

さて、映画に描かれた近未来ではこんなふうに何か気になることがあれば相談することが気軽にーー日常的に、あたりまえになっているのですね。とはいえ、相手は人(カウンセラー)ではなくてAIだけれども……(残念!)

アメリカでは今でもカウンセリング(カウンセラーに相談すること)は身近なことのようですが、今現在もカウンセリングへの敷居が高めな日本、近未来にはどうなっているのでしょう?

キャリアコンサルタントのわたしとしては、キャリアコンサルティングがもっと世の中に広まっていてほしいと願っていますが、キャリアコンサルティングに限らずとも【相談する】ことが身近で気軽にできるようになっていたらいいのになぁ……と思います。

実はこの映画で、個人的にいちばん衝撃を受けたのは、このイライザの存在でした。

なぜなら、カウンセラーやコンサルタントは、今後AIやロボットで自動化するのが難しい職種のひとつで、どんなにAI化が進んだとしても、人にしかできない仕事だとずっと言われてきたからです。

いわゆる2045年問題で取りざたされるシンギュラリティ(技術的特異点)の観点からも、カウンセラー、コンサルタント、セラピストはAIに代替できない職種として紹介されていたはずでした。

シンギュラリティについてSlackがわかりやすくまとめている記事がありました。

シンギュラリティはあくまでも仮説ですが、そう遠くない未来に起こり得るのだと思うと、キャリアコンサルタントとしては相談者との関わり、自らの存在意義も含めて考えさせられることが多いです。

自律的な人工知能vs人間の限界

近年のAIの進歩は目覚ましく、例えば人類最強と言われたプロの囲碁棋士柯潔(カ・ケツ)さんを負かしてしまった囲碁ロボット、AlphaGo
囲碁将棋は手数が多いので、AIにとって攻略が最も難しいゲームの一つとみなされていました。それなのに……!

(ちなみに、最初に本格的な知能ゲームでAIが人間を破ったのはチェスのAIでした。)

一方、麻雀は配牌という不確定要素があること、「運」という制御不能な要素の影響をうけること、3人以上の対戦相手に合わせて打つことがAI的には苦手なので、AIが人間相手に勝つことは難しいらしいです。

不確定、制御不能、相手の予測不能な行為に合わせて次の一手を決める


これらは、ディープラーニングでも対応が追いつかない、なかなか手強い部分。

これ、思考、判断、記憶、創造、感情などの人間の精神活動と重なると思いませんか?

さて、閑話休題、カウンセリング業務は、人の心や感情を扱う領域です。心の動きや感情は可視化定量的に把握することが非常に難しいこと(=定性的)なので、AIではなく人間が取り扱う方がいい、いや人間しか取り扱えないだろうとされてきました。

しかし一方で、技術的に未熟な(つまり下手な)カウンセラーが独りよがりな「間違った」カウンセリングをするよりも、データに裏打ちされた(つまり一定水準以上の技術を持つ)AIのほうがよほど「良い」カウンセリングをする可能性も否定できない……。

カウンセラーとして、人間とAIどちらが選ばれるか。

AIに負けないように(?)カウンセラーもこれまで以上に弛まぬ自己研鑽が必要だと改めて思います。

ハッピーテクノロジーとは

AIの技術革新と急激に進んでいます。最近の技術では「ハッピーテクノロジー」と呼ばれる分野が出てきました。

日本有数の電子部品メーカー、株式会社村田製作所のホームページの記事です。

「センサとAIの融合で築く、人と機械の新たな関わり」というタグがありました。技術の力や脳科学の力を借りて、ついに心、感情や感性の秘密に迫っているのです。

人間の心(意識)については、明らかになっていることが少なく、人体の臓器の中でももっとも謎に満ちている部分です。

しかし、この謎に満ちた領域をAIが着々と攻略し、汎用型AIと呼ばれる、自律的なAIが自己フィードバックによる改良を繰り返す……要は人間の力を借りずに発達していくようになったら、感情や感性ももはや人間の専売特許とは言えなくなる時が来るのかもしれません。

自律的に思考・判断を行い、みずからの意思で学習していくのは「汎用型 AI(強い AI)」と呼ばれるタイプの AI です。汎用型 AI が進化を重ねるにつれて、 AI がみずからプログラムを作り、人間が介在することなく AI の開発を進めるようになると言われています。シンギュラリティをもたらすのは、主に汎用型 AI と考えられているのです。

Slack HPより

2045年の前に2030年前後に「プレ・シンギュラリティ」が起こると言われています。結構すぐソコまで来てますよ、2030年……!

キャリアコンサルティングの未来

AI執事エレナのところで、AI音声認識サービス Alexaに言及しましたが、なんと今月Google社は 次世代生成AI Gemini を発表しました。進化の加速止まらない!Amazon がんばれw

人間の繊細かつ複雑な機微、不確実要素が多く予測不能な感情の動き……まるで小川のせせらぎに落ちた一枚の葉っぱの動きと行く末(いわゆるカオス理論のわかりやすいたとえ)のような……に柔軟に対応できるのは、どんな動きにも共感をもって寄り添える人間だけ?

しかし、人間の間違った関わりよりは、AIの最適解の方ががマシ、という可能性もあります。だからこそ、熟練カウンセラーの質の担保がより切実に求められます。


同じことを人間(他人)に言われると腹が立つけれどAIに言われると素直に聞ける。逆も然り、AIに言われると抵抗があるけれど人間(他人)に言われると納得できる。
人間相手には遠慮や見栄や忖度があってもAI相手なら気兼ねなく安心して本音を言える。逆も然り、AIの「血の通わなさ」よりも人間の「血の通った」関わりがほしい。

人それぞれ、その時々で、人間でもAIでも自分に合ったカウンセラーを選べる。選択肢が増えることで相談しやすい環境になるのならば、相談者にとっては良いかもしれません。

どんなことでもAIで事足りてしまう時代が来れば、人間と直接関わることが貴重な機会となり、人間が提供するサービスが「レア」「贅沢」「高額」になる可能性もありますね。

人間カウンセラーが技術面でAIカウンセラーと対抗、競争していくには、地道に研鑽を積み、造詣を深め、「人間力」を向上させていくこと。

……対抗、競争、と今書きましたが、はたして対抗、競争する必要あるのかなぁ?とふと思ったりして。

生身の人間とAI、それぞれの持つ強みを活かし、弱点はカバーする。補完しあって平和的で生産的な関係を結べるのではないか?相談することへのハードルを低くできるのではないか?

カウンセリングの未来も、AIとの協働がキーワードですね。

目指せ!選ばれるキャリコン!

映画「ポッド・ジェネレーション」この記事で興味を持っていただけたら、ぜひ映画観てみてくださいね。そして、いつかあなたとこの映画について語り合えることができたらいいなと思っています。

最後まで読んでくださってありがとうございました^^




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