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会えて良かったと君が笑うから


10ヶ月ぶりに彼に会った。
七夕の夜に、仕事のお祝いをかねて焼肉に行った。
予約はいつもわたし。予約なんかしなくても入れただろうけど、決まった約束が欲しかったのと今までの癖で予約をした。そこは毎週会っていた頃に行ったところだった。


はじめて、わたしが先に着いて待っている状態だった。明るいいつものわたしでいようと決めていたから、久しぶり〜!と笑った。
最近の仕事の近況をたくさん話した。

「元気そうで良かったし、昇格したいと思ってくれてて嬉しい。」と言ってくれた。

この10ヶ月、全然元気じゃなかったよ。
たくさん泣いたし、たくさん悩んだ。
こうするしかなかったから、感情の整理をひたすらしてたよ。変わらなくちゃいけないから、進まなきゃいけないから今年に入って婚活を始めたんだよ。


「髪の毛伸びたね、前髪切ったね、それから痩せたね。なにしてても可愛いね。」そう言った。
「知ってるよ〜」と笑ってとぼけた。


エンドが20時だからあっという間だった。
お酒も久しぶりにたくさん飲んで、たしかにほろ酔いだった。
駅まで雨の中並んで歩いた。特に言葉を交わすこともなく。


わたしが婚活頑張ってることを話の流れで話すと「そっか。辛いな、悲しいよ。」と言った。

帰りの電車は違うから改札でバイバイしようとしたら、わたしの電車に一緒に乗り込んできた。まだ話したいよと言って。わたしの手に触れてきたからそっと手を払いのけた。
それがわたしの精一杯だった。


一緒に乗り込んで数駅進んだ。
婚活してるし来年までには名前も変わりたいって思ってると話したら、目に見えて落ち込んで喋らなくなった。酔ってたのもあると思うけど、ずっと考えこんでいた。帰った方がいいよ、と諭した。
数駅目で、「降りるね」と言って彼が降りた。
わたしもトイレに行きたくて仕方なくて一緒に降りた。
気持ち悪いのかなって思って、水いる?大丈夫?って聞いたけどそのままトイレに入ったからわたしもトイレに入った。
わたしの方が先に出て、前で待ってようかと思ったけど、その先になんにもない気がして階段を降りた。それでも気になって、もう一度階段を上がったら彼がトイレから出て反対側のホームの階段を降りるところだった。名前を叫んだら戻ってきてくれたはず。それでもわたしはその背中をちゃんと見送った。
泣きそうだった。たくさんの感情が一瞬で溢れた。でも、でも、呼び止めて引き留めても未来はないのだともう心が痛いほど知っているから叫べなかった。


久しぶりに会えて良かった。ごちそうさま、ありがとう。伝え方がよくわからないけどあなたのことを人としてずっと好きだよってLINEをした。

死ぬまで友達でいいから仲良くしてほしいと返事がきた。

そういうところだよ、ずるいの。
ずっと友達だよ、と返したわたしもわたしかな。でも、そうするしかなかった。ここまで気持ちも状況も含めてどうしようもなかったことが人生で多分はじめてで、わたしにだってまだまだわからないんだよ。


黙ってあなたの背中を見送るのは二度目でした。
何度見送っても、きっと本音は名前を叫んで引き留めてしまいたいし、今にも泣いちゃいそうなくらい心は切なさでパンパンで言葉に表せない感情でたまらない。


わたし、男の人の弱いところが好きなのかもしれない。
彼はきっとそれを家でも出せてるとこはあるだろうけど、出せてなかったところもあったのかな、わからないけど。もうどんなにあなたの気持ちや思考回路を辿ろうとしても理解しようとしても、わからないの。
一時の気の迷いだったとは思わないけど、きっとわたしを手放しても、わたしじゃない誰かを見つけるのかな。ずっと恋愛をしてたいのかな。
どれだけ時間がたっても、同じ時間を過ごしてもわからないことだらけ。



「こんなはずじゃなかったと思うことはたくさんある。人生は、たぶん一生それとの戦いなんだろう」
「忘れられない何かがあるって忘れてしまいたいなにかがあるより、ずっと価値があるはずだろう」

家に帰ってからその2つの言葉を思い出して、心に何度も唱えて少し泣いた七夕の夜に、わたしの本当の願いなんて叶わないことを知っているけれど、会わなきゃ良かったなんて思ってないけれど、10ヶ月という長くて短い期間は人の気持ちを根こそぎ変えるのには多分短かった。


でも、お互い寂しさを埋めあっても仕方ない。
あなたにはあなたの未来が、わたしにはわたしの未来がある。
それをわたしはもうこの10ヶ月で十分すぎるほど理解した。


最後にもっとわたしが明るくつとめて、また飲もうねって最大級の笑顔でバイバイできたらよかった。いつもそうだ。帰り際うまくバイバイができない。


今日は結局昨日のことを一日中思い出して、仕事にならなかった。ボーっとして、暇さえあれば唯川恵さんの小説をまた片っ端から読みたくなって昼休みもご飯も食べずに読み耽った。


でもね、知ってるの。
あなたが3月も4月もお休みを取ってたこと。仕事のカレンダー見てしまったの。
娘さんの卒業式と入学式だったんだよね。
だから、どうかあなたはあなたの幸せを、未来を歩んでね。



誰かに聞いてほしくて、この場所を借りました。
やっぱり久しぶりに会っても、あなたの顔も声も身長も仕草も全部大好きだと思った。
それでも、運命って早い者勝ちだからわたしとあなたではない。


わたしの涙も知らないだろうけど、
わたしね、全力で全身全霊で大好きだったよ。


わたしももっと変わろうと思う。
変わる努力をしてみようと思う。
婚活もその一環で、直近会った男の子がとても良かったから頑張ってみようかなって思う。


織姫にはやっぱりどうしたってなれないね。


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