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ろくでな史4.僕が経験してきたろくでもない?職業の数々「社会人中編」

19歳小料理屋

<おっさん超能力者かいな!>

 19歳の頃の僕は大して興味もないくせに料理の世界に手を出してしまいました。今考えるとなぜ小料理屋でアルバイトしたのか動機がはっきりわかりません。車を持っていなかったため、たまたま近い場所で探しただけかもしれません。

 そこは夫婦で経営している小料理店でした。

移転して新装開店するらしく、アルバイトを募集していました。ただ、勤務時間がデタラメなお店だったと思います。朝は8時出勤で夜は21時や22時になります。時給も当時の最低時給に近いぐらいです。板前の修業みたいなものですから、大してお金はいただけませんでした。

 店長は40代ぐらいのおっさんで、気さくな感じの人柄です。このおっさん、僕の中ではサイコメトラー疑惑があります。人の考えていることを読み取る能力があるのでは?という不思議なことが何度かありました。

 僕は仕事中にジュースが飲みたいと考えていて、休憩に入ったら自販機に行こうと思っていました。そして、休憩時間になった時に「ジュースを買ってきてくれ。これはキミの分のお金」と店長に渡されたのです。ここまではただの偶然ですよね。

 別の日に今度は飲み物の種類を考えました。僕はコーラが飲みたい飲みたいと強く思いながら休憩時間を迎えると、「コーラを買ってきてくれ」と2人分のお金を渡されたのです。

 奇妙な一致は続きます。仕込みの手伝いをしながら頭の中でサザエさんの歌を想像していました。サザエさんの火曜日版のオープニングを流していたんです。「ウチとおんなじね~♪仲良しね~♪わたしもサザエさん、あなたもサザエさん~♪」という具合です。

すると、少し離れた場所で作業しているオーナーのおっさんが鼻歌で、日曜日版のサザエさんを歌いだしました。「お魚くわえたドラ猫♪追いかけて♪裸足でかけてく陽気なサザエさん♪」と。それでもまだ偶然だと思いました。

 そして、ついにアホな試し方をしてやりました。

作業中に「日曜日のサザエさん」のオープニングを頭の中で歌ってみました。

「お魚くわえたドラ猫~♪」と考えながら仕込みを続けていると、おっさんは鼻歌で「火曜日のサザエさん」を歌いだしました。ギョっとして、おっさんの方を向くと一瞬おっさんがニヤっとした表情をしました。

「読まれてる!!」

それから何か聞かれる度に、あえて「当ててみて下さい」という形式にしていました。

 例えば、母の職業は何か?と聞かれると、「弁護士……弁護士……」と強く考えます。おっさんはしばらく考えて、「うーむ、弁護士とかカタい職業か?」と聞き返してきます。本当は弁護士でなく、看護師です。おっさんは、事実を当てるのではなく、あくまで心を読んでいるんだと確信しました。こういった質問を質問で返し、考えを当てられることが何回もありました。

 その頃、夏休みも終わりが近付いた為、アルバイトを辞めなければならなくなりました。期間は1か月ばかりの短期間でしたが、オーナーは「また、いつでも来い」と言ってくれました。

しばらく経ったある日、久しぶりにお店に顔を出してみようと足を運びました。

すると、お店に閉店の看板が……

おっさんは、間近にいる人の心を読めたのに、客の心は読めなかったのでしょうか。今でもあのおっさんは謎のままです。

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