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中国古代はとても楽しい。『李白と杜甫』高島俊男

李白と杜甫。だれでも一度は名前を聞いたことがある超有名な中国の詩人。この2人が知り合いだったことは、漢文の教科書で読んだ記憶がある。でも、一緒にお酒を飲んで遊んだり、1つのふとんをかぶって寝たこともあるなんて知らなかった。っていうか、想像がつかない。

唐の時代、素性もはっきりしない李白と、名門に生まれている杜甫の。高島先生が教えてくれる2人の生い立ちや人生、彼らの詩のおかげで、読者は当時の中国の社会とか歴史を知ることができる。高島先生の文体は、いつも歯切れがよくて、おもしろい。堅い文章になりがちな漢詩の世界を、やさしく楽しく語ってくれる。こんな本を高校時代に読んでいたら、もっと漢文を楽しめたのになあ。

杜甫と李白の2人の詩の比較は、そのまま中国の当時の文芸を比較することでもある。杜甫と李白は、得手不得手がはっきりしていて、互いに得意な詩が違った。しかも、杜甫は詩でしか文章が書けず、普通の文章を書けば悪文になったとか。何気ない文章で、中年の奥さんを必要以上に美しく形容してしまったエピソードなんか、かなりおかしい。

一方の李白は、政治の常識に欠けていて、現代に生まれていたら社会不適合者だったかも。適当で行動のつかめない李白を、しつこく敬慕する若い杜甫。2人の年齢差は10歳なので、ちょうどいいくらい年の離れた先輩といったところかな?

何年も前、図書館で見つけた『李白』(角川書店)という本の高島先生の解説「ネアカ李白とネクラ杜甫」があまりにもおもしろかったので、コピーして大事に持っていた。いつか、高島先生が李白と杜甫で本を書いたら、絶対買おうと心に決めて。その後、この本を見つけて速攻で購入。期待に違わずおもしろくて、大満足でした。

先日(2021年4月5日)、あちらの世界に行かれた高島先生。きっと、天国でもたくさんの人に中国のおもしろいお話をしてくれているはず。もしくは、中国の昔の有名人たちとご対面していたりして。ご冥福をお祈りいたします。

評判の本『唐ーユーラシアの大帝国』は政治面中心で、李白や杜甫など文化についての言及なし。両方読んでちょうどいい感じでしょうか?

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