想い出の曲は彼らのものだった。『ジャージー・ボーイズ』アメリカ、2014年
映画館で公開したときにはtwitterで話題になっていたので、夫を誘って見に行ってきました。号泣したとか、幸せな気分になったとか、いろいろ聞いていたのでティッシュはちゃんと持参しましたが、本当に久しぶりに号泣に近い感じで泣きました。滂沱。そして、幸せな気分になって、イーストウッド監督にお礼を言いたくなりました。
そのとき半年くらいで悩んできたこととか、いろいろ人に相談したようなことが、映画1本見ただけで、すらっと納得できたり、理解できたような気がします。「百聞は一見に如かず」じゃないけど、よくできた映画とか小説って、ちゃんと人生のロールモデルになってくれるんだなーと、改めて実感。
イーストウッド監督は実話ベースの映画をつくるのが好き。この映画もそう。1960年代に数々のヒット曲を生み出したフォー・シーズンズがモデル。当然、映画の中でかかるのも彼らのヒット曲ばかり。陽気で楽しく、気分があがるものばかり。この話はミュージカルにもなっていて、トニー賞も受賞するような作品。ブロードウェイの舞台で歌って踊っていた人たちが、そのまま映画に出演したのだとか。
この映画の山場で歌われる「君の瞳に恋してる」は、大学に入った頃、よく目覚まし代わりに使っていた大好きな曲で、カバーされたものだったとは知らなかった。明るくて素敵なダンスミュージックだとしか思っていなかっただから、この曲がもともとしっとりしたラブソングだなんて思いもしなかった。
作曲したボブは、フランキーを慰めるために売れるとか売れないとか度外視していたし、レコード会社の社長も「売れない」「こんなのラブソングじゃない」って反対した曲が、今や外国でも知られる名曲になって、ものすごいたくさんの歌手にカバーされるなんて、誰も想像していなかった。その後、別の映画でも似たようなエピソードがあって、既視感(?)と思ったら、そう、クイーンのボヘミアン・ラプソディ!
音楽ってすごいなあと思うのは、こんなとき。決して、思い通りにはならない。びっくり箱みたい。
貧しいイタリア系移民の住む町から出て、苦労して成功をつかんだフランキーとその仲間4人。でも、急に人気が出て環境が変わり、忙しすぎる毎日に自宅で家族と食事をとる時間もない。ホテル住まいが続き、だんだん、仲違いするようになる。1人はお金を使い込んで、マフィアの借金取りがやってくる。
1人はもううんざりだとグループを抜け、フランキーは曲つくって、必死に唱う。でもお金は借金返済にあてる。仲間の尻拭いにがんばるうちに、妻との中は決定的に悪くなり、寂しい娘は道を踏み外してしまう。悲しむフランキーに、今度こそ自分のために曲をつくれと仲間が励ます。
亡き娘を思ってつくったラブソングが、再びフランキーをスポットライトがあびるステージに押し戻す。彼はきっと、歌がヒットするより、娘が元気でいてくれたほうがうれしかったと思う。でも、娘は逝ってしまい、彼の曲は私の娘の好きなグループもカバーするほど歌い継がれる。
人生はままならない。でも、やっぱり世界は美しいと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?