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60年前に別れた恋人との再会。映画『再会の食卓』中国、2010年


1949年、中国大陸で中華人民共和国が成立。
内戦に負けた国民党の兵士だった夫は台湾へ逃れ、身重の妻が残された。家柄の良かった娘は、路頭に迷うところを、共産党兵士に助けられ、再婚。
台湾へ渡った夫も5年後に台湾の女性と結婚。

その後、40年の間、台湾海峡は冷戦の緊張状態で訪問どころではなかったけれど、1980年代末になって交流することができるようになり、かつての「老兵」も故郷の中国へ帰ることができるようになった。そして、40年前とはまた違った悲喜劇が、またたくさん生まれたらしい。この映画も実話ベース。

先に豊かになった台湾から、お金持ちの親戚が戻ってくることで、家族に波紋が広がるストーリーは、だいたい90年代。そして21世紀に入ると、中国の経済発展のおかげで、台湾の老兵よりも中国に残った家族のほうがお金持ちになっている皮肉。

この映画では、台湾で妻に死なれた元中国人の夫が、中国に残した妻を訪ねてくるところから始まる。40年前、中国に残した妻を台湾へ連れ帰ろうとする。メンツを重んじて、台湾からの客人をもてなす妻の夫。複雑な顔をする娘や息子。孫だけが祖母によりそってくれる。そして、波乱の家族のドラマが展開する。

ベテラン俳優3人がとてもいい演技でよかった。 『ラストエンペラー』で西太后を演じたリサ・ルー(盧燕)。一番最近は、『クレイジー・リッチ』で大おばさま役。彼女の演技がすばらしいし。発展する上海と、裏通りにある上海の小さな家庭。彼女はそこの祖母で、母で、愛に悩む女性。

そして、彼女をはさんだ元夫と現在の夫の演技もすばらしい。家族たちのとまどいをよそに、子供世代が絶対に共感できない重い歴史を共有する3人が食べて、飲んで、歌う。そういうシーンが最高にじんわり温かい。



邦題:再会の食卓(原題:團圓)
製作:中国・ 2010年(96分)
監督:王全安
主演:リサ・ルー(盧燕)、リン・フォン(凌峰)ほか。

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