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人間くさいドラマが魅力。『剣嵐の大地』中(氷と炎の歌3)ジョージ・R・R・マーティン


ページをめくるのがもどかしいくらい、先が楽しみな読書です。
以下、これまで同様、ドラマと原作の違いをチェックしつつ、感想をメモしていきます。

デナーリスの親友になるミッサンディ。彼女が10才ということに驚きました。これだとドラマとかなり違う感じな展開になっていくんじゃないでしょうか。まあ、原作ではデナーリスも16才くらいですが。それにしても、6才も差があれば、ドラマのような親友のような関係にはなれません。保護者と被保護者です。

あと、些細なことですが、この巻でもデナーリスは「弁髪」って描写がありました。これはやはり三編みではなくドスラク的に弁髪なのでしょうか? 三編みのまわりは剃り上げるの???

原作でも、デナーリスが勝利しただすと、周りに男たちが集まりはじめます。ドラマと違うのは、ジョラーがそれに嫉妬すること。友人として、司令官として、相談役としてジョラーをかっているデナーリスだけど、自分を束縛しようとするジョラーの態度は気にいりません。

デナーリスはかなり年上のジョラーよりも、亡くなった夫のドロゴに似た戦士のダーリオに性的な興味を感じ始めます。兄に売られた花嫁だったデナーリス、ドラゴンの母になったデナーリス。彼女もようやく「女」として成熟しはじめます。

一方、北部では悲しいレッド・ウェディングが……。キャトリンはドラマでも原作でも、決して私生児のジョンをスタークの一員とは認めません。それは、嫉妬心もあるけれど、それ以上にウェスタロス(ドーン除く)では政略でも恋愛でも、とにかく結婚が神聖なものだから。男にとっても、浮気は褒められたものではないので、決して公にはされません。

本当はエダードの兄が好きだったキャトリンにとって、エダードとの結婚はちょっと残念だったようです。それでも結婚して義務を果たすキャトリンだから、なおさら結婚の誓いをやぶり、私生児を連れ帰った夫のエダードは許せないし、ジョンも愛せないんでしょう。

でも、長男ロブは、ジョンもちゃんとスターク家の一員として認めています。いくら母のキャトリンが反対しても、ジョンもスタークだと断言するほど身内には熱い。そして、ロブはドラマと違い、原作では母キャトリンに頼りません。それどころか、自分のやり方に反対するキャトリンを遠ざけようとします。

キャトリンは、息子が自分を必要としていないし、遠ざけたいと思っていることも知っているけれど、それを受け入れて見守ろうとします、封建的な家庭の模範的な母の役どころは、王妃サーセイと正反対です。ただ、軍事にはめっぽう強いロブですが、政治経験が不足していて、若いので人脈もないのが辛いところ。そして、運も彼を見放します。ドラマのレッド・ウェディングと違って、唯一原作に救いがあるのは、奥さんのジェインがフレイの宴会に参加していなかったことでしょうか。

夫婦といえば、意外だったのはラニスター当主タイウィンとその妻が、実はかなり愛し合っていて、生前の妻がタイウィンを操っているみたいに言われていたこと。でも、奥さんの死後、タイウィンは人がかわったとか。そして、ティリオンを産んで亡くなった妻を思い、ティリオンを憎んでいるようです。

タイウィンは、孫のジョフリーが思った以上にも馬鹿で失望はするけれど、それでも一応、王の血筋の孫として対外的にはちゃんと扱うし、息子のジェイミーも長男としてそれなりに扱います。愛しているとか、誇りに思うとか、そういうこととは縁がなさそうですが。

戦場で捕虜になったジェイミーは、右手を無くし旅をするうち、自分がどれだけ恵まれていて、才能だけでのし上がったのではなく、「生まれ」で高い地位についていたかということを思い知らされます。こういうところは、原作がすばらしいです。そして、王都の政治的駆け引きに振り回され、姉に振り回されていたかを知ります。それを教えてくれたのは美しくない女騎士のブライエニー。そして、ドラマとほぼ同じ展開でブライエニーを助けます。

スターク家の次女アリアは、あちこち放浪して仲間と別離を繰り返した結果、ハウンドとふたり旅になります。ポットパイは旅籠に残り、ジェンドリーは鍛冶工として居場所を見つけて、アリアから離れていきます。彼女も、スターク家を離れた自分の非力さを知ります。でも、自分をかばって死んだ師匠の言葉を胸に闘います。「自分の目でみろ」。他人に頼らず、自分の判断で生きようとするローティーンは、危なっかしいけどたくましいです。

アリアの仲間だったジェンドリーといえば、ドラマではレッド・ウーマンに連れていかれたり苦労しますが、原作では彼はロバートの私生児ではなく、別にエドリックという私生児がいて、彼と一緒にシリーンやダヴォスが勉強したり、彼をダヴォスが逃したり。ドラマは登場人物が多すぎるので、ジェンドリーとエドリックをまとめちゃったんですね。

ドラマと原作が一番違うところは、クラスターでの反乱と野人が北部の壁を越えてくるあたりでしょうか。ドラマでは、野人が壁を越えてくる途中で、ジョンがブラックキャッスルに逃げ帰り、クラスターの反乱を鎮圧して、友人のサムと合流。そして、ブラックキャッスルで野人を迎え撃ちます。

でも原作は、クラスターの反乱でサムとジリが逃亡。同時並行でジョンは壁を越えて、野人と一緒に村を襲撃する途中で、サマーに助けられて逃げます。ブラックキャッスルで野人を迎え撃つ中で、イグリットと再会するけど彼女はもう虫の息。最後にまた「you know nothing, John snow」って言われるのが悲しい。

あと、グレイジョイのいけすかない老人がこの巻で無くなります。シオンがまだ捕まっている(らしい)時期、叔父に殺されたことを示唆するような形で。ロブやキャトリンは、まだ生きている段階のようです。ドラマと違って、シオンの動向は原作では一切出てきません。あのドラマの執拗なシオンへの虐待が創作だとすると、ドラマ班はかなりサディスティックですが、それとも、原作でも今後出てくるのでしょうか?


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