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クマのプーさんの知られざる真実『グッバイ・クリストファー・ロビン』アン・スウェイト


仕事先の上司から教わった本。『くまのプーさん』が予想以上に有名になってしまったことで、作者のミルンとその息子のクリストファー・ロビンの人生が大きく変わってしまったという実話。うちの娘がプーさん大好きだったので、すごく興味を持ちました。

最初、その話を聞いた時は、以前に公開していた映画『くまのプーさんと大人になった僕』かと思ったけど、どうやら違うらしく、ちゃんと調べたら映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』は日本未公開だそうです。ただ、DVDが発売になったので、原作のこの本も翻訳が刊行されたのだとか。

さて、『くまのプーさん』といえば、誰もが知っている世界的なキャラクター。作者のミルン(1886-1956)は、第一次世界大戦の通信兵として出征したことで、帰ってからも戦争のトラウマが彼を悩ませます。田舎でのどかな生活を送って静養することになりますが、都会の生活を捨てられない奥さんのダフネは大反対して、小さな子供を置いてロンドンの実家へと帰ってしまう。

田舎で静養する中で、父親のミルンが息子のために書いたお話が『くまのプーさん』の原型です。登場するのは、息子のクリストファー。親友が、くまのプーさんです。挿絵を担当したシェパードは、愛する奥さんを亡くしたばかり。プーさんのイラストを書くことが慰めになりました。

最初は、この『くまのプーさん』が大ヒットするとは思わなかったので、クリストファー・ロビンはクリストファーをモデルにそっくりに描かれました。最初に田舎で書かれた時点では、とくに問題がなかったのです。

ところが、予想を越えて『くまのプーさん』は大ヒットします。おかげで、ミルンと奥さんとの関係は修復できましたが、困ったのは息子のクリストファーです。なんせ本名だし、見た目を自分そっくりに描いた絵本のおかげで、クリストファーがどこにいっても、絵本の『くまのプーさん』がついてまわりました。学校では、かなりいじめにあうなど、かわいそうな状況だったようです。

このあたり、私が上司から聞いたエピソードは、本書の最終章に控えめに翻訳されているだけです。でも、映画版では、かなりちゃんと描かれているとのこと。確か日本でも、最近、育児漫画を描いていた漫画家さんが、娘さんのプライバシーに配慮しなかったおかげで、娘さんをかなりしんどい境遇に追いやったという話を聞きました。 

児童文学とか、子どもに関する本で有名な作家さんが、実は育児しない人だとか、自分の子どもに冷たい人とか、そういう逸話は過去にもいろいろ聞いたことがあります。いい人が必ずしも仕事ができるわけではないように、良い親が必ずしもいいクリエーターになれるわけでもない。

とりあえず、作品と本人は別物という「常識」はしっかり踏まえておきたいです。あと、SNSですね。あたりまえですが、子どもの写真を勝手に掲載しないように。


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