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5年かけて構築した採用手法が最適最短であることが実は科学的に立証されていた

前段

これは『4021の研究データが導き出す科学的な適職』を読んだ読書感想文です。本屋でたまたま見かけたこちらの書籍。「科学的な」という言葉に惹かれて表紙買いしてしまいました。

ステップ1「仕事選びにおける7つの大罪」の段で、「キャリア」における7つの幻想を打ち砕いてくれます(笑)あまりにも軽快に砕いてくれるものだから、読みながら薄ら笑いを浮かべてしまいました。結論として、この本で述べられている「キャリア論」は私自身の考えに最も近しいと感じました。「好きなことをやりなさい」「得意なことをやりなさい」「やりたいことをやりなさい」、キャリアデザインでよく語られるこれらの言葉は幻想です。「仕事」で感じられる「幸福」というのは意外と見えないところに隠されているものです。具体的に、「幸福が最大化される仕事」とはなにか?その答えは本を読んでみてください(笑)

今回、こちらの読書感想文を書こう!と思い立ったのは書籍内で紹介されている研究データに面白いものがあったからです。前職で、年間1000人規模の採用現場を仕切っていたおりにデータドリブンで得た「確証」が、実は科学的に論理づけられていた事実に驚きました。やっぱりデータは嘘をつかないんだなぁ~。

与えられたミッションはただひとつ 「優秀なヤツ」を採用しろ

前職は一言でいうと「人材を用いたサービス」です。語弊を恐れずにいうならば、より優秀でよりコスト・パフォーマンスの良い「人材」を採用することが、サービス・スケールには必要不可欠でした。立ち上げ時に私が負っていたこのミッションは、サービスの根幹だったといえます。

「優秀なヤツ」と一言でいわれても、その定義はなかなか難しいものでした。とりあえず、「学歴」と「経歴」で採用しろ、と言われるものの私自身がしっくりきませんでした。現場で活躍しているメンバーのバックボーンは多種多様でしたし、クライアントの評価が高いメンバーは必ずしも「学歴」や「経歴」がピカピカではありません。もちろん、そういった方々も活躍しています。

そして、早々に気づきます。「優秀」を定義することがとても難しいこと。また「優秀」さは、組織や人によって変化すること。その気づきから、私は自社サービスにおける「優秀」をどう定義づけるのか?その言語化からスタートさせました。

業界業種職種が異なるクライアントに対応するには、いわゆる臨機応変な対能力がメンバーに求められました。また、依頼内容が依頼の度に変化したり、要件が曖昧なまま依頼されたりすることもあったので、「コミュニケーション能力」や「応用力」も多く求められていたと思います。世間一般的に語られる、「スキル」の枠だけでは語れません。そこから、「能力」を上記の図で区別してみることにしました。

そして、採用時に「何を見極めるべきなのか?」「何が見極められるのか?」を順序だてて構築しました。

・モチベーション
・ポテンシャル
・ビジョン
・ビジネススタンス

この領域は、対象者のこれまでの人生で培ってきた「行動の癖」「思考の癖」による部分が大きく、簡単には変えられません(変えるべきでないものもあります)まして、まだまだ「中途採用」が主体であった自社では、採用後に丁寧な「育成」をしていくリソースが潤沢にありませんでした。だから、自分たちが掲げる「ビジョン」や「カルチャー」、「人物像」にマッチングしているかどうかを主眼におきました。

とはいえ、「エントリーシート」や「面接」でみえる部分はほんの一部。まさに氷山の一角。そして、この土台がマッチングしているからといってハイパフォーマーになれる、というわけでもありません。最も見極めたいポイントは「コンピテンシー(行動様式)」だったんです。こちらも、対象者が今までどのような環境に身をおいて仕事をしてきたのか、によって変化させることが難しい部分になります。

立ち上げ期において、クライアントの離脱は大きな「損失」でした。そして、クライアントの離脱の9割は「サービスに対する不満足」です。それはめぐりめぐって、採用コストに響きます(その反対もしかり)「優秀なヤツを採用する」と同時に「優秀なヤツに定着させろ」もミッションに加わりました。もちろん、採用後の施策も重要なポイントでもありましたが、採用時に組織に対する「ミスマッチ」を防ぐことができたなら、その後の負のスパイラルを断ち切れます。みながハッピーになれます。だから、「採用」というフェーズにかなりのコスト(お金と労力)を投入しました。それは結果的に間違っていなかったと思います。

採用基準は最難関設定 気がついたら同業他社内でスタンダード化していた

採用フローは紆余曲折あります。コスト削減のために順序や内容を変更してアップデートを常にかけ続けるものと思いますが大まかに整理すると

①エントリーシート
②適性検査(能力・資質・ストレス耐性 など)
③一次面談
④実務テスト
⑤研修
⑥二次面談

このようなステップがありました。各ステップにおいて、能力ピラミッドのどの部分を見極めているのか、細やかに設定します。採用基準を明確化する作業は何も「優秀なヤツ」を採用するためだけではありません。組織として、誰が採用業務を受け持ったとしても、ある程度同じ基準で活動できることが重要です(関連記事:採用事務スタッフの退職が急遽決まり、1日で引き継ぎを完了させた話

ここで採用実績をデータドリブンするために、いくつかの事象を定量データ化しました。

◎エントリーシート
 →性別・年齢・学歴・経歴・地方 等をフラグ化
  これらのフラグが「実績」「成果」に影響しないことを証明する

◎適性検査
 →適性検査の数値をすべてグラフ化
  エントリーシート*適性検査*実際の成果
  相関関係をクロス分析

◎面談
 →面談の質問内容を統一
 エントリーシート*適性検査*面談結果*実際の成果
 相関関係をクロス分析
 一次面談と二次面談では「面談」の目的をわける。

◎実務テスト
 →実務テストで計測するコンピテンシーをすべて定量化
 エントリーシート*適性検査*面談結果*実務テスト結果*実際の成果
 相関関係をクロス分析

◎研修
 →現状の実務遂行能力だけではない
  「フィードバック耐性」「修正力」「適応力」「向上心」等を定量化
 全ての結果の相関関係をクロス分析

結論をまとめます。

・性別は関係ねぇ!
・学歴は関係ねぇ!
・経歴は関係ねぇ!
・地頭の良さは必要だが、地頭が良いやつほどハイパフォーマーでもない
・資質診断はあてにならん 占い程度に思っておくが吉
・ストレス耐性は重要
・虚偽回答率は重要 ※自分でも試したけど、わりと炙り出される
・面談の回答内容はデータを積み重ねれば一定の「解」を得られる
・実務テストは対象者のすべてを丸裸にする
・研修は重要 能力の良し悪しは一度でジャッジメントしてはいけない
・「修正力」「向上心」の高さはハイパフォーマーの特徴


この結果から採用の判断軸に「重み」を追加しました。

判断軸:重みイメージ
①エントリーシート:1
②適性検査(能力・資質・ストレス耐性 など):1
③面談:3
④実務テスト:5
⑤研修:4

そんなこんなで、書籍のお話に戻ります。ちなみに、『ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える』にも採用手法についての分析結果がまとめられているのでおすすめです。

【内容抜粋】
1)1998年、フランク・シュミットとジョン・ハンターは面接時の評価から入社後のパフォーマンスがどこまで予測できるかという85年にわたる研究をメタ分析し、その結果を発表した。よく行われている非構造的面接の決定係数は0.14。ほとんどパフォーマンスが予測できないことが分かった。つまり、構造的な面接が重要なのだ。
2)Googleのアナリストであるカーライルは採用面接回数の妥当性を分析。受験者を採用すべきかどうかは、4回の面接によって86%の信頼性で予測できることを発見した。
3)Googleの社員数が約2万人になりまで、ほとんどの社員が週に4~10時間を採用に費やした。
4)社員のトレーニングは最も効率の良いパフォーマンスを出せる仕事だ。12時間の講義を受講者が10人に対して行ったとしよう。年間20,000時間の勤務に対し、パフォーマンスを1%向上できたら?リターンは20倍近くになる。
5)積極的にフィードバックを求める人は生産性が最低2%向上する。

引用元

フランク・シュミットとジョン・ハンターの「メタ分析」。これこそ、自分が5年のあいだにちびちびと集めていたデータの集大成でした。

「仕事のパフォーマンスは事前に見抜くことができるのか?」

信頼度順
1位 ワークサンプルテスト 0.54
2位 IQテスト 0.51
3位 構造的面接 0.51
4位 ピアレーティング 0.49
5位 職業知識テスト 0.48
6位 インターンシップ 0.44
7位 正直度テスト 0.41
8位 普通の面接 0.38
9位 前職の経歴 0.18
10位 学歴 0.1

結論としてはどれもあてにならんwというお話なのですが、そのなかでも自社で採用していた採用手法が上位に集まっていることに驚きました。いろいろ確かめたうえで、確からしい「手法」を確かに選択していたのです。


・ワークサンプルテスト→実務テスト
・IQテスト→能力検査(地頭検査)
・構造的面接→面談設計
・ピアレーティング→研修

もうひとつ重要なポイントとして「研修」です。どのような研修だったかといいますと「実務テスト」をベースに、自分の意志で業務を選択してもらい、そのアウトプットに対して「怒涛の即時的フィードバック」をしました。フィードバック後の修正も、本人の意思に一任します。入社後もハイパフォーマーとして活躍している人物は、この「鬼研修」といわれたものに必死に食らいついてきました。そうです、「向上心」と「行動」が伴うひとは最強なのです。

そして。

気がつけば採用率は1%を切っていた……。後ろを振り返ってみると、同業他社も同じ採用フローを採用していた……。

おまけ)適性検査は役に立たないが……

4021の研究データが導き出す科学的な適職』内では適職を探すのに役立つ唯一の性格テストとして「制御焦点理論」を説明しています。この理論については、制御焦点理論等のページを参考にしてください。目標達成する際の人間の動機の焦点を「ポジティブ」「ネガティブ」の2面で説明する理論です。

こちらの理論については、恥ずかしながら存じ上げませんでしたが、自分の経験則から導き出した結果として、組織内における「人物像」は3つに分けられると考えました。それを言語化したのが↓↓

「ざっくり人材タイプ」指標です。組織内においてこの行動原理タイプのバランスが偏ると、組織のコンディションが悪くなります。これは一種「役割認識」として考えられるので、組織全体に「役割」として認識させることも効果的と考えています。こちらはまだまだ効果検証を十分にしていないので、もし興味あるかたはお手伝いさせてください(笑)

以上、おまけでした。

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