とおまど、M-1に出る。 決勝編
前話(決勝前コミュ編) あらすじ
準決勝を制して会見の壇上に立ち、世間の注目と期待を恣にした浅倉と樋口。しかし『相方を信頼していない』と西城から看破された樋口は芯を食った指摘に逆上する。それをきっかけに樋口は自身のスタンスを見つめ直し、浅倉と共に『あるべきかたち』を追究していく決意を固める──
──────⑲ 爆発するかも
《爆発したい
粉々になりたい
散らばりたい》
《会場
を
吹き飛ばす
火》
『今夜
新たな笑いが
刻まれる』
────(All Right Everyone!!)────
────(Let’s Introduce a Masters of Ceremony!!)────
────(KOJI IMADA and AYA UETO!!)────
────(Come Up!!)────
────(M-1 Grand Prix)────
* * *
『マイク一本
我が身ひとつで笑いを生む
漫才師たちの戦場
聖夜の決戦に向け
漫才戦士たちが奮い立つ
今年も大幅に増えた
史上最多8541組
日本全国8地区
5ヶ月に及ぶ長き死闘』
『人生、賭けて
僅か4分間の漫才に込めた
自分達が信じた笑い
の
はずが
史上最も高き壁
過去ファイナリストすら
跳ね返されていく
もっとウケたい
もっと
もっと
求めるのは
爆笑
爆 発
それが
王者の鼓動』
(その心臓は
動いているか)
『駆け抜けた
友の分まで
だからこそ
証明したい』
────(♪He’s a Pirate / Klaus Badelt)────
《爆発するかも
私
なんか……
いつもそんな感じする。最近》
『私たちが
一番
面白い』
『真空ジェシカ!!』
『とおまど!!』
『令和ロマン!!』
『ダンビラムーチョ!!』
『くらげ!!』
『モグライダー!!』
『ヤーレンズ!!』
『マユリカ!!』
『さや香!!』
『カベポスター!!』
────(♪Back to the Future / Alan Silvertri)────
────(M-1グランプリ!!!!)────
* * *
今田『東京六本木のテレビ朝日から生放送でお送りしています
M-1グランプリ2023 司会を務めます今田耕司です
そして!』
上戸『上戸彩です、よろしくお願いします』
今田『いやいやいやいや さぁ彩ちゃん
今年もM-1グランプリ始まりました』
上戸『オープニングのVTRからなんかもううるうるしちゃって』
今田『ななまがりがカッコ良く見えんのはおかしいです
どうかしてますよ
で何でさや香の新山だけプロデューサーみたいに見えるんでしょうね』
上戸『あははは ちょっとね、そう見えましたね』
今田『いやーでも彩ちゃんどうですか』
上戸『いやーほんとに年々感動が増すんですよね
この皆さんの運命が変わる瞬間に立ち会えてもう感激です』
今田『今日も間違いなくスターが』
上戸『そうですね』
今田『ここで誕生します』
上戸『はい』
今田『さあそしてエントリー数 今年史上最多です
8541組 ここ最近毎年1000組ずつ増加して、増えております
さあ本当に勝ち上がるのが熾烈な大会となりました』
上戸『ほんとです』
今田『M-1グランプリ2023
この後はレジェンド審査員の皆さんが登場です』
────(M-1 Grand Prix)────
* * *
今田『漫才頂上決戦M-1グランプリ2023
ここで19代目の王者を決めていただく
審査員の皆さんに登場してもらいましょう
今年の審査員は、こちらのレジェンドです
────(M-1 Grand Prix 2023 JUDGES!!)────
────(Here We Go!!)────
[1]
『初代M-1グランプリ王者にして
笑いの殿堂・なんばグランド花月の大看板
兄弟漫才のトップランナー
中川家・礼二
<REIJI NAKAGAWA>』
[2]
『M-1史上初 敗者復活から逆転優勝
超売れっ子になってなお
毎年オール新ネタのライブを打ち続ける
国民的漫才師
サンドウィッチマン・富澤たけし
<TAKESHI TOMIZAWA>』
[3]
『今年7代目 漫才協会会長に就任
東の漫才師たちの人生を背負い
舞台では観客を爆笑に包み込む
浅草の星
ナイツ・塙
<NOBUYUKI HANAWA>』
[4]
『福岡の劇場から始まった漫才人生
芸歴を重ねるごとに冴え渡るワードセンスで
見るものを魅了する言葉の魔術師
博多大吉
<DAIKICHI HAKATA>』
[5]
『週のレギュラーは驚異の14本
お笑い戦国時代 唯一天下を取った女芸人が
今年もM-1に参戦
芸歴43年 東のレジェンド
山田邦子
<KUNIKO YAMADA>』
[6]
『上方漫才の名門に生を受け
デビュー以来数々の賞を総なめにする最強姉妹
舞台に立ち続けることを宿命づけられた
生まれながらの漫才師
海原ともこ
<TOMOKO UNABARA>』
[7]
『THE LEGEND OF LEGEND
漫才の歴史は彼以前・彼以後に別れる
全ての芸人が憧れるお笑い界のカリスマ
ダウンタウン・松本人志
<HITOSHI MATSUMOTO>』
────(There’s Enough for M-1 Grand Prix JUDGE!!)────
今田『以上7名の審査員の皆さんです よろしくお願いしまーす』
一同「「「「「「「お願いしまーす」」」」」」」
全審査員が入場したのと入れ替わりに、奥で控えていたファイナリストがバックステージの待機席に就く。リハで浚った通りの段取りで番組が展開していき、導線処理や合図が明快で演者としても動きやすい。
番組開始時間は18:30ということになっていたが、昨年チャンピオンのエキシビジョンステージや敗者復活の模様、そしてオープニングムービーなど、視聴者を焦らしに焦らすしつこさで時刻は既に19:00を過ぎている。こんなにも演者をヤキモキさせるのかと溜息物ではあったが、それも大会価値を権威づける演出の匙加減なのだろう。
(……まあ、ステージの価値を高めているのは
現状、どう考えてもスタッフさんですので
……だから、やりますよ
少しはまともな飾りになれるように)
リハの集合時間は14:00であった。そのためかれこれ5時間もテレ朝にいることになる。オリエンが済み次第演者メイク入りの声掛けがなされたのだけれども、メイクが早すぎても出番前に崩れていくだけだから、できるだけ早くタスク完了したいスタッフと出番の直前に整えたいファイナリストの思惑が衝突する静かな攻防があったりした。私たちはセルフメイクを買って出たので損を被らずに済み、ビジュアルレッスンのメリットを遺憾無く享受できたのだが。
ビジュアルはさておき緊張感やコンディションの持続には限度というものがあって、番組自体を素直に楽しんでいるとみえる透の自然体がただただ羨ましかった。
今田『さあ松本さん』
松本「はいはい」
今田『今年もやってきました』
松本「いやーーーーーーー
塙が休まなかったね」
今田『いやいやきましたよ』
塙 「そう……っすね」
松本「何があったのかなと思って僕もヤホーで調べたんですけども」
今田『Yahooで調べてください』
松本「ねーいやよく来てくれましてね
もしかしたら志らくさんにまた変わるのかなって」
今田『ま一応スタンバイはしていただいてたと思います』
松本「スタンバイはしていただいてたんや」
今田『よくぞ来てくれました塙くん』
塙 「あのーすいません爆笑の前にネットが爆あの爆発しま」
松本「噛んじゃったなー」
塙 「すいません噛んじゃいました」
山田「いーいじゃない!!」
松本「珍しいな、噛んじゃったね」
山田「ちょっとだって!」
塙 「すいませんでした」
今田『かなり、かなり動揺してますよ
大丈夫ですね? 今日は審査員ですから
審査に集中してください』
塙 「はいやります、はい
一生懸命頑張ります、よろしくお願いします!」
今田『悪意はございませんほんとに、ね
さあそして 色々皆さん審査員
どうですか大吉くん、今年も来ました』
大吉「はい、えー今日も大変なんですけど
なぜか明日の朝イチ、ゲストが上沼恵美子さんです」
今田『じゃあ今日の話にはなる』
松本「えー見てはるかなー」
大吉「もう意味がわからないです なぜなのか
緊張しますけどはい、頑張ります」
今田『是非喋ってくださいM-1の話を
さあ富澤くん いかがでしょう』
富澤「もう〜〜終わってからも悩みますからね
未だにマヂカルラヴリーが漫才か否かって悩んでます」
今田『まだ!?』
富澤「まだ悩んでます」
今田『もういいんじゃないですか!?』
富澤「はい、どっちなんだろう」
今田『いやいや漫才です』
富澤「漫才ですね、はい」
今田『さあ礼二くん、いかがですか』
礼二「エ トーチョグーチェチョンターイ グーシェイ
テイウォーウイヨンターイ ウーテイツォンダイウー
ウェイ!! ウェイヨンダイウー」
今田『いやもう気持ちはわかるけど長い
なんて言うたんすか日本語で』
礼二「がんばれ」
山田「みじか」
今田『短いなあ、頼むで
今のクダリを頼みに来んのにあんな神妙に来るな!
──「すいません……俺これフられた時に
中国語やらしていただいても……」いらんねん!!』
松本「まじめやなー」
今田『真面目やほんま』
礼二「すいませ……」
松本「顔赤なってもうたるやん 恥ずかし」
今田『邦子さん、邦子さん2年連続いかがでしょう』
山田「はい、いやークリスマスイヴなんで
ねー今日はちゃんとサンタの帯を」
上戸『あーほんとだー、帯が素敵―』
今田『サンタさんここで見しとかないと』
山田「これで終わりです あはははは」
今田『いやいや今日も、審査の方集中してくださいお願いします!』
山田「いやー! ドキドキするー!」
今田『ねー! ほんとに審査員もドキドキしてるんです!
さあそしてようやく! オファーは続けてたと思いますが
海原ともこ! ついに初審査員ということで、いかがですか』
海原「いやもうほんまに人を審査するような性格じゃないんですけれども」
今田『まあずっとね
ちょっとオファーは行ってたと思うんですが、いやそんな、と』
海原「てかねえ、そのー漫才の説明が難しくてですね
感覚でやっちゃってるもんですから」
今田『面白いか面白くないかそれでいいんだと思います』
海原「それだけでいいですか?」
今田『いいです! ええ
どうですか今の心、あの審査員するにあたっての』
海原「いやずーーっと袖で、『松本さん、あたしどうですかぁ……
あたしどうですか』って言ってました」
松本「すーーーーーっごいやかましかったよ?」
山田「ずーっと喋ってました」
海原「落ち着かないんで」
松本「緊張してるみたいですよいやまあそりゃそうか」
海原「はい」
今田『そうだ今日は聴く方ですからね』
海原「はい、漫才愛だけで頑張ります」
今田『はい! 是非審査員の皆さん、よろしくお願いします!』
一同「「「「「「「お願いしまーす」」」」」」」
本年の審査事情においての重大事は、海原ともこ姐さんが審査員に加わったことだ。勇退した立川志らくの後釜だというが、上沼恵美子の枠として目されていようことは突飛な連想でない。
品評を託すに足る地位に上り詰めた女性漫才師は、稀だ。これは実力の問題というよりは社会的なキャリアキャップに起因する。男性優位的封建主義とマッチョイズムが支配するお笑い界に厳然としてはだかる、ガラスの天井。
ともかく本年の審査員の女性比率は2/7となり──THE Wの女性審査員率がそれに劣っていることはどうかと思うが──、心情の面では女性チャンピオンがより生まれやすい回になったといえるかもしれない。女性芸人のスターを嘱望する世論の期待も、この時代において臨界にまで膨れ上がっている。
(でも、そうしたことより
体が演りたいと言っている
私はその衝動で演る
誰のためでもない)
今田『さあそれでは皆さん、審査の席の方にどうぞ!
さあこの方々が19代目の王者を決めるということです彩ちゃん』
上戸『はいそうですねー
でも会場の皆さんも本当にあったかくて拍手も大きくて』
今田『そうですよね
さあ今日もですね、このM-1、クリスマスイヴ
予定のなかった人たちと、楽しみたいと思います』
上戸『よかったです』
今田『皆さん是非楽しんでいってください
まずは11組から4組に絞られるファーストラウンドです
さあ出場権を決めるのは、毎年恒例こちらです
笑神籤になっております
そしてこの笑神籤で出た順番に即、漫才をしていただきます』
上戸『はい、えー出番順が漫才師たちの運命を大きく左右しますので
今年も京都の芸能神社でしっかりお清めをしてまいりました』
今田『さあそして彩ちゃん、M-1といえば忘れてはいけないのが』
上戸『はいこちらです!
M-1に嵐を呼ぶ存在、敗者復活組です!』
今田『そういうことです
敗者復活組のこのクジ、入れていただきましょう』
上戸『はい、いきます』
今田『さあ笑神籤に入ります』
上戸『もう今田さん次第ですからね順番は』
今田『いやこれね回し方のコツがもうわかったんですよ──
…………────』
上戸『──……地味、地味だなー』
今田『これがそう、そうなの
ガチャガチャガチャってやったら一緒なのよ
だからゆっっくり回して さあ、だいぶこれで』
上戸『回りましたか?』
今田『回りました!』
上戸『よしっ、はい』
今田『さあ、それではお待たせしました
この後ついに、ファーストラウンドが始まります!』
────(M-1 Grand Prix)────
* * *
────(M-1 Grand Prix THE FIRST ROUND)────
今田『漫才頂上決戦M-1グランプリ2023
いよいよ、ファーストラウンドが始まります』
上戸『出番順を決める笑神籤は
ステージの神様に愛されたスーパーアイドルに引いていただきます
今年はエキシビジョンマッチに輝いた、この方々です!』
「お、出てくるよ、ふたり」
「……………はぁ……」
かつてこれほど頭痛がしたことはない。
去る12月14日夜、先週放送のM-1事前番組に先立ち公開された笑神籤プレゼンターの報道記事を見、私は愕然とした。
『自分の「しあわせ」に向かって突き進む、奔放な女の子
幼馴染みで先輩の透を慕っている
高校1年生 市川雛菜
<HINANA ICHIKAWA>』
市川「よろしくお願いしま〜〜す!!
お世話になりま〜〜す」
『内弁慶な小動物系の女の子
真面目な努力家で、勉強が得意
騙されやすく、幼なじみによくからかわれている
高校1年生 福丸小糸
<KOITO FUKUMARU>』
福丸「よ、よろしくお願いします……?」
やりすぎ。あり得なさすぎ。
露骨な贔屓に案の定ネットは若干荒れたらしいが、『ABC制作なら悪ふざけでやりかねない』という声もまた優勢だったようだ。定例であればその年に活躍したスーパーアスリートがプレゼンターを務めるものなのだが、笑神籤導入回の2017年と2020年においては司会者自身が引いていたこともあるので、こういうあまり厳密でない人選の感じは番組構成のゆとりとしてお誂え向きだったのかもしれない。
報道記事を見せつけられている一連の流れは例によって雛菜のカメラに収められており、『ホントドッキリ』としてパッケージされたクダリが逐次公開されていたネットドキュメンタリーで流され、私のマジのリアクションが反響を呼んだりもしていた。正直あの時は『水曜日のダウンタウン』かと思った。そうならばまだよかった。
それにしても、小糸と雛菜が私たち『とおまど』と揃いのダークスーツを着ているということは、この衣装が準々決勝翌日時点で発注されていたということ……? 私たちの決勝進出を見込んでオファーした……? 誰、こんな綱渡りな企画したの。頭おかしすぎる……
今田『さあ雛菜ちゃん小糸ちゃん
お越しいただきありがとうございます!』
上戸『ありがとうございますー』
今田『いやいやどうも
やっと今ちょっと事態を呑み込んでゾッとされてるところでしょうか』
市川「そうですね〜〜
ただ、今日す〜っごく緊張感ありますね〜〜」
今田『そうですかやっぱわかりますか』
市川「その〜、雛菜のしあわせ~なとこ見てたら
みんなもしあわせ~って気持ちになるでしょ〜?
だから今日しっかり見てもらいま〜〜す!」
今田『これは責任重大ですね
さあ小糸ちゃん、いかがですか』
福丸「ぴぇ…………ほ、ほんとに、あの……
クリスマスとい、い、クリスマスイヴといえば──
クリスマスイヴ、はい
す……! すみません!
あの…… M-1だと思って……
いつも、見てたので…… う、嬉しいです……」
今田『あ、あ……
いつもクリスマスイヴにやってるわけではないんですけども』
福丸「ぴゅぇ………… す、すみません……!!
ごごごごめんなさい……!!」
今田『なんか、せっかく言っていただいたのに ね
過去にもありましたけども』
福丸「は、はい、そうですね…… はい……!」
今田『どうですか、M-1っていうのはその、好きな漫才師とか』
福丸「……! や、やっぱり幼なじみの、『とおまど』が……!」
上戸『おー』
今田『あ、挑戦者が』
福丸「はい……! そうです!」
今田『今年の楽しみにしていただいて
このクジ、引くの重大ですから、是非』
福丸「ピャッ…………………………
よろしくお願いします……っ」
今田『大丈夫ですか!?クジ引くのは』
福丸「ぴゃ…… もう、本当に、あの、責任持って
ひか…………引かせていただきたいなと思います……」
市川「あは〜〜〜♡」
今田『是非、是非
で、あちらに座ったら
もう漫才大いに楽しんでいただきたいと思います』
福丸「はいっ」
今田『さあ、ということでお二人改めて、よろしくお願いしまーす』
市川「お願いしま〜〜す」
福丸「お、お願いします……!」
出番順の運命が幼なじみに握られていると考えると、安心するような、苛立たしいような気分がぐるぐる混ざる。
どうせ引くなら早い順番がいい。いっそトップバッターでもいい。こんな息の詰まるような二酸化炭素濃度が高い待機席からは一刻も早く退出して肩の荷を下ろしたい。確認モニター越しに小糸と雛菜をプレゼンター席へ見送り、私はささやかな願を掛けた。
今田『さあそれでは全ての準備が整いました!
さあ松本さん!』
松本「はいはいはい!」
今田『いよいよ、始まりますいかがでしょう!』
松本「ねー 考えたらすごいやっぱ若返ってるね」
今田『そうですね!』
松本「ね、もう30代がほぼか」
今田『はい、もう全員30代前半とかです』
松本「モグライダーがギリギリ40代や、な?」
今田『いや、モグライダーも、30代です』
松本「え? ここに40と、ともしげ41歳ってなってるで」
今田『あれ?? これ誰や……?
モグライダー浅倉透』
上戸『34歳』
今田『樋口円香…… なんやこのモグライダー』
松本「え、全然違うやん!」
今田『誰やこのモグライダー!』
松本「えー何これ! 怖い怖い怖い怖い!」
今田『こっちの資料のモグライダーと違いますよ!』
松本「なんやねんじゃあこれは!!
おかしいやないかー!!!!」
今田『あ、浅倉と樋口ですよ!』
松本「どういうことやこれ!!!!」
今田『なんだこれは!!』
松本「やめたらあ!!!!
どうでもいいので早く進行してくださいませんか?
こちらはずっと待たされているんですけども。
今田『どうなってるんか!!
えー? そちらの資料が多分、正解ですね』
塙 「多分あってますよこれ」
今田『こっちが間違ってますから
松本さんの方の、唯一とおまどが17』
松本「それが一番若、あの一番年が下だというぐらいですから
若返ってるなぁって感じが僕なんかはしてしまいますけどね
今田『接点のある若手とかいますか?』
松本「いやまぁいますよ?
それこそモグライダーとかあの辺もアレだし
ま、でもそこは俺は一切」
今田『関係ない?』
松本「関係ない、むしろもう低くつけてやろうと」
今田『いやいやちょちょちょ』
山田「えーーーー」
今田『そらもうフラットでいいです低くはもう』
松本「違うの?」
今田『お願いします』
松本「ん、ん、ん」
今田『さあそれではこのメンバーで参りましょう
それではいきましょう
今年のM-1グランプリが始まります』
今田『雛菜ちゃん! まずは、一発目笑神籤、お願いします』
市川「わかりました〜
失礼しま〜〜〜す!!」
上戸『はい、よろしくお願いします』
できるならトップバッター引いてよね。早くここから解放して。
言っとくけどこれ、フリじゃないから。逆とかナシだから。
頼んだからね──
今田『さーあ雛菜ちゃんが一発目まずは誰を引くのか
まずはご自身だけで見てください』
市川「は〜い」
今田『さあ!参りましょう、ファーストステージ
トップバッターの発表を、お願いします!』
市川「……1組目は────────」
──────⑳ とおまど、決勝戦に出る。
今田『M-1グランプリ2023
いよいよファーストラウンド最後の11組目です!』
上戸『次で最終決戦に進出する最後の1組が決まります』
今田『はい、それでは念のために雛菜ちゃん
一本、笑神籤お願いします!』
市川「は〜〜〜い!」
今田『さあラスト11組目、発表をお願いします!』
市川「11組目は〜〜…………
とおまどで〜〜〜〜す♡」
今田『さーあ残っていたのはもちろんとおまど
急いでゲートのほうにお願いしまーす!』
* * *
────(M-1 Grand Prix 2023 THE FINALISTS!!)────
───(♪Can’t Help Falling In Love With You / Hi-STANDARD)───
『結成0年 初出場にして初の決勝
東京都出身 浅倉透と
同じく東京都出身 樋口円香』
『実家が隣同士の幼なじみで結成された
透明感あふれるアイドルユニット
誰一人予想だにしなかったM-1出場で
日本全国が度肝を抜かれた
二人は言う──』
『誰かになる必要なんてない──
走り出す波を追って
少女たちは碧い風になる……!』
* * *
紹介VTRの裏で、せり上がりへ足を踏み入れしなに透が私の袖を引いた。
「樋口」
「ん」
「私たち、けっこうすごいから」
「うん」
「勝たなきゃ、そういうこと」
「笑えるくらい、余裕」
「ふふっ……なんか今、笑いたい」
「ふふっ」
「決めるよ」
「オッケー」
────(♪Zurg’s Planet / Randy Newman)────
────(Entry Number X283!!)────
────(TOO MAD!!)────
○ON AIR 00:00:00
────(♪Because We Can / Fatboy Slim)────
●ON AIR 00:00:01
────(yes we can can can can can can can can can!!)────
────(oh oh, oh oh)────
(決勝に来たんだな……
みたいなことを思ってた
出囃子がうるさくて
返しなんて全然聞こえなくて
客席とか、現実感なくて
ぼんやりしてた)
両者「「どうも〜〜」」
浅倉「浅倉透と」
樋口「樋口円香で」
両者「「とおまどです、よろしくお願いしまーす」」
樋口「べっぴんさんと、べっぴんさんでやらしてもらってます」
浅倉「うわ、大丈夫? なんか」
樋口「何が」
浅倉「許諾とか」
樋口「いいでしょこんなツカミ、みんなやってますからね
べっぴんさん一つ飛ばしてべっぴんさんって
パブリックドメインですよ」
浅倉「取り立てに来ないかな、使用料」
樋口「誰がよ」
浅倉「よしもと」
樋口「来てたまるか」
浅倉「ドンドンドン!
べっぴん料払わんかーい」
樋口「べっぴん料て」
浅倉「ドンドンドン!
一つ飛ばしたらんかーい」
樋口「何をよ」
浅倉「ドンドンドン!
ワレの玄関、住みます芸人したろかーい」
ないはずの3段目にアドリブ差し込んできたな。
声量もテンションもノってる。ワードもいい。
樋口「ふふ、なんなのその反社のイメージ」
浅倉「あるかもね、こういう闇が」
樋口「ないわ ないですよね?」
以前と違って──焦りなんてまるでなく、余裕をもって対応できる。透の動きが、わかる。
いくらでも無限に流路をくねらせられそうな文脈の激流の中から、透がひょいとワードを拾って投げてくる。飲む点滴みたいに私の体へと自然と染み込むそれは、複雑な選択肢で飽和した脳を潤す。
樋口「言うてますけども
まああのー そういう強大な事務所と違ってね
私たちんとこは弱小でして」
浅倉「ね 窓にガムテープで書いてるもんね、社名」
樋口「金がないんですよ、自社ビルですらない」
●ON AIR 00:01:00
浅倉「ペットショップだしね、一階のテナント」
樋口「アイドルなんてペットのような商品だとでも?」
浅倉「卑屈だなー」
樋口「犬猫見てると他人事じゃないから
売り物同士の絆さえ感じるわ、
向こうもそんな目してる」
浅倉「ふふっ、してないよ、無垢な目だよ」
私とて台本にない過剰な修飾が溢れる。そんなイレギュラーに微塵も動揺の色を見せることなく、当然のように透がついてきて欲しい言葉をくれる。
これ、結構キリがないかもね。決勝ネタは4分ということになっていたけど、チェックのため事前に提出していた発表予定ネタ台本から脱線して膨らんできていることで、どんどん尺が押してる。ラストバッターで巻きの指示もないし、まぁ進行上は最悪5分くらいまで大丈夫だとの補足があったので、それを信じて伸び伸びとやらせていただきますけど。
樋口「そんなアイドルをサバく弊社社員はたった3人
新橋駅前の牛丼屋みたいに回してまして」
浅倉「あー足りてはないよね、人」
樋口「オーダーが混んでるのよ、
このさい食券制にした方がいい」
浅倉「どういうこと?」
樋口「やってみるからアイドルやりな」
浅倉「え うん
ねー、ねーねー プロデューサー」
樋口「あんたプロデューサーにそんな口きいてんの?」
浅倉「レッスン入れたいんだけど」
樋口「入口の券売機でトレチケをお買い求めください」
浅倉「げ、金取んの」
樋口「1000マニー」
浅倉「独自通貨じゃん
じゃあお願い、両替」
樋口「日本円でマニーは買えない」
浅倉「えー」
樋口「フェスで結果出すと貰える」
浅倉「成果主義だー、世知辛っ
じゃあ出してよ、フェス」
樋口「フェスチケをお買い求めください」
浅倉「詰んだわ」
●ON AIR 00:02:00
私たちの『思い出』。
小さい頃。小学生の頃。中学生の頃。高校生の今。
そしてその延長に、自然と『アイドル』としての今が連なっていた。
家のような居心地の事務所。
日々のトレーニング。
フェス。オーディション。
様々なステージ。
個性的なアイドルたち。
サポートしてくれた仲間。
社長、はづきさん、そしてプロデューサー。
樋口「まあ今回だけはほら、取っときな……」
浅倉「ちょ、握らしてこないでよ、マニー札」
樋口「好きなの注文しな」
浅倉「えー、メガレッスン丼エモ盛り」
樋口「牛丼屋引きずってんな
あんまアイドルが糖質で腹パンパンにしないのよ」
浅倉「大丈夫、めっちゃのせるし 紅生姜」
樋口「いやメタボのサラリーマン川柳詠むな
大体あれでカロリーはキャンセルされないから」
浅倉「体にいいらしいしね 酸っぱいの」
樋口「ん レモンの蜂蜜漬け持ってきてる子とかもいるけど
どうすんの
タッパー開けて紅生姜の酢漬けひったひただったら
とびっきりジンジャーよ
とびっきりジンジャーのひったひたタッパーよ」
浅倉「ふふっ、なに言ってんの」
樋口「持ち込みは水分だけにしときな」
浅倉「大丈夫、席ついたら出るし 飲み物」
樋口「牛丼屋引きずってんな」
浅倉「茶色くてさ、コップが
中身わかんないの、お水かお茶か」
樋口「確かにそういうのあるけど」
浅倉「ちっちゃいレゴくらいの氷入ってんの
ザラーッて」
樋口「口に入れちゃいけないもので例えないでよ
ていうか何? 食券制って
アイドルは食い物だとでも?」
浅倉「樋口が言い出したんでしょ、食券制は」
●ON AIR 00:03:00
悍ましい芸能界の暗がりの中で、みんなと眩しいくらいの日々を駆け抜けていられるのは、きっと283プロダクションという明るい部屋のお陰なのかもね。
(偶然じゃない
運命でもないんだ
いつも気付けばみんながいる
そんな毎日が奇跡なんだ)
浅倉「あ、思いついた」
樋口「何」
浅倉「私もなるわ、プロデューサー」
樋口「事務所なめんなよ」
浅倉「やってみるから、アイドルして」
樋口「嫌です」
浅倉「いいじゃん、ほら」
樋口「お断りします」
浅倉「やろうよ」
樋口「いつもと同じ
そうやって逃げ場を塞いで話をする
──あなたの得意な手口」
浅倉「始まってる?」
樋口「話しかけないでください
その、にやついた顔も見たくありません
端的に言えば、あなたの存在そのものが不快です」
浅倉「樋口、プロデューサーにそんな口きいてんの?」
樋口「優しい顔で寄り添うこともやめてください
……勘違いしそうになるので」
浅倉「好きじゃん、もう」
樋口「でも、隙を見せても、あなたは何もしないでしょ?
ねえ、ミスター・ジェントルマン」
浅倉「ドンドンドン!」
樋口「……何、この音」
浅倉「樋口が女の顔するから、来た
べっぴん料の取り立て」
樋口「そんなんでも発動すんの?」
浅倉「逃げよ、一緒に
ここは一つ、飛ばしてくよ」
樋口「カッコよく言うな」
(二度と来ない、今しかない瞬間を
眩しいくらい
────駆け抜けよう)
浅倉「ガシャーン!」
樋口「何してんの」
浅倉「バリケード 入口の券売機で
樋口「防げっこない、ほら来た」
浅倉「ザラーッ!」
樋口「それは」
浅倉「ちっちゃいレゴ」
樋口「効くかそんなの、吉本は楽屋でも全員土足よ」
●ON AIR 00:04:00
展開が加速する。俊敏に走る身振りで空間を大きく使いつつ、掛け合いの密度を圧縮して疾走感を出す。
システム的なセクションではなく、このネタは大きく前後半に分かれる。ツカミを含む前半で伏線を貼り、ドラマティックで躍動的な後半の伏線回収で笑いをピークにもっていく構成。2010年代の現代漫才技巧を凝集したアスレチック。
ただ、そういう理屈や戦略なんて今はどうでもよかった。私は全身を預けて、ひたすらに透の頼もしさに浸っていた。声も、吐息も、一粒一粒の汗も、靡く髪も、床を叩きつける足音も、スーツの衣擦れの音も、透の、透の全てが私の魂を奮い立たせた。
──まだギアは上がる。まだいける! 透と、どこまでも行ける!!
多分、時間はもう4分だけど──
知るか!!!!
浅倉「そうなの?」
樋口「そうだよ ほら逃げ場ないよどうすんの」
浅倉「窓から脱出、パリーン!」
樋口「おいべっぴんに傷がつくんだわ」
(もっとウケたい)
浅倉「やば、絡まった」
樋口「何が」
浅倉「ガムテープ」
樋口「いや社名のやつ」
(もっと)
浅倉「ワンワン、ニャーニャー」
樋口「ん 一階のペットショップ」
(もっと)
浅倉「剥がしてくれたー、ありがとうアニマルズ」
樋口「優しい目……売り物同士の絆かい」
(求めるのは)
浅倉「やばい、まだ追ってくる」
樋口「万事休す」
浅倉「こうなったら」
樋口「最後の手段?」
浅倉「バシャーン!」
樋口「まさかそれは」
浅倉「とびっきりジンジャー」
樋口「ひったひたタッパー」
(爆笑)
浅倉「よしもと社員が」
樋口「つゆダクに」
両者「「…………
──吉牛ッ……!!」」
(爆 発)
浅倉「決まったー……」
樋口「何が? しょうもな」
浅倉「ふふ、逃げ切れたね」
樋口「なんとかね」
(それが)
浅倉「どう? うちらの事務所は」
樋口「ん……
一流ですね、ミスター・プロデューサー」
浅倉「イエー」
両者「「どうも、あーしたー」」
(王者の鼓動)
●ON AIR 00:04:45
○ON AIR 00:04:46
──終了。
(当たり前は
当たり前じゃないんだ
きみの隣で笑う日々が
きっと何よりも宝物だ)
──────● ピックアップコンテンツ(6-1)
○ON STAGE 00:00:00
両者「「どうも〜〜」」
浅倉「浅倉透と」
樋口「樋口円香で」
両者「「とおまどです、よろしくお願いしまーす」」
樋口「べっぴんさんと、べっぴんさんでやらしてもらってます」
浅倉「うわ、大丈夫? なんか」
樋口「何が」
浅倉「許諾とか」
樋口「いいでしょこんなツカミ、みんなやってますからね
べっぴんさん一つ飛ばしてべっぴんさんって
パブリックドメインですよ」
浅倉「取り立てに来ないかな、使用料」
樋口「誰がよ」
浅倉「よしもと」
樋口「来てたまるか」
浅倉「ドンドンドン!
べっぴん料払わんかーい」
樋口「べっぴん料て」
浅倉「ドンドンドン!
一つ飛ばしたらんかーい」
樋口「何をよ」
浅倉「ドンドンドン!
ワレの玄関、住みます芸人したろかーい」
樋口「ふふ、なんなのその反社のイメージ」
浅倉「あるかもね、こういう闇が」
樋口「ないわ ないですよね?
言うてますけども
まああのー そういう強大な事務所と違ってね
私たちんとこは弱小でして」
浅倉「ね 窓にガムテープで書いてるもんね、社名」
樋口「金がないんですよ、自社ビルですらない」
浅倉「ペットショップだしね、一階のテナント」
樋口「アイドルなんてペットのような商品だとでも?」
浅倉「卑屈だなー」
樋口「犬猫見てると他人事じゃないから
売り物同士の絆さえ感じるわ、
向こうもそんな目してる」
浅倉「ふふっ、してないよ、無垢な目だよ」
樋口「そんなアイドルをサバく弊社社員はたった3人
新橋駅前の牛丼屋みたいに回してまして」
浅倉「あー足りてはないよね、人」
樋口「オーダーが混んでるのよ、
このさい食券制にした方がいい」
浅倉「どういうこと?」
樋口「やってみるからアイドルやりな」
浅倉「え うん
ねー、ねーねー プロデューサー」
樋口「あんたプロデューサーにそんな口きいてんの?」
浅倉「レッスン入れたいんだけど」
樋口「入口の券売機でトレチケをお買い求めください」
浅倉「げ、金取んの」
樋口「1000マニー」
浅倉「独自通貨じゃん
じゃあお願い、両替」
樋口「日本円でマニーは買えない」
浅倉「えー」
樋口「フェスで結果出すと貰える」
浅倉「成果主義だー、世知辛っ
じゃあ出してよ、フェス」
樋口「フェスチケをお買い求めください」
浅倉「詰んだわ」
樋口「まあ今回だけはほら、取っときな……」
浅倉「ちょ、握らしてこないでよ、マニー札」
樋口「好きなの注文しな」
浅倉「えー、メガレッスン丼エモ盛り」
樋口「牛丼屋引きずってんな
あんまアイドルが糖質で腹パンパンにしないのよ」
浅倉「大丈夫、めっちゃのせるし 紅生姜」
樋口「いやメタボのサラリーマン川柳詠むな
大体あれでカロリーはキャンセルされないから」
浅倉「体にいいらしいしね 酸っぱいの」
樋口「ん レモンの蜂蜜漬け持ってきてる子とかもいるけど
どうすんの
タッパー開けて紅生姜の酢漬けひったひただったら
とびっきりジンジャーよ
とびっきりジンジャーのひったひたタッパーよ」
浅倉「ふふっ、なに言ってんの」
樋口「持ち込みは水分だけにしときな」
浅倉「大丈夫、席ついたら出るし 飲み物」
樋口「牛丼屋引きずってんな」
浅倉「茶色くてさ、コップが
中身わかんないの、お水かお茶か」
樋口「確かにそうだけど」
浅倉「ちっちゃいレゴくらいの氷入ってんの
ザラーッて」
樋口「口に入れちゃいけないもので例えないでよ
ていうか何? 食券制って
アイドルは食い物だとでも?」
浅倉「樋口が言い出したんでしょ、食券制は
あ、思いついた」
樋口「何」
浅倉「私もなるわ、プロデューサー」
樋口「事務所なめんなよ」
浅倉「やってみるから、アイドルして」
樋口「嫌です」
浅倉「いいじゃん、ほら」
樋口「お断りします」
浅倉「やろうよ」
樋口「いつもと同じ
そうやって逃げ場を塞いで話をする
──あなたの得意な手口」
浅倉「始まってる?」
樋口「話しかけないでください
その、にやついた顔も見たくありません
端的に言えば、あなたの存在そのものが不快です」
浅倉「樋口、プロデューサーにそんな口きいてんの?」
樋口「優しい顔で寄り添うこともやめてください
……勘違いしそうになるので」
浅倉「好きじゃん、もう」
樋口「でも、隙を見せても、あなたは何もしないでしょ?
ねえ、ミスター・ジェントルマン」
浅倉「ドンドンドン!」
樋口「……何、この音」
浅倉「樋口が女の顔するから、来た
べっぴん料の取り立て」
樋口「そんなんでも発動すんの?」
浅倉「逃げよ、一緒に
ここは一つ、飛ばしてくよ」
樋口「カッコよく言うな」
浅倉「ガシャーン!」
樋口「何してんの」
浅倉「バリケード 入口の券売機で
樋口「防げっこない、ほら来た」
浅倉「ザラーッ!」
樋口「それは」
浅倉「ちっちゃいレゴ」
樋口「効くかそんなの、吉本は楽屋でも全員土足よ」
浅倉「そうなの?」
樋口「そうだよ ほら逃げ場ないよどうすんの」
浅倉「窓から脱出、パリーン!」
樋口「おいべっぴんに傷がつくんだわ」
浅倉「やば、絡まった」
樋口「何が」
浅倉「ガムテープ」
樋口「いや社名のやつ」
浅倉「ワンワン、ニャーニャー」
樋口「ん 一階のペットショップ」
浅倉「剥がしてくれたー、ありがとうアニマルズ」
樋口「優しい目……売り物同士の絆かい」
浅倉「やばい、まだ追ってくる」
樋口「万事休す」
浅倉「こうなったら」
樋口「最後の手段?」
浅倉「バシャーン!」
樋口「まさかそれは」
浅倉「とびっきりジンジャー」
樋口「ひったひたタッパー」
浅倉「よしもと社員が」
樋口「つゆダクに」
両者「「…………
──吉牛ッ……!!」」
浅倉「決まったー……」
樋口「何が? しょうもな」
浅倉「ふふ、逃げ切れたね」
樋口「なんとかね」
浅倉「どう? うちらの事務所は」
樋口「ん……
一流ですね、ミスター・プロデューサー」
浅倉「イエー」
両者「「どうも、あーしたー」」
○ON AIR 00:04:46
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