見出し画像

 夜明けのはざま 著:町田そのこ

 せめて、自分自身には嘘をつかずに生きていきたい。地方都市の寂れた町にある葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝う事になった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦………。

 死を見つめることで、自分らしく生きることへの葛藤と決意を力強く描き出す。自分の情けなさに歯噛みしたことのない人間なんて、いない。自分らしく生きることを取り戻す、『52ヘルツのクジラたち』の著者による渾身の感動作。

 背表紙引用しました。362ページ読了です。

 目次

 見送る背中(仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター)

 私が愛したかった男(元夫の恋人の葬儀を手伝う事になった花屋)

 芥子の実(世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員)

 あなたのための椅子(夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦)

 一握の砂

 となっています。正直、一読じゃ語れない。私は芥子の実が一番心に刺さったかな。凪良ゆうさんはハッピーの中に男女の違いを語るけど町田そのこさんはアンラッキーの中で男女の違いを語った。対照的な本を2冊続けて読んで頭パニクッてます。男の女性視と女の男性視を見事に書き分ける両者の最新作に私は戸惑ってます。

 主人公は佐久間真奈一章で出てくる葬祭ディレクターだ。葬儀社の話だがオープニングは親友の結婚式から始まる。ナツメと佐久間が高瀬家に嫁いだ楓子の挙式から始まります。親友に見送られると言う以外何も夢の叶わない結婚式だった楓子に憮然としながらもナツメと佐久間は楓子を祝います。

 しかし、ナツメは新人賞を取った作家なのですが、自伝的要素が強く、映画化されるもその後泣かず飛ばずで隠れて風俗嬢をしていました。それがある日突然、客と心中してしまい、葬儀を佐久間に指名すると言う形で見送る背中は終わります。

 はっきり言って衝撃的な始まり方です。そして登場人物が多い。各章の主人公は違っていて、芥子の実では自分の母親の葬儀より醜い葬儀を見たかったと言う動機で芥子実庵に就職した須田は学生時代イジメを受けていた伊藤の家族の葬儀を請け負う事になってしまった。そして学生時代は悪かったと謝罪される。結局リア充な伊藤と非リア充な須田。喧嘩になってしまって止めに入った先輩の井原、辞めると出て行った芥子実案だったが社長の芥川に連れられて行った火葬場で誰しも平等な死の真実を知る。

 芥子実庵の名前の由来は自分の子どもを喪ったキサー・ゴータミーと言う女性が、人々に泣いて縋る。この子をどうか生き返らせてください。この子を生き返らせることのできる薬をください。この子はわたしにとってとても大事な子供なんです。しかし誰も、子どもを生き返らせることはできない。狂わんばかりになったキサー・ゴータミーは釈迦のところに行き、同じように願った。すると釈迦は『ひとつかみの芥子の実を持って来たなら、叶えましょう』と答えた。『ただし、その芥子の実はいままで死んだ者を出したことのない家から貰ってくること』キサー・ゴータミーはその言葉を信じて、様々な家を訪ね歩いた。しかし、どの家も、父や娘、祖父に子ども、と誰かを喪っていた。それでもどこかにきっと必ず死者を出していない家があると信じてキサー・ゴータミーは駆けずり回ったが、果たしてそんな家はどこにもなかった。大事な者を喪ったことのないひとなど、いない。死は誰しもにも訪れ、誰しもがそれを迎え入れなければいけない。キサー・ゴータミーは我が子の死はもう覆せないのだと気付き、その死を受け入れるのだった。

 本文より引用しました。須田は底辺のクズみたいな生き方で馬鹿にされた過去も死は平等なんだと気づき、少しだけ救われたと書いてあります。

 ネタバレはここまで、一握の砂のエンディングはやっぱり佐久間真奈が主人公で社長の芥川との懇意のあった仕出し屋の親父さんの死を受け入れる所を描いています。ってまたネタバレしてしまったか。

 葬儀、私も父と母の葬儀を任せられる立場。気仙沼ではアーバンさんにお願いするって決まってる。その費用も小口で積立済みだ。私はこの物語に出て来た主人公達のようにどこで自分の情けなさに歯噛みするのだろうか。

 情けない仕事してる。収入は障害年金だ。甲斐性は無い。いつも自分に胸を張って歩けてない。それがいつ、どこで後悔に変わるのだろう。戦慄さえ感じながら読み終えた。読後感は言っちゃ悪いけどいいものではなかった。眉根に皺が寄るような物語に悩ましい限りだ。

 この本とは関係ないが父の妹夫婦が家に泊まりに来てた時に読んだのがいけなかったのかもしれない。常にイライラしながら読んでた。もうちょっとリラックスして読み直した方が良かったかな。ごめんなさい、そのこさん。こんな書評しか書けませんでした。

 以上

今日もコンビニにコーヒーとタバコを買いに行きます。私の唯一の楽みです。奢ってくれた方はフォローしてイイねしてコメント入れさせて頂きます。それくらいのお返ししかできませんが、ご支援して頂けると幸いです。