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一気書きをやめる STOP BINGE WRITING

以下は研究者向けに書かれた文章をたくさん書くメソッドを説いた一節である。

たいていの人は、気の向いたときに一気に執筆する「一気書き」(binge writing)というい無駄で非生産的な方法をとる(Kellogg, 1994)。書くのを先伸ばしにして不安にかられ、おうやくやってきた土曜を執筆だけに費やしたりする。それでも、文章はある程度書ける。焦燥感も解消される。けれども、「一気書き」のサイクルはそのまま次週に持ち越される。「一気書き」派が、執筆が進んでいないことで焦燥感や不安にかられている時間は、〔毎日決まった時間帯に書くような〕スケジュール派が実際に文章を執筆している時間より長い。スケジュール通りに執筆していれば、書けていないことに思い悩む必要はない。書く時間を見つけられないと愚痴る必要もないし、夏休みになったらどれほどの文章を書けるだろうと夢想する必要もなくなる。ということで、決めた時間に文章を買いて、文章のことなどさっさと忘れてしまおう。

『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』講談社、2015年。p15。強調はふかくさによる。

まるで夏休みの宿題を先延ばしにする子供のような話ではあるが、多くの「書けない」人に共通する悩みなのかもしれない。これは著者の専門家らして心理学の研究論文などを念頭においているのだが、もっとクリエイティブな小説の世界などならなおさらではないかとも思える。

次の実験結果も言い訳して書かないでいる自分には耳が痛いものだ。

書くことを強制すると、独創的な執筆アイデアもどんどん浮かんでくるようになった。独創的なアイデアが思い浮かぶ間隔は、執筆を強制された実験参加者の場合はわずか1日、気が向いたときに書く場合は2日、緊急性のある執筆以外認められなかった場合は5日だった。書く作業自体が、書くための優れたアイデアを育むのである。

前掲書、p.27。強調はふかくさによる。

つまり、まずできる限り定期的に少しずつ書いている状態を作り出すこと、書いている状態を習慣にすることができれば、書く材料や発想も後からついてきやすいということである。材料や発想が無いから、それらがどこかから湧いて来るまで書かないというのでは永遠に書き始めることはできないのかもしれない。


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