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記憶に残る 残したい

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記憶に残ったもの、残したいものを収めています。
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ショウペンハウエル「読書について」を読む

ショウペンハウエルは、今から200年ほど前のドイツの哲学者。 それにしても、なぜドイツには優秀な哲学者が多いのだろう。最近著名なドイツ人哲学者マルクス・ガブリエルは「哲学はドイツの見えざる皇帝だ」と言うし、カント、ヘーゲル、ハイデガー、アーレントなど枚挙にいとまがない。ショウペンハウエルはヘーゲルのことが大嫌いらしく、本書の中で「あれはロクでもない」とかなりディスっているが。 これは、書名が「読書について」であるが、読書と思索に関して考えを深めた著作である。これを読んでい

有意義だったアートについてのひとつの問い

Please define your practice or approach using five keywords or concepts. あなたの活動やアプローチを5つのキーワードやコンセプトで定義してください。 - - -- - これは、昨年海外のアーティストレジデンシープログラムに応募する際に尋ねられた質問です。 私の作品にはメッセージもないし、感じ取ってほしいコンセプトもないので、深く考えたこともありませんでした。 でも、あらためてそう問われると、無意

クレイグ博士の新年の挨拶。

2024年1月16日 宍戸健 クレイグ博士の新年の挨拶について文章を翻訳した。なるべく正確になるように注意を払いましたが、原文も併せてご参照ください。 「数万年前、最古の人類は暗闇に光を灯す秘密を掴んだ。この知識はおそらく迫害につながり、この技術を共有した者は悲惨な結末に直面したかもしれない。社会は彼を、恐れられた悪魔を相手にする悪人と見なした。とはいえ、彼の贈り物は彼らの生活を輝かせた。暖をとり、食糧を調理し、洞窟中の暗がりを払拭した。火の出現は、大地から闇が解き放たれ

noterさんって「なんちゃってクリエイター」や「クリエイターもどき」ばかりで、noteで何してんの?

こんにちは、しちゃうおじさん(以下「しちゃおじ」)です。 noteって、会員登録をしたユーザーのことを「クリエイター」と呼んでいるのですが、実際のところクリエイティブな創作活動をされている方は稀少で、“なんちゃってクリエイターさん” や “クリエイターもどきさん” ばかりなのが現実ですよね? 先日に{『圧倒的GIVE』とか『徹底的ギバー』とかギブギブ言ってるアカウントやコミュって胡散臭いよね!}の記事を書きましたが、どういうわけか情報商材屋さんレベルの方が運営している共依

スタンド バイ ユー

《賢治 Kenji》  僕は先輩から貰ったコンドームをポケットから取り出し、太郎に見せた。 「えっ、何? おぉ、それは」  驚く太郎の目の前で、コンドームの封を切り、中から湿った円形のものを取り出した。  僕も初めて見る避妊具の現物。へぇーこんなに薄いんだと思いながら、それを口にあて、息を吹き込んだ。半透明のコンドームが小さく膨らんだ。  僕はしゃがみ込み、膨らんだコンドームを目の前の川につけて水を入れた。端を結ぶと、小さな水風船が出来上がる。 「へぇ、これに、ちんこ入れる

隠れても、無駄だよ

窓の外を見る。ビルの屋上から薄く陽の光が店内に射し込んで来る。仕事前に立ち寄る喫茶店の2階窓際カウンター席に座っている。右横ひとつ向こうのテーブル席に座る常連客の男は煙草を右手の人差し指と中指に挟んだまま、左手に持ったカップを口元に運んで珈琲をすする。細く天井に伸びる煙草の煙はそれほどやってこなくて、ぼくはマスクを外している。今朝も特別なことは起こらなくて、テーブルの上には冷めた珈琲が残っている。 窓からみえる通りの向こうの商店街の入口には人が誰もいなくて、いつも停まってい

【独特解説!】 『新古今和歌集』 藤原定家の梅の一首を読む 〔無料記事〕

『新古今和歌集』 藤原定家の歌(「梅の花〜」)を読む※プロモーションを含みます 今回は新古今和歌集の歌人の中から藤原定家を取り上げます。百人一首や源実朝の師としてご存じの方も多いでしょう。 読むのは次の一首です。 梅の花匂ひをうつす袖の上に軒もる月の影ぞあらそふ 助詞の〈に〉のお手本のような使い方。そしてその〈袖の上に〉の尋常でない使い方。 袖の上を舞台に、梅の花の香りと軒先から漏れる月の光が争う……発想の冴えに驚嘆してしまいます。同時代の歌人達も定家ヤベェと思ったので

強い言葉を遣うなよ

2023/10/01(日)  小樽文学館で行われる山田正紀先生の講演会を聴いてきた。  小樽に行くのは久しぶりだ。快速電車で30分ちょっとなので、関東などに住んでいる人だと「私の通勤・通学時間より短いじゃん」となるかもしれない。でも、心理的には遠いんですよね。    講演会は約1時間。戦前の小樽を舞台にした『人喰いの時代』という小説のお話が中心だった。  愛読者ならわかると思うけど、山田先生はキャリア50年(!)、著作は200作近いのではないか? 日本SF大賞や日本推理作家

筒井康隆|「創作の極意と掟」

筒井康隆さんの「創作の極意と掟」。その中の「凄味」という章を朗読してみた。 前掲書、講談社、pp.10-12。