ご免侍 十章 決戦の島(一話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる。
一
父の記憶はあまりない、道場での修行は鍛錬の毎日だ。手に重りを持って上下左右に振る。足腰を強くするために何度もヒザを折り曲げる。単調なのに、それが楽しかった。父が見てくれたから……
「一馬殿、軍議に入ります」
「うむ、判った」
海賊の村上主水が、船縁にいる一馬を呼ぶ。蒼い海と遠くにある陸地が美しく感じた。大烏城は落ちた。残るは鬼ヶ島と呼ばれる要塞攻略だ。
「来たか」
「どのような方法で城を落とします」
暗い船室に、海賊の村上主水とその娘の栄、祖父の鬼山貞一と忍者の月華、散華衆だった兵次郎が顔をそろえる。
鬼ヶ島の海岸線の長さは一里(約四キロ)もない、平たい島に石組みの砦が築かれていたが、大半は木材でおおわれている。
「わしの大筒を打ち込めば終わりだが……琴音がおるからな」
「掘は、ないので門さえ破壊できれば城内に楽々と入れます」
「城内には百名ばかりの敵はいるはずです」
一馬は、みなが話している事をぼんやりと聞いている。
「一馬、聞いているの」
「ああ、掘りがないんだろ」
月華が、ため息をつきながら一馬の腕を引っ張る。
「外に、でるよ」
「うん、ああ、どうした」
ぐいぐいと引っ張られながら船の上に連れ出された。
「ねぇあんた、父親を斬れるの」
「……わからん」
「あんた、船に残りなさいよ」
「え」
「海賊達は城にある宝物を狙ってる、鉄甲船にいる元散華衆の若い衆は、仲間を助けるんだと息巻いている」
「うん」
「あんたが居なくて平気」
そうだろうか、城攻めは大変だ。それに城内に居る忍者達の力量がわからない。なによりも父の藤原左衛門の剣さばきは、常人を超えている。たとえこちらは数十人いても蹴散らされて終わりだ。
「門は、どうするんだ」
「あんたのじいさんが手で持って運べる大筒を作ってるよ」
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