ご免侍 十章 決戦の島(二話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる。
二
大筒といっても地面に置くような大砲では無い。手でかまえて大口径の弾を撃ち出す鉄砲もある。鬼山貞一は、海賊の鍛冶屋に頼んで簡易的なものを大量に作り出していた。それを元山賊の権三郎が、兵次郎達に教える。
「それで門を破って中に突入するみたいね」
「そう簡単にいくかな」
「内通者が城内に居て、そのあたりは時刻を決めて反乱を起こすそうよ」
散華衆も単なる夜盗から成り上がっただけで強力な統率者がいないようにも思える。
(だが天照僧正が命令をすれば……)
イケニエだった母は、国を救いたいと裏で暗躍していた。出来るかわからない安徳天皇の復活を目指している。
(琴音を犠牲にして、復活させる気か……)
「とにかく俺が父と話す」
「だから、あんたが斬れるのかって聞いているの」
「それは……」
「私は、あんたを守れって言われた」
「父にか」
「そうよ」
月華は、夕暮れの海を見ながら話す。
私が生まれたのは貧村でね、どちらにしろ売られる運命だった。もう家族の顔も忘れたけど、ろくに食べられないからひもじい思いをした。いつものように、薪拾いで山に入ったら怖そうな黒づくめの男達にさらわれたわけ。
船に乗せられて城に連れて行かれて修行をした。兄貴と出会ってからは、いつも一緒だったかな。本気で好きだったけど、なんか違うって思うようになった。
「一緒に逃げよう」
「抜け忍は殺される」
自由がないから、家族になれるわけでもなく、悪事を積み重ねて生きてきた。兄貴に一緒に逃げようって言っても断られた。まるでわからない、あれだけ強いのに逃げようとしない。
「それは……ひどい罰があるのか」
「抜け忍は拷問されて死体をさらされた……」
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