ご免侍　九章　届かぬ想い（二十一話／二十五話）

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あらすじ　
　ご免侍の一馬かずまの父が、散華衆さんげしゅうの隠形鬼おんぎょうきだと暴露された。一馬かずまは、連れさられた琴音ことねを助けられるのか。大烏元目おおがらすがんめに会う一馬は、琴音ことねそっくりの城主と対面する。城に到着すると一馬たちは捕らえられた。

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二十一

　大勢の兵に取り囲まれて城内に連行される。槍を持つ複数の兵と戦うのは危険だが、それよりも海賊の娘、村上栄むらかみさかえを危険にさらすわけにはいかない。

（ねぇ、どうすんのよ）
（どうするもこうするもない）

　散華衆さんげしゅうと戦う事はできるだろうが、年若い兵も連れ去られた子供と思うと無闇に殺すのはためらわれた。月華げっかとひそひそと言葉をかわしていると先を案内する侍がつぶやく。

「大烏元目おおがらすがんめ様が、お前達と話したいそうだ」
「だから割符わりふをもらった」
「仔細しさいはわからぬ、連れて来いと命ぜられただけだ」

　階段を登り大広間に到着すると奥に通される。奥に御簾みすがさがっていて誰かが寝ていた。

　武器は取り上げられているし、両隣には槍を持って狙いをつけられている。

（誰が寝ているのだ……）

「そこにいるのは藤原一馬ふじわらかずまか」
「そうだ」

　女の声だ、よくは見えないが起き上がってこちらを見ている気配はある。

「よくぞまいった、わらわは天照僧正あまてらすそうじょう」
「……」

　息を飲む、敵の首魁しゅかいがいるのは当然だが、呼ばれるとは予想をしていなかった。

「最後の贄にえを用意する」
「それは、水野琴音みずのことねか！」

　もう我慢できない、縮地の術を使うと御簾みすめがけて飛び込んだ。竹で作られた御簾みすは、かなりの重さを耐える仕組みはあるが、男一人が加われば予想を超える。

　バリバリと音を立てて御簾みすが崩れ落ちた。

　布団の上で上半身を起こしていたのは年は四十ばかりの美しい女だった。だが病気なのかやつれている、顔には死相も見えていた。

「一馬かずま……」

　天照僧正あまてらすそうじょうから、一声呼ばれると体が固まる。その顔は見覚えがある。母だった。

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