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ご免侍 九章 届かぬ想い(二十話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまの父が、散華衆さんげしゅう隠形鬼おんぎょうきだと暴露された。一馬かずまは、連れさられた琴音ことねを助けられるのか。大烏元目おおがらすがんめに会う一馬は、琴音ことねそっくりの城主と対面する。天照僧正あまてらすそうじょうを倒すために城へ乗り込む準備が始まる。


二十

 朝になると大烏元目おおがらすがんめから使わされた侍が到着する。

散華衆さんげしゅうの里に入るための割符わりふを作りました」

 木片は奇妙なギザギザした形に加工されている。一枚の板を切って、また一つの板に戻るならば正式な割符わりふだと判る。

「これで女が三人行くと伝えてあります」
「わかった……女」
「そうです、あたらしい女を用意したので修行させる名目です」
「……わかった、俺の背丈せたけにあう着物を用意してくれ」

 月華げっかさかえがクスクス笑っている。なにしろ男が女に化けるのだ、太った女にした。

「背が高い女だね」
「相撲取りみたいだね」

 二人は楽しそうに一馬に着物を着せると腹がでているように帯を太く巻いた。化粧をして顔を真っ白にする。

「いい女だよ」
「かわいい、かわいい」

 すっかり人形扱いだが、これで刀を差すと確かに帯刀たいとうした女相撲取りに見えなくも無い。旅姿の女三人が山道を歩いて、散華衆さんげしゅうの里に向かう。

「どんな所なんだ」
「お城の中だよ」

 男は剣術を教えて、女も影忍なれるなら修行させた。他の子供達は単純労働や盗み窃盗のたぐいの技術を教え込まれ夜盗やとうとして活動する。

「ひどいところだな」
「子供だからね、教えられたら悪いと思わない」

 城下町から山を一つ越えた場所に散華衆さんげしゅうの里があった。近くにあるのは子供達を登城させるためだろう。城壁は黒く大烏おおからす城と呼ばれる理由がわかる。古い城を改修したのか難攻不落に見える立派な城だ。

 巨大な門の所に来ると、まだ幼い顔つきの若い男が槍をもって門番をしている。

「どこのものだ」
割符わりふです」

 門番が割符わりふを確かめると切戸きりどから城内に入れた。中に入るとずらりと兵が並んでいる。

藤原一馬ふじわらかずま、お前を捕らえよと大烏元目おおがらすがんめ様から命が下された」

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