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雪解けアルペジオ【毎週ショートショートnote】

一人でふらっと旅行するのが好きだ。
さすがに泊まる場所は予約しているけれど、どこに行くのか何を食べるのか、そのときの気分次第で動くのが好きだ。
今日は来たのは車で上れる山頂の展望台。
下に小さく見える町並みと流れる川、遠くに見える山にはまだ薄らと雪が残っている。
サワサワと柔らかい風が葉を揺らし、時折鶯の声が聞こえる。
自然を満喫しながらベンチに座って本を読む。
持っていた本はひとひらの雪が主人公の小説だ。
空から降って山に積もり、雪だるまに入れられたりスキー板に踏まれたりする。
その内、雪解けの季節になって山を勢いよく滑り落ちて川に流れ入る。
勢いがある描写にピアノの曲が浮かんだ。
分散和音で指を素早く動かして弾くスピード感のある曲が雪解けにはよく似合う。
他の子より手が小さくて和音はアルペジオにしないと弾けなかったけど、誰よりも指の動きが滑らかだった。
昔のことを思い出しながら、雪解け水になってこの山頂を滑り落ちたいと夢想した。

(410文字)


こんにちは。羽根宮です。
【毎週ショートショートnote】一週遅れの裏お題を投稿します。
一週遅れなのでタグはつけないでおこうかなと思います。

展望台とか山頂とか見晴らしの良い高いところに行くと、飛び降りたり転がり落ちたりすることが頭を過ったりしませんか?
そんなことはないのかな?
羽根宮はなんとなく、飛び降りたらどうなるかなとか思うことがあります。
いえ、考えるまでもなく間違いなくこの世から旅立ってしまうのはわかっています。
飛び降りてみたら異世界に飛んでいるかも!……みたいな妄想まではしませんが。
漠然と思ってしまうのです。飛んだらどうなるって。不思議。


読んで下さってありがとうございました。
羽根宮でした。

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