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「異界彷徨」レポート

大阪歴史博物館で2023年4月28日~6月26日まで開催中の特別企画展「異界彷徨 ―怪異・祈り・生と死―」を訪れた。

告知文には

古くから、人びとは自分たちのいるところとは異なる世界、すなわち「異界」を意識してきた。人知の及ばない現象は、異界の住人が引き起こすものであると畏怖し、我が身に降りかかる災いは、他界に属する神や仏へのひたむきな祈りによって退けようとした。
新たに生まれる命を喜び、成長を祝い、また死者を手厚く弔う際にも、さまざまな儀礼を行ってきた。天変地異や災厄の原因を理解し、生の苦しみや死の恐怖を克服するために人びとはこの世ならざる世界を想像してきたのであり、異界とは私たちの生活を基層で支える概念ともいえるものである。
本展では当館の館蔵品を中心に、民間信仰にかかわる器物や祈願品などの民俗資料をはじめ、祭祀具や副葬品などの考古資料、他界観や神仏、妖怪などをあらわした絵画資料や歴史資料など、異界にまつわる資料を紹介する。さまざまな状況であらわれ出る異界を、私たちはどのように捉え、交渉し、また対応してきたのか。このことについて、さまざまな視点を交えて考える契機とする。

HPより

とあり、これを読んだだけで行くと決めて訪問。そしてなんと館内は写真撮影可という気前の良さ。資料採集にバシャバシャと撮影した。

展示は三章立てで、第一章は「怪異と幻想」。<邯鄲の夢>の屏風絵がとても幻想的で目を惹いた。

大正~昭和時代。橋本関雪(1889~1945)画、本館蔵。

第二章は「祈りと願い」。展示室内随一の異様な雰囲気を放っていたのはこちらの阿波人形「山姥」だった。遠くからでも気配が漂ってきて、思わずそちらに目を向けるとこの人形が物々しい念を放っていて、鳥肌が立ち肝が縮んだ。

明治34年製。徳島県鳴門市の阿波人形浄瑠璃一座の旧蔵、頭の作成は初代天狗久、本館蔵。

第三章は「生と死」で、もっとも興味深かった展示は「セタ(背板、背駄)」というポータブルの仏壇だ。バックパックの要領で仏壇・仏具一式を背負って歩き、行者は先々で法要したのだという。これは法儀のあり方を考えさせられるような、示唆に飛んだアイテムだった。

ウラに大正5年10月2日の文字が

他にも此の世と彼の世を渡す境界の興味深い品々が沢山。9:30オープンにあわせて訪問したのだが、この特別企画展もさることながら、博物館内の展示がすばらしく、なんと丸一日16:00まで(6時間半!)も滞在してしまった。ご関心の方は是非の訪問をおすすめしたい。

余談だがこの次の日には万博公園内の国立民族学博物館を訪問し、ここでも丸一日を費やしたのはまた別の話。平安京以前に皇都だった大阪、その歴史は古く、奥が深いのだった。


Text by 中島光信(僧侶)


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