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出羽三山に風車が建つ!?

写真は、羽黒山入り口大鳥居前からの、風車群建設イメージ
「出羽三山の風車建設に反対する会」作成による

計画発表からひとつきで白紙撤回へ

修験道の霊場・出羽三山(山形県)で今夏、風力発電の事業計画が明らかになった。

参照:霊場・出羽三山に大型風力発電計画 山形県など反発(日経新聞9/1)

時系列にまとめたい。

8月7日:
前田建設工業が「風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」の縦覧を始める
期日は、書面では9/4まで、HPでは9/14まで
意見書の提出期限は9/7(のち締切延長されて9/14まで)

8月31日:
「出羽三山の風車建設に反対する会」が記者会見
反対署名運動の期限は9/16

9月6日:
前田建設工業、過去に廃材不法投棄の報道

9月9日:
前田建設工業、出羽三山での風力発電計画の白紙撤回を発表

別事業での報道が影響したのか、反対の声が膨れ上がったのか、はたまたその両方か、定かではないが、計画の縦覧開始からおよそひとつきで白紙撤回されるという、めまぐるしい展開をみた。

出羽三山とはどんな場所か

「出羽三山の風車建設に反対する会」のトップページに大きく掲げられているフレーズは、千四百年の歴史と自然、庄内の景観を壊す出羽三山への風車建設に反対します。である。1400年の歴史とは何を指すのかといえば、それは羽黒修験道を行う山伏たちが今なお住む、山岳信仰の聖地というところだ。

筆者も数年前、出羽三山へ赴き、山伏修行をした。その様子は、当WORKSHOP AIDのYouTubeでも報告した通りだ。

住まいは離れているとはいえ今回の計画発表には少なからず当事者感覚を持ち、動向を注視してきた。署名もした。結果的に白紙となったので今回は事なきを得たかたちだが、この顛末は、「自らの聖なる場所に突如土足で足を踏み込まれる可能性がある」怖さに気づかされるきっかけとなった。

自然エネルギー利用は喫緊の課題だ。わかっている。しかしその予定地が、宗教的・文化的にも意義深い場所となれば、どうか?

よりどころを侵略されるとしたら?

嘆きの壁の前に風車が建つとしたら?ブルーモスクの後ろに風車が建つとしたら?現地住民の反感は火を見るより明らかだし、世界中から非難の声が届くことだろう。同じように国内でも、もし富士山に風力発電のプロペラが回ることになれば、多くの人が反対の声を上げるのではないだろうか。
今回の一件は、われわれの精神的背景がどこにあるのか?ということについて想いを巡らすチャンスとなったのかもしれない。

大切な場所は、ちゃんと大切にしないと、護る努力をしないと、だめだということだ。


Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)


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