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5分間の演説

徳川夢声さんの「話術」という本を読んでいる。徳川夢声さんは、1894年生まれのマルチタレント。

1950年に第1回NHK放送文化賞を受賞されるなど、1971年に亡くなるまで、ラジオ、テレビだけでなく多数の著書も発表し、役者としても活躍した。

そんな徳川無声さんが、「話術」で、話すことという分野について切り込んでいる。

読んでいて面白かったのは、5分間の演説のはなし。第一次世界大戦当時のウィルソン大統領の言葉を引用し、無声さんは、短いスピーチについて解説する。

一時間位の長さの演説会なら、即座に登壇してやれる。二十分ほどのものだったら二時間ほど用意が要る。もし5分間演説だったら一日一晩の支度がないとできない。と言ったことがある。面白い言葉だ。

徳川夢声 「話術」 新潮文庫

このウィルソン大統領のことばについて、無声さんはこう解説する。

五分間で、ということになると、持ち駒の限られた詰め将棋みたいなもので、一手だって遊びは許されない。どうしても、王手で詰めてしまわねばならない。二人の勝負である将棋が一時間ですむものなら、一人で考える詰将棋が、一晩掛かることもあるわけだ。

徳川夢声 「話術」 新潮文庫

打ち合わせをしていて、5分で会社紹介をしてください。こんなことを言われると、途方に暮れてしまう。5分で伝えるためには、何をどうやって伝えなければいけないのか、濃縮フルーツジュースを準備しておかなければ、相手に過不足なくメッセージを伝えることは本当に難しい。

話すということは、だれでもできる。
でもその場で聞いてよかった話は少ないし、大半のことは覚えていなかったりもする。

だからこそ、話す機会を与えられた時には、場面場面に応じた準備をしたいものです。特に短い時間で伝える時は、なおさら意識して、濃縮プロセスをわすれずにいたいと思います。

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