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【有罪、とAIは告げた】司法✖️AIの未来にメスを入れる問題作

こんばんは。
りんです。

私は普段、仕事のためにビジネス書を読みますが、そればかりだとしんどくなってくるので、口直しに小説を読むようにしています。
その中でもミステリー小説が大好きで、今回は面白かった一冊『有罪、とAIは告げた』を紹介します!

私は大学時代に著者である中山七里さんの作品に出会い、それ以来ファンになって新作が出るたびにチェックしていました。
今回はどうしても手に取って購入したくて、待ち遠しかったにもかかわらず、Amazonではなく本屋に駆け込みました笑

本作は非常に重厚なテーマで、これからの社会に起こり得る少し先の未来にメスを入れたとても面白い一作となっています。


あらすじ

日々の膨大な案件対応と事務処理に忙殺されていた、東京地方裁判所の新人裁判官の高遠寺円は、AI裁判官こと『法神2号』の検証を命じられます。
法神2号は技術交換の名目で中国から提供された人工知能で、中国ではすでに裁判で実運用されているものでした。

筐体に過去の裁判記録を入力していくことで、その裁判官の経験値や価値観をトレースし、裁判官の分身となって瞬時に判決文を作成してしまう圧倒的な技術力を発揮します。
多くの裁判官がこの技術に魅了されていく中、円は法神2号を運用に取り入れることに疑問を抱き始めます。

そんな中、18歳の少年が父親を刺殺する事件が発生し、円が裁判を担当することになります。
少年法の改正により「少年」ではなくなった18歳に対し、死刑判決を下す法神2号に裁判はどう影響されていくのか?

裁判官のマンパワーの限界とAIによる解決策

そもそもなぜAI裁判官を取り入れることが、裁判官にとってメリットになるのでしょうか?
最大の理由は、裁判官のマンパワーの限界が来ていることにあります。

技術革新や世の中の変化と共に、日々複雑化する犯罪に対処するために裁判官は膨大な資料に目を通し、裁判に出席し、合議し、判決文を作成しなければなりません。
判決文は平易な文体とはかけ離れており、作成や見直しには多くの時間と労力を消費します。

また、検察や弁護側から提供される資料以外にも、裁判官自身が多岐にわたる分野の勉強をして知識のアップデートを行わなければなりません。
このような背景の中で、自分と同じ考えを持った分身が一瞬にして量刑を決定し、判決文を作成してくれるAI裁判官が存在するとしたら、試し、頼りたくなるかもしれません。

比べることが烏滸がましいですが、私も日々、法務として契約書や規約の作成や修正を行うため、「これが一瞬で作成されたらなー。」と思うことは何度もあります。
単純に面倒だからというだけではなく、考えることに時間を割きたいからです。

寝食を削っている裁判官にすれば、これほど画期的なソリューションは無いでしょう。

裁判官がAIの判決に流される潜在的なリスク

法神2号は裁判官の価値観や経験則をそっくりトレースした分身として、量刑までピッタリ一致した答えをアウトプットします。
本来は裁判官が判決を下したものに対して、法神2号がどこまで一致するかの答え合わせをする試験運用でした。

しかし、この順序が逆転して、もし裁判官と法神2号の意見が食い違った場合にどちらを採用するべきか迷いが生じるかもしれません。
仮に、自分の暗算とAIの計算結果が不一致だった時、私は迷いなく自分の暗算に誤りがあったことを認めるでしょう。

AIが精巧であればあるほど、問いが複雑であるほど、人は自分の考えよりAIを信じてしまうのではないでしょうか?

AIが人を捌くことを許容できるのか?

結論からお伝えすると、現段階では私はこれは許容できません。
仮に法神2号と同じような技術が存在したとして、システム上にバグがなかったとしてもです。

裁判では提供された証拠だけではなく、被告人や被害者の家庭環境などの、人格形成に至る背景までを考慮して、判決が下されます。
裁判員制度が導入された目的もその点が重要視されており、裁判官だけではなく、より一般市民の見識や感性を取り入れることが、裁判の質を高めることに直結するからです。

法神2号の設定では、情状酌量の要素を数値化して入力することになっていますが、私は人の感情を数値で測ることは無理だと思っています。
作中では、とある裁判官がAIが人を裁くことについて自身の見解を述べる場面がありますが、私も全くの同意見でした。

「いくらAIが高性能であろうと、いくら自分の人格と瓜二つであろうと、裁判官は悩むことから逃げてはいけないと思うのです。
裁く側も裁かれる側と同等に足掻き煩悶する。
被害者の無念に寄り添い、被告人の心情を理解する。
そういうプロセスを経てこそ人が人を裁くという傲慢の免罪符になり得るのだと、わたしはそう考えます。」

これは何も裁判に限った話ではなく、人の一生を左右する重要な決断全てに共通することではないでしょうか?
技術革新によってAIが更に学習を深め、より身近で便利になっていくことは間違い無いでしょう。

しかし、AIを活かすのであれば、情報収集や事務処理を代行し、人が新たな価値を創出したり、思考したりするためのサポートをする役割に徹するべきだと私は考えています。
例えAIによって答えが用意されていても、適切であるかの決断を下すのは人であるべきです。

本作をAIを司法に持ち込んだ際の問題点を浮き彫りにした名作でした!
自分の立場に置き換えても多くのことを考えさせられたので、是非みなさまにもおすすめします!

今日はここまで。
ありがとうございました。


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