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恐縮ですが、育児中 〈11〉 子ども服

子を持つという事。それは毎日のように洗濯機を回すという事です。

ポケットのティッシュを出し忘れ、洗濯機に入れた全ての衣類に細かい白い紙屑が付着するという大惨事を繰り返す当方ですが、洗濯だけは止めるわけにいかない。何せ、着る服がすぐになくなっちゃいますから。

うちの場合、そもそも子ども服の絶対数が少ないのです。

「無駄な服をたくさん持つよりも、厳選したお気に入りを着回すのが、本当のオシャレ……」みたいな上質なライフスタイルでは全くありません。

どうせ半年もたてば体が大きくなって着られなくなるので、たくさん買ってもムダ、ムダ。

一時に所有する数は少なめにして、頻繁にバージョンアップ……いやサイズアップしていくのが、うちの基本的な被服戦略です。

ていうか、子ども服の購入って難しいんですよね。

息子のシャツが、グレコローマンスタイルのレスラーかと思うほどパツンパツンに小さくなってるのに気づいて初めて、いくら何でも替えなきゃダメかと重い腰を上げ、デパートに出かけてみるものの。

上階の子ども服売り場を訪ねてみれば、そこにはブランド服の数々

へえ、今どきは有名ブランドも子ども服たくさん出してるんだあ。と呑気に売り場をスクロールして、ひょいと値札を見れば、

え?このシャツが、ご、ごまんえん…?

40秒ほどフリーズした後、申し訳ありませんでしたぁ!  わしのような貧乏人の来るところじゃなかとでしたぁ!!!

フロアに土下座しながらズザザザーッと高速で後退し、そのままエレベータで1階まで直降して、瞬速で建物を脱出。

やはり住み慣れた赤ちゃん本舗を出たのが間違いのもとだった……。

と、額に流れる汗を拭って、そのアカホンを訪ねてみると、

ありゃ? 息子の着られるサイズが無い

そうか「赤ちゃん」と称するだけあって、ある程度育ったらこの店は「卒業」しなければならないのか……

そこで、もうちょっと庶民的なスーパーや、ショッピングモールの子ども服売り場もワッチしてみるのですが、今度は絶望的なまでに趣味が合わない。

当方は無地の紺色トレーナーのようにごくシンプルな物を探しているというのに、売り場に展開されているのは、見つめるだけで瞬時に角膜が破壊されるほどド派手な配色の、奇妙な柄モノだったりする。

あるいは、デカデカと「BASEBALL」とか「ILLINOIS UNIV」と意味不明のロゴが入っていたりする、芸術性の高すぎる服ばかり。何だよイリノイ大学って。

結局、何も買わずスゴスゴと退散。

それでも夜中に、布団の中でガバッと起き上がって「でも1着ぐらい買っておけば良かったか!? 」 と煩悶する小心者です。

うーん、うちに子ども服が少ないのは、被服戦略なんてカッコイイものじゃなかった。

いろいろ考えすぎて結局、買えずじまいという、単に親の優柔不断な性格のせいだったか……。

まったくもって、恐縮です!


明和電機ジャーナル 第18期 第5号 (2012年1月15日発行) 所収, に加筆修整

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