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アシスタント


映画会社に入った優秀で志も高い新入社員(ジュリア・ガーナー)が、代わりなどいくらでもいる新人の立場を嫌というほど思い知らされ、心が折れていく長い長い一日を、ドキュメンタリータッチで描く。

彼女は、上司のプロデューサー(ハーヴェイ・ワインスタインがモデル)が、ある新人女性社員(美人)を異様に厚遇している様子に気づく。明らかに性的対象にしているようだ。それに気づいた彼女は声を上げようとするが、その声は組織の中で押しつぶされていく。

本作の画面には加害者の姿も被害の具体的な内容も映し出されないが、周囲の状況や人々の反応から、観客の我々にも権力と性暴力の関係が次第に透けて見えてきて、背筋が寒くなる。

本篇に、感情を盛り上げる音楽は流れない。その代わりに同僚たちの話し声、電話やスキャナーやコピー機、給湯室での洗い物やブレンダーや電子レンジといったオフィスのノイズが、否応なしに耳に飛び込んでくる。

それらの音響は、本作が描き出す「会社組織」の非人間的な冷たさを、聴覚的にも強調しているかのようだ。

(2023.6.26)
http://www.wonosatoru.com


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