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ことば遊びとショートショート10『枠枠村』

 霧に覆われた森にその村はあった。

 村には無数の掟があり、村人は外へも出られなかった。

 ある晩。不気味な太鼓の音。

 若い男女が木に吊るされ、火がたかれた。
 
 女は塗り絵の掟を破った。

「なぜ線を無視した?」

『自由に書かせて!』

「はみだし者め」

 バチン!

 男はオセロの掟を破った。

「なぜ盤の外に石を置いた?」

『面白い手だろ!』

「その手に乗るか」

 バチン!

 鞭を喰らい、無知だと罵られた。

 村の中央の予定通りでの見せしめの刑。通り沿いには同じ仮面を被った村人。

 男は叫ぶ。

『塀塀塀!生涯、障害だらけさ!でも、きっと越えてやる!』

 ここで予期せぬことが。突然の雨。火は消え、吊るし木に雷が落ち、炎上。村人がうろたえる。

 ぬかるむ道を二人は走った。馬に股がる。村人が騒ぎだした。馬は加速する。

 村全体を囲う枠を越えた。

『やったぞ!』

 枠村を飛び出した二人。

 ここは枠枠村。

 ワクワクは止められない。

 (了)

【雑記10】

 物語で音楽のアルバムを作れないだろうか?

 いつからかこんなことを思うようになった。
 SpotifyやApple Musicなどサブスクリプションサービス利用者が増えてきた今。アルバムはフィジカルとして購入しなくても誰でも聴けるようになり、またアルバムとしてではなく曲単位でも最新の音楽を気軽に楽しむようになっている。
 自分もサブスクの恩恵を受けている一人だが、昔はCDを買い漁っていた人間だ。銀の円盤をCDコンポに突っ込み、ドキドキしながら再生ボタンを押し歌詞カードを見ながら聴く。アルバム曲最高じゃん!とかジャケに騙された!とか言いながら。なので、そういうCDの体験がとても大切なものとして自分の中にずっと残っていた。

 2年ほど前にショートショートの1st Album『ワンダーメーカー』を400字の小説投稿サイトSSG(ショートショートガーデン)で制作し、発表した。

 曲単位で楽しむのはもちろん、アルバムとして流れを感じてもらえるような物語に挑戦した。好きな音楽を好きな創作で表現したいと思った。
 音を体感できる物語。
 400字の中で文章のリズムやことば遊びをちりばめた物語を並べたときにアルバムとしての流れが作れるんじゃないかと。
 手探りしながらアルバムを作ってみて、この物語のアルバム作りは自分のライフワークにすることを決めた。自分の中にしっくりとくるものがあった。
 
 どこまで届くのかは未知数だが、今日からは、そんな1st Album『ワンダーメーカー』の曲をアルバム順にアップしていこうと思います。

 あなたの好きな物語、好きなことば、好きなリズムなど何かひとつでもピン!ときたり、笑ってもらえたりしたら作り手としてこんなに嬉しいことはないです。
 またこのアルバム作りの過程を話すことを通して、読んでくれた方の創作の何かしらのヒントにもなれれば同じ作り手として嬉しいです。

 今日は1曲目『枠枠村』から。

 お読みいただき、ありがとうございます!

 8月末まで毎日、400字ショートショートと雑記の2本立てnote を投稿することに挑戦中です。

 昨日のnote はこちら

 文章で物語で、読んだ方を笑顔に元気にできたら最高です!良かったら、また明日もふらっと遊びに来てください!

文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています! 読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!