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『編集とは何か。』何なのか。そうなのか。

本は好き。だけど、本に関わるお仕事の世界は案外よく知らない。なので、あの人は本関係の仕事だとか、本のあれこれに詳しいだなんてお聞きした日には、もう「おおー!!」っと尊敬の念が増し増しになります。
作家はもちろんのこと、編集者、司書、校閲者、書店員、デザイナー、写真家、印刷業者、紙業者…などなど…(敬称略)。はぁ、かっこいい。

もちろん、その方々の関わったり薦めたりする本自体への好みは分かれるけれど、本に関わる何かをしているよということについては、なんかかっこいいなあ、という憧れの気持ちが強いんです。

でも、それぞれのお仕事の実際って、なかなかちゃんとイメージできない。
例えば編集者。よくきく職業だけど、具体的にはいったいどんなお仕事してるんだろう?作家の密着取材とかは何かで見たことあるけど(モーニングルーティーン的なことまで公開されて、作家さんたちも大変だ 苦笑)、編集者の密着取材やインタビューって見たことないかも?

作家と話をして、「いや先生そこはこっちにした方が面白いです」ってアドバイスしたり、「締切そろそろ宜しくお願いします」って言ったりするのかな?ここ間違ってますよって指摘するのかな、でもそれは校閲者とどう違うのかな?うーん。

という、うっすら漠然としたイメージだけでここまで生きてきたところ。
とある古本屋さんでばったり出会ってしまいました。編集者による、編集者のインタビュー本!

『編集とは何か。』- 編集者・著者:奥野武範さん

一際異彩を放っていたこの本、何が異彩かって、新書なのに厚さが3.4cmもあるよ…!し、新書とは…!?(日本一分厚い新書ってもしや、これ?それとも、これを凌ぐのってあるのかしら!?)

ご自身も編集者である奥野さんが、様々な分野で活躍される14名の編集者に、それぞれたっぷり2時間ずつかけてインタビューした内容の文字起こしが主体でした。
ほぼ日刊イトイ新聞」のインタビュー記事をまとめ直して本にしたものなんですね。「ほぼ日」は初期の頃から時々覗いていたけれど、このコラムがあったのは気づかなかったなあ。

「編集」の実際と、それぞれのお仕事論

ひとくちで「本の編集者」といっても、単行本、文芸誌、新書、絵本、漫画、ファッション誌、写真集、アート系の本、などなど…本のカテゴライズ毎に、編集の仕事も変わってくるんですね。なるほど、言われてみればそうかあ。

さらには、各個人によっても内容やスタンスはここまで違ってくるんだ!?と驚く連続でした。皆さんが現編集職に就かれるまでの経緯や半生も、バラエティーに富んだ濃ゆいエピソードがたくさん。人生ってそれ自体が物語ですよね。なんてな。

毎回終盤で、インタビュアーの奥野さんが各編集者の方々に「〇〇さんにとって、編集とは何ですか。」という質問も投げかけるのだけれど、それぞれの分野でお仕事を確立された皆様の回答が、これまた味わい深くて。

へぇ、編集ってこういうこともするんだ!なるほど、これも編集なんだ!と、どんどん知らなかったお仕事が見えてくると同時に、各人に独特なお仕事論の深みがあって、「編集って何だ?」と、ますます深みにはまっていく感覚もありました。

門外漢ということもあって、結局読後に残るイメージは「本のお仕事!カッコいい!」が一番強いんだけど(一向に増えない語彙)、脳内で異業種交流会ができたような、ちょっと得した気持ちになれました。

インタビュアーの知識がすごい

編集者って、小説やなんかだと著者による謝辞にちらっとお名前が出てくるかどうかだし(出てこないことも多い!)、雑誌とかでも大抵は小さくしか書いてないから、インタビューで複数の方々が言っていたように、基本的には黒子的な裏方のお仕事なんですよね。

だから、「あの名編集者」と言われても、一般人にはピンとこないのが普通なのかなと思う。なので、この本の著者であり編集者である奥野さんについても、失礼ながら全く存じ上げなかったのだけれど。

14名(プラスあとがきで謎の1名)それぞれ、お話がすごくマニアックだったり、現代のみならず昔の日本や世界の文芸・音楽史的な知識もポンポン飛び出してくるので、知識の薄い読者(私だ!)だと、会話のマニアックさについていけない箇所だらけだったのだけど。

この奥野さん、恐らく取材前に各編集者さんについて相当予習されただろうとは推察されるものの、アドリブで飛び出す雑学的知識や、本にまつわる記憶とか、すごい。半端ない。ある意味いちばん感嘆したのは、そこかも知れません。

私、どちらかというと話題のひきだしは同年代では比較的多い方のタイプかな?とこっそり自己評価していましたが、とんでもございませんでした。世界は広いです。

今回みたいな本が、他のお仕事でもあったらいいなあ。校閲者による校閲者たちのインタビュー本。司書による司書たちのインタビュー本。書店員による名書店員ランキング。紙業者の作り出すこだわりの質感や、本の用途別に作り分ける真髄インタビュー。(敬称略)
もはや、プ◯ジェクトX!!

色んな本が読めるのも、こういう本にまつわる一人一人のお仕事のおかげなんですねえ。いつもありがとうございます。

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