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『マンガでカンタン!中学数学は7日間でやり直せる。』が神なわけ

数学は嫌い。そう思ってしまったが最後、授業も試験も全てがただの苦行に成り下がることが分かっていたので、学生時代の私が数学について語るときは「苦手なんだよね〜」の表現までに留めていました。

そう。基礎からコツコツ学んでいけば一応ある程度できるようにはなるんだから、私はきっと数学がちょっと苦手なだけ。案外付き合ってみたらいいヤツかも知れないじゃない?

あれから時を経て、今。数学にまつわる授業も試験も、私の人生では恐らく完全に過去のものとなったであろう、今。もっと自由に、もっと自分の気持ちに正直になってみようと思います。では。

ねえ数学。。。
ごめんね。知ってたかもしれないけど、実は私…あなたのこと嫌いなの!!!!!
苦手どころじゃないの。
大っっっ嫌いなの!!!!!

はあはあ…。やった…ついに言ってやったぞ。それどころか叫んでやったぞ…!!

でもでも。もしかしたら、必要に迫られて仕方なく勉強というか詰め込み(←たぶん勉強のスタンスとしていちばんあかんやつ)していた頃のタスクとしての数学じゃなくなれば、余暇として新しい世界を知るための素材として触れるなら、実は楽しめたりするんじゃないかしら?

だって昔、数学科(私からするとそんな学部選ぶなんて狂気の沙汰!いや褒めてます。ほんと尊敬)の友人が、黄金比やら何やらを例にして「数学は美しいよ」「数学はどんな世界も表現できる言葉なんだよ」的な、私からしたら超絶別次元の話をしてくれたし。

そんな私は数年前、俄かにこんな本に手を出してみました。

『フェルマーの最終定理』- 著者:サイモン・シン(Simon Singh)さん

言葉にしようのない、美しい瞬間でした。
(中略)
天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!

Amazonレビューより

ほらきた、やっぱりこの人も「美しい」って言ってる!しかも感動するらしい!これなら私も数学が好きになれるかもしれないよ!

結果。

即、挫折。

どの辺まで読んだかも覚えてない…なんか途中で色々数式が出てきてオワッタ気が…で、ちょうど生活もバタバタして、気づいたらそのまま…どこ行った?まだ家の本棚にある?…今度探すよ。ごめんフェルマー。ごめんサイモン。噛み砕いて読みやすくしてくれたんだろうけど、数学界の地面を這いつくばってる私にはそれでもハードルが高すぎたみたいだよ…。

というわけで、学生時代の数学大嫌いの件、大人になっても数学の概念すら理解できなかった件、そんな二重の数学トラウマを抱えた私は、それ以降数学界に全く足を踏み入れることなく、ひとり出禁になった気持ちを抱えひっそりと暮らしていました。

ところが。もしや深層心理では、いつかトラウマが払拭できることを願っていたのでしょうか?ある日の本屋さんで、面陳列されたこの本に何気なく吸い寄せられてしまったのです。

『マンガでカンタン!中学数学は7日間でやり直せる。』- 著者:倉田けいさん・小倉悠司さん

いやいやいや。何を言ってるんだい。あんな厄介な数学が、しかも算数ですらない数学が、たった7日間でおさらいできるわけが無かろうも。どうせあれでしょ?タイトルをキャッチーにして釣っといて、実際は途中で色んな数式がさも当然みたいに出てきて、結局苦手な人には苦手なままそっ閉じされる系でしょ?
でも漫画か。へぇ。いま暇だしちょっと覗いてやってもいいか。どれどれ…。

と、コンプレックス丸出しの、謎に斜に構えた上から目線でページを捲ってみたら…。

…ん!?こ…これは!!じっくり読みたい…!!と態度一変。こうして私はまんまと釣られたわけです。


倉田さんは、私だ

本屋さんで立ち読みしたのは、主にプロローグ。それだけでも、私はもう虜になってしまったのです。漫画には、漫画家・イラストレーターの倉田さん、数学講師の小倉先生、そして編集者の小椋恵梨さんが、そのまま可愛い絵柄で出演します。

倉田さんは言います。
「数学って一体何だったんだろうな…」
「数学って結局何の役に立つの?」
「数学の思考過程…って…つらいイメージしかないんですが…」

わかる。超わかる。

本編でも倉田さん、絶好調。
ちょっと考えに詰まるとすぐ帰ろうとしたり、お布団に入ろうとしたり。
中学になって急にxとかyとか出てきて「ハァ〜〜??」って怒りに震える気持ちを回想したり。
できる限りxと関わりたくない人間の思考(←結果、超非効率的)を臆面なく表明したり。
因数分解って響きがかっこいいですよね!必殺技みたいで!くらえ!!因数分解!とか言ってたり。

わかる。どれもわかりすぎる。

問題に対するリアクションも最高。
例えばこんな文章題…

シュークリームはいくら?
シュークリームを14個買い、300円の箱に詰めてもらったら1700円だった。シュークリーム1個の値段を求めよ。

P.108より

これに対し開口一番、「値段見て買い物しようよ!?貴族か!?」だし。
だよね!!だよねだよね!!

ケーキとコーヒーの値段だけ分かっていてパーティーの参加人数を求める問題では、「ところで参加人数はわからず人数分のケーキを買う状況とは…?」って疑問に思っちゃったり。
ですよね!!!ですよですよ!!

これは、間違いない。学生時代に文章題を解く度に「いや、だから毎度毎度動くなよ点P!少しはじっとしてろ!」「あきら君、水道の蛇口閉め忘れるなってば!あとお風呂の栓抜けすぎ!」「はなこちゃん!忘れ物しないの!頼むからその道一旦戻らないで!」「その大量の食塩水、何に使うのよ!」って脳内ツッコミの嵐だった私と、確実に仲間だ。

そんな倉田さんと一緒になら、この先生のお話きいてみようかな、と思ったのです。(あまりに激しく共感したので無駄に文章長くてごめんなさい…笑)

三者三様のプロが成せる結晶

本編が、本当に基礎の基礎からおさらいしてくれていたおかげで、こんな数学嫌いの私でも挫折せずに読み通すことができました。ごめんよフェルマー(←2回目)。でもこれ確実に、ただ単純に基礎から書いてあったから、ではありません。そんな本ならごまんとあるでしょう。

数学苦手人間代表として、どんなにちょっとしたことでも恥ずかしがることなく「わからない」「めんどくさい」「無理」と正直に質問や意見を述べながら、思考過程を一緒に学んでくれる倉田さんの率直さと、可愛くて面白い漫画にする力。

数学苦手人間に対する小倉先生の共感力と、相手のレベルに合わせて痒い所に手の届く細やかかつ分かりやすい説明力。

そして、そんなお二人のやり取りを冗長にすることなく、レベルも進み具合も意識しながら、本として先への興味をそそる構成にしていった小椋さんの編集力。(途中、倉田さんとはまた別視点からの質問も投げたりと、さすが編集者!と唸る俯瞰性も感じました)

このお三方がそれぞれの持ち分を存分に生かして取り組んだ本だからこそ、二重数学トラウマを負った私ですら、楽しく読み切れたんだと思います。

エピローグによると、この本は、何と本当に小倉先生が倉田さんに授業を行い(!)、授業をもとに漫画のラフを作成し、3人で議論して内容の修正・決定をして作られたとのこと。すごいな、本当に授業したんだ。道理で会話のやり取りにリアリティーがあったわけだわ。

現役中学生にもオススメ

なんか、書けば書くほどベタ褒めになってしまうわ、ついついすごい文字数になってしまうわ、なのでそろそろ自重しようかと思います。そういうわけでこの本、実際こんな私にも本当に分かりやすかったし、数学に対する考え方がちょっと変わった気がします。まだ「好き〜!」にはなれないけれど笑。

数学苦手人間の同志にはもちろん、数学なんて記憶の彼方な人にも、現役バリバリで中学数学をお勉強している人たちにも、か〜なりオススメです。

おまけ

ちなみに、こんなに分かりやすい本ですら、私はやっぱり「うお、数学か…うん、今日はいいや…」とつい他の本に手が伸び、買ってから読破までには1ヶ月以上かかったことは、倉田さんたちには内緒です…笑。

さて。フェルマーどこ行ったかな。。。

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