【Research】 政治とデザイン( ドラマ「THE WIRE」カルケティ,New New Zealand国旗,Harriet Tubmanの紙幣,ビール )
引き続きリサーチを紹介していきます。
今回は,主にそれぞれの国の政治に深く関連するオーダーたちです。
【 1 - 07. Carcetti 】
この人は「THE WIRE」というアメリカのドラマに出てくる「カルケティ」というキャラクター。
ドラマは2000年代のアメリカ,ボルティモアを舞台に警察と麻薬組織との抗争を描いています。そこで市長に立候補するのがこのカルケティ。犯罪数を減らしてより良い街にしようと奮闘する野心的なキャラクターです。
彼の面白いところは作中で成長していくところです。市議会議員から知事にまで上り詰めますが,その先は描かれていません。彼はアメリカ大統領を目指すかもしれないし,もしかしたら来日し,日本の政治に関わりたいと言い出すかもしれません。
そしてこのテーマに対する Maki からのオーダーには「2021年の日本の衆院選に向けたカルケティの政治キャンペーンアイテムを制作する」と書かれています。彼の選挙活動を応援するグッズを作るのか,はたまた新しい物語を私たちの手で紡いでいくのか。リサーチを元に,メンバーみんなでいろいろな想像を膨らませています。
【 1 - 08. New New Zealand flag 】
2014年,ジョン・キー首相が現行国旗にユニオンジャックが含まれていることはイギリスの植民地であったことの象徴であり,独立後の文化や社会を反したものではないと講演で指摘したことを皮切りに,ニュージーランドの新しい国旗変更が国家ブームとなって湧き上がりました。
シルバーファーンを携えた新国旗案が第一回投票で現行国旗と互角の結果でしたが、第二回投票において現行国旗が勝利し,実際には国旗の変更は為されませんでした。
一般公募を受け付け,採択に至らなかった一万点を超える応募作品には,どこかミームの空気を感じるようなものや,キャッチーなものも多く散見できた。この国家ムーブメントは,消えていった国旗案の代わりに何をもたらしたのでしょう。
国旗という一つのシンボルが,国民を巻き込んで揺らいでいくはためきを感じながらリサーチを深めています。
【 1 - 09. Harriet Tubman $20 bills 】
これはアメリカの20ドル札であるアンドリュー・ジャクソンの顔に,ハリエット・タブマンという奴隷解放運動家である女性の顔を上からスタンプで押したお札の写真です。アメリカではこのような状態のお札も通常通り使用することができます。国のアイコンとも呼べるお札の顔は,政治的な意味を持って選ばれ,その人物が掲げてきた信念こそが国のスローガンになるといっても過言ではありません。
では我々が日常で使っている日本のお札の顔はどのように選ばれたのでしょうか。政治的,歴史的な理由ももちろん関わっていると言えます。
しかし調べていく中で最も面白いと感じたのは,偽札を作らせないために精密な写真を得ることができる人がお札の顔に選ばれているという事実です。日本では偽札を作ることは投獄よりも深刻な犯罪とされており,日本円札は海外から最も偽札偽造が難しい紙幣と認められています。
こうしたことから日本の技術こそ国のアイコンであり顔と呼べるものなのではないのか,と現在議論を重ねています。
【 1 - 10. Beer 】
「スポンサーを探して,ビールのラベルをデザインする」という課題があります。
しかしこの課題だけは,他のテーマと同じようにリサーチを試みても、「虚構と現実のどのような文脈に位置付けられるか」「 Maki たちはどんな狙いを持って出題しているのか」うまく理解することができませんでした。
しかし前回のワークショップの中でコラボレーターの Sofie らと話していると,少しずつ全貌が見えてきました。
どうやらこの課題では,“ビールを扱う”ということだけが決まっていて,そこに「開催国それぞれの文脈に中で“虚構と現実が織り交ぜられている事柄”を見つけて,ビールのパッケージに落とし込む」というのが狙いのようなのです。
そこから,例えば直近の「オリンピック直前になって酒類の提供が禁止になった」事例から発想を膨らませて,「“架空のオリンピックビール”があったらどんなデザインになるのだろうか」なんてことを考えています。
架空のプロダクトを実際に印刷することで,虚構を現実が錯覚させる不思議な体験を作れたらいいなと思っています。
東京では気温の高い日々が続いています。ビールが美味しい季節というのもあり,最後にビールに関するオーダーを持ってきました。
緊急事態宣言により,飲食店の酒類の提供は規制され,ましてや皆で宴会など開催できず,味気なく感じることも多々あります。
このプロジェクトが終わって一段落する頃には,コロナによる様々な規制も緩和され,皆が元気で楽しく打ち上げできたらいいな,と(少なくともnote担当佐藤は)思います。
【 クラウドファンディングのご支援のお願い 】
本プロジェクトは,今秋の展覧会開催のためにクラウドファンディングを実施しています。
少しでも「応援したい」と感じた方は,ぜひご協力よろしくお願いします。
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