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鮭のチタタプ(塩なめろう)

先日初めてその世界に触れたとたん沼に叩き落され、2022年GWの前半三連休をトロットロに溶かしてくだすった名作・ゴールデンカムイ。(後半はさすがに我に返り妖怪草むしりや本棚の大整理にいそしみました)



全話無料公開が延長されたことにより、私同様に連休を溶かした紳士淑女の方々も多いのではないだろうか。noteで記事にしたところ、普段お付き合いしてくだすってる方々からも反応をいただけて、とてもうれしかった。推しと推しがかぶることに悦楽を見出す民です。


まだファン歴半月くらいの超初心者だけれど、壮大な物語の終幕をリアルタイムで目撃できたこと、本当に僥倖だった。この名作を世に送り出してくだすった野田サトル先生、最終回直前に300話以上のエピソードを無料公開してくだすった関係者各位、そして私にこの名作を熱く強く烈しく推してくれた義妹ちゃん……本当に本当にありがとうございました。

今後も何百回でも読み返したいと思ったので、現時点で発売されている全28巻は電子書籍で購入した。これでいつでも北の大地にトべる。


ゴールデンカムイは、日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌがひそかに隠した金塊を巡ってヤンヤンするお話だ。主人公は元軍人の青年とアイヌの美少女のコンビ。ぶっちゃけこの組み合わせだけで丼ごはんが永遠に食べられるくらい私の性癖にドツボっているのだけれど、野田先生の緻密かつ重厚感のある筆致で描かれる世界観、300話以上を一気に読ませてくれる疾走感あふれるストーリー、細やかでありながら非常に分かりやすいアイヌ文化の描写、迫力十二分のバトルシーンや心理戦、随所で展開される飯テロ、次々に登場する魅力的なキャラクターたち(ただし変態率高め)……等等々、心を鷲掴みにされる要素が盛りだくさん。この半月で全体を5,6周はしたのだけれど、読み返すたびにどきどきする。

どきどきっていうかムラムラという表現が相応しいかもしれない。読んでるとものすごく興奮してくるんですよね。


豊かな、だからこそ時に過酷な北の大地───

その地に生まれ育った、青き双眸と艶やかな黒髪を持つ聡明で勇敢なアイヌの少女・アシリパさん(正式な表記はリが小文字)と、彼女を取り巻く、屈強で頑健なガチムチのおとこたち───

時に刃や鉛玉を交え、時に同じ釜の飯に舌鼓を打ち、複雑に絡み合う人間模様のさなかで次第に紡がれゆく絆の糸───


ああ……駄目。

こうして思い浮かべているだけでも身体がうずいてきてしまう。

いけないわこんなの……


でも、でもっ


もう我慢できない……




チタタプしたい…………!!!!!!




チタタプ(正式な表記はプが小文字)とは、アイヌ語で「我々が刻んだもの」という意味らしい。材料はヒグマ・リス・ウサギ・鮭などなど。通常は生食であるが、鮮度の落ちた材料を使った際はつみれにして煮込みに仕立てにして食べることもある。




よろしい、ならばなめろうだ。




一刻も早くこの身体の火照りを鎮めなければ、そのうち道行く老若男女に見境なく「ねぇ……チタタプしよ……?」と声をかけまくっておまわりさんを呼ばれる事案に発展しかねない。もはや一刻の猶予も許されぬ……可及的速やかに手を打たなくてはなるまい。

私はすぐに大帝国ロピアへと早馬を走らせた。チタタプの主軸を担う食材・サーモン(お刺身用)と薬味各種を入手。アシリパさんによれば鮭のチタタプはチタタプの中のチタタプであり、おまけに私が目下最推ししているあのひとが初めてチタタプしたのが鮭だったのだ。鮭を選択することになんの迷いがありましょうや?いや、ない(反語)



まずはロピアで買ってきたお刺身用サーモンを昆布&貴族のラップでピチットいたしまして、昆布締めを作る。締める時間は一晩もしくは二晩、お好みでどうぞ。


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この鮭……すけべすぎる



薬味として仕入れたしょうが・大葉・茗荷はみじん切りにしておく。


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昆布締めの鮭をコロコロにカットして


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薬味連隊をどーんとぶっかけましたら、こいつを「チタタプ、チタタプ」と言いながら包丁で念入りに撲殺する。アシリパさんによれば、チタタプはチタタプするほどにおいしくいただけるらしい。


ここで「チタタプ処女かよワカナちゃん」「チタタプってきちんと言えるかなぁ?」って言われてる妄想に耽ると大変にはかどりますしみなぎりますフンスコフンスコ


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チタタプ、チタタプ……(ちゃんと言わないとアシリパさんに叱られてしまう/////)


「おお~上手いじゃねえか。ほんとに初めてか?ああ~?」
や、やめてください杉元さん……手元が乱れちゃう/////


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チタタプチタタプチタタプチタタプチタタプぅっっっ!!!!!



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ハアハアハアハア…………ッ

ふう。


こいつをボウルにでも入れて、ごま油×塩×レモンで味つけ。あとレモンの絞りジルも入れてみた。作中では入っていないのだけれど、鮭のねっとり濃厚な味には柑橘系の香りが似合うんではないかな、と思ったので。すだちや柚子なんか使うとより野趣あふれる感じでよろしいかもしれない。


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たまたま冷蔵庫にあったきゅうりを添えてお皿にホイ。山菜なんかあしらえたらもっと金カムぽくなっただろうなー。


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こういうものには日本酒を合わせるのが最適解なのだろうけれど、私は過去に酒でやらかした経験のことごとくに日本酒が絡んでいるので、ここはワインで。大好きなスパークリングワインをきりっきりに冷やして添える。


味ですか?そらもーね、


とぉ~ってもヒンナ!!



ヒンナとは、食事に感謝する言葉。アイヌの人々は食べながら言うらしい。作中の飯テロシーンで頻繁に登場するけれど、「おいしい」という意味のアイヌ語は他にあるそうだ。「いただきます」「ごちそうさま」を含んだ「ありがとう」的なニュアンスで使われているのかな。


脂の乗った鮭のねっとりとした舌ざわり、濃厚なコクと旨みに、大葉や茗荷やしょうがのすっきりとした涼やかな風味がグンバツにマッチしていて、どちゃくそめちゃんこヒンナヒンナ~!カンパチの時よりもぐっとお腹に響くようなおいしさだ。ナマモノばかりなのにめちゃくちゃパンチ力があって、ほんの少しずつつまむだけでお酒がぐいぐい進んでしまう。勝手にアレンジしてレモンの絞りジル混ぜちゃったけど、我ながら大正解だったわ。鮭そのものこってり具合にごま油の香ばしいオイリー感が効いているから、非常に食べごたえがある分、レモン無しだとちょっと飽きが来ちゃうところだったかもしれない。爽やかな酸味が大変素晴らしい働きをしてくれている。

鮭のにほひを嗅ぎ付けてにじり寄ってくる獣たち(ねこ)と死闘を繰り広げつつ、口の中でとろけて広がる官能を大いに堪能いたしました。ごちそうさまでしたヒンナヒンナ。


ジビエのチタタプはさすがに難易度が高すぎるけれど、塊肉のチタタプを団子にしてオハウ(鍋物)にする、くらいだったら私にもできるかしら……なんてことばっかり最近は考えています。チポプサヨ(イクラ入りのお粥)なんかもおいしそうだよなー。このお粥が登場した時のエピソードも好き。


ちなみにいちばん作ってみたい料理はラッコ鍋です。





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