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ウエクミ対談シリーズ:早霧せいな【後編】イタリア語で歌う町内会。衣裳は私服!

【前編】身体で聴く奇跡の声!

早霧:ところで、今回のコーラスの方たちすごくないですか?

上田:そう!すごいんですよ!よく見てますね!

早霧:歌は統制が取れつつも、上田さんの意図を汲んでか、バラバラのいろんな住人たちがいるというのも体現していて。

上田:そうですよね、町内会にいろんな人がいて、好きで集まってるんじゃなくてたまたま腐れ縁でいろんな人がいて実は気が合ってなかったりするけど一緒にいるみたいなリアリティですよね。

『田舎騎士道』より ©2/FaithCompany

早霧:あの関西に住む人々を演じるコーラスがいることで、二つの作品が、遠い国の作品から、一挙に身近な話に感じられ。

上田:個人的に、今回のMVPの一つがコーラス。そこに気づくの、さすがですね。早霧さんって、宝塚時代から大勢口と呼ばれる集団の場面を大事にしてましたよね。

早霧:ははは。

上田:それこそ後ろに目がついてるとか言って、後ろの下級生から緩んだ何かの気配がくるとピッて気付いてたじゃないですか(笑)

早霧:(笑)今回、2階バルコニー席にも、舞台を見下ろす形でコーラス隊がいたじゃないですか。「ちゃんと集中力切らさずにやってんのかな」って、私どういう立場かわからないですけど(笑)見てたんですよ!

上田:監視!?

早霧:(笑)でもほんとにすごかった!一矢乱れぬ集中力で!それが客席にも伝わるから、観客も集中して見れたと思うんです。

上田:素晴らしかったですね。

早霧:しかも今回、町内会でこの人が幅をきかせてるんだろうなとか(笑)、この人はおしゃべりだなとか、衣裳と相まって個性が感じられて、そのへんどの程度、上田さんが演出していったのかなと興味を感じたんですけど。

上田:これはね、すごく楽しかった!コーラスとの稽古。年齢性別の多様性も面白かったし、それに役者ではなく歌手だから、出てくる演技が自意識過剰とかステレオタイプに陥らない。ただ、最初はイタリア語であの歌を歌うとなると、自ずと格好良く胸をはって、座る時も騎士みたいに片膝立ててしまうんですけど、それを、「現代日本人だからもっとふにゃふにゃした動きで、猫背とか」と言われて、けっこう歌いにくそうでしたが。

早霧:その大変さが、あの作品の生っぽさをより際立ててましたよ。

上田:そう、型じゃないところでやってくれて、演技に関しては予想外の面白さがあるなとオペラをやって思いました。私から細かい指示は全然していなくて、コンセプトさえ理解したら自発的に芝居を作ってくれて、それが非常に自然な情景を描いていて素晴らしかったです。しかも衣裳というか、あれ私服なんですよ!

早霧:えっ!!

上田:すいませんって感じだったんですけど…なるべく着倒した服を持ってきてくださいってお願いして…中には草野球チームの古いユニフォームとか着てきてくれた最年長の人もいて。町内会長ってことになってたみたいですけど。

早霧:その人、気づきました(爆笑)みなさん楽しんでおられたんじゃないでしょうか。

上田:でも最初は、西洋のクラシカルなことをやり慣れてきたプロたちなんで、何をやらされるんだろうという戸惑いもありましたよ。ところが最終的には、素晴らしいものになりました。あ、でも愛知公演では、新たに愛知のコーラスメンバーで作るんです。私服で(笑)。すでに稽古していて、これが東京より西に来たって感じでより暑苦しくてやたらめったら芝居が上手い。すごい前のめり…(笑)こちらも本当に楽しみにしているんです。

『道化師』より ©2/FaithCompany

早霧:やっぱり思ったのは、見ず嫌い、食わず嫌いはいけないってことです。今回上田さんのおかげでオペラというフィールドに入門させてもらって、やっぱり生で感じる、劇場まで行くってこと、一歩踏み出すことってめちゃくちゃ大事だなと思いました。

上田:今日、感想を聞いてみて、早霧さんはこちらが「そこ見て欲しかった!」というところと、私ですら気付いていなったことも受け取ってコメントしてくれて、よくそんなに知的に繊細に感じ取れるなと単純にびっくりしました。見る人によって感じる、気づくことが全然違うんだろうな…。劇場に行くって、自分っていうものに気付かされる体験でもありますよね。

早霧:そうですね!

上田:自らを試せる鏡みたいな。

早霧:ちょっと話それるけどね、私、この役やりたい!と思った役があって…

上田:なんですか?

早霧:マエストロ…(爆笑)マエストロやりたい!って思ったんです。一番権限があるとさっき伺いましたが、実際、舞台からどんなものが飛んできても、「私はここで指揮をとっている」ていうあの感じがすごい素敵だった。しかも一番観客側にいてよく動いているのに、そこに変な意味で目がいかず、全体と調和しておられて…。

アッシャー・フィッシュ(指揮)©2/FaithCompany

上田:へー。今回、このプロダクションにとってアッシャー・フィッシュさんが振ることは最大の幸運と言われていて。素晴らしい指揮者が、アヴァンギャルドな演出に対して最適な判断で振ってくださった。オペラで一番重要な人物はマエストロ。いや、面白いね、オペラ初めてなのにそんなふうに気付いてくれていたというのは喜びですね。


公演情報

愛知公演【3月3日/3月5日】

東京公演は全公演終了いたしました。ご来場ありがとうございました。