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テレビが作る「農家さん」の虚像と実像

中小企業診断士のフクダです。
私は「さいたまヨーロッパ野菜研究会」という団体の事務局を務めている関係で、これまでに数百回のマスコミ取材をお受けしてきました。
その中で、特にテレビ番組に出てくる「農家さん」像と、私の知っている実際の生産者(私は基本的に「農家さん」ではなく「生産者」と呼びます)に、かなりのズレがあると感じていました。
今回はその「テレビの農家さん」に感じる違和感のお話です。

虚像1「結婚している」 


TV取材の打ち合わせで独身の生産者を紹介すると「すみません、結婚していて、できればお子さんもいる方をご紹介いただけませんか…?」とよく言われます。
私の周りには、若くて独身の生産者もいます。もちろん、高齢でシングルの生産者も沢山います。離婚している人も、家族と別居して就農してる人もいます。結婚している、していないと仕事の質は全く関係ありません。
他の職業で、独身だとまずいお仕事ってありましたっけ…?

虚像2「家族全員農家」

次に「家族みなさんの取材をさせて欲しい」というリクエストもよくあります。お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、子どもたちまで出てくる農家、よくテレビに登場しますよね。
実際は…都市農業という事情もありますが、家族全員農業に従事している生産者は、むしろ少数です。夫だけ、妻だけ農業で、パートナーは他のお仕事に就いているお家、沢山あります。
最近は会社として経営している生産者も多いですから、農業経営と家族は完全に切り離されているところも多いです。
でも、家族を出したがるんですよ…バリキャリのスーツ着ている奥さん出してどうするんですか…?

虚像3「家に入れて、もてなしてくれる」

これも非常に困ったリクエストのひとつで、テレビ番組って、やたら家に入りたがるんです。
これもステレオタイプがあって、田舎の高齢農家さんが大きな古民家で大歓迎してくれて、家族団らんの中におじゃましまーす!的なやつです。
小さな子供のいる奥さんからしたら、「夫の仕事の取材なのに、なんで家の中まで見られるの? 他の業種でそんなことある? 子供写すの? 防犯的にありえない!」と思われても仕方ないです。
今どきはマンション住まいの生産者も多いですよ。

虚像4「料理のレパートリーが豊富」

休日の夕方から夜あたりにやっている番組、みーんなコレですよね。
奥さんやおばあちゃん、果ては親戚のオネーサンとかが「いつもこうやって食べてまーす」的な自慢のお料理を沢山つくって食べさせてくれる………

ないない。私の知り合いの生産者で、奥さんが料理上手でテレビに出てもいいって言う人、数十人中、1人しかいません。
たとえ料理好きの奥さんでも、自分の家のキッチンにカメラが入ってくるのは抵抗があります。
バラエティ系のテレビ取材は、たいてい「お料理を紹介・・・」のところでお断りする羽目になります。

むしろ、野菜を買ってくださっているレストランシェフとか、いつも買ってくださる個人のお客さんのほうが、よっぽど工夫して素敵なお料理をつくっているので、そっちを紹介したいんですけどね。

昭和の「農家像」から脱却して欲しい

おそらく、視聴者側も「昭和の家父長的」「サザエさん的」な農家像に憧れがあるのかもしれません。実際、上に書いたようなステレオタイプな生産者もいることはいます。
とはいえ、「テレビ受けするようなちょっと珍しい作物を作っていて」「若手で」上の条件に合う生産者って、本当に少ないです。

私も視聴者としては「農家のお料理番組」観るの好きです。
でも、よく見てると同じ人がいろんな番組で「使い回されて」いるんですよ。
多分、家族全員取材OKな生産者って、もう相当限られているんじゃないかと思います。
そろそろテレビも、現実に沿った生産者の取り上げ方をして欲しいなと思います。


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