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デバイスR&Dを通じたプロダクト展開 ~ セーフィーのPdM座談会 第6回

はじめに

こんにちは。セーフィー株式会社でプロダクトマネージャー(以降、PdM)をしている杉本です。主にウェアラブルの「Safie Pocket」シリーズ(セーフィー ポケット シリーズ)、エッジAI搭載の「Safie One」(セーフィー ワン)のプロダクトマネジメントをしています。

本記事ではPdMの育成の取り組みのひとつであるPdM座談会の第6回の内容についてご紹介します。

メンバー育成の取り組みのひとつ、PdM座談会について

セーフィーのプロダクト企画チームではPdM育成のためのさまざまな取り組みを行っています。その1つが、他企業のPdMをゲストに招き、社外の知見をメンバーに還元するPdM座談会です。

今回はリコーインダストリアルソリューションズ株式会社の安田拓郎さん、岸和田潤さんをゲストにお招きし、第6回PdM座談会を開催しました。
本PdM座談会の企画・運営を担当した杉本が、PdM座談会の開催目的や当日のイベントの様子についてお伝えします。

第6回のPdM座談会の開催目的

セーフィーではデバイス・クラウド・アプリケーションと様々な技術領域があり、これらをかけ合わせて顧客へ最適なプロダクトを企画提案できるのが非常に面白いところだと考えています(詳しくは社員インタビュー参照)。

今回はさらにかけ合わせの視野を広げるために、自社で研究開発したデバイスの要素技術をプロダクトに展開するということに着目してメーカーで活躍されている安田さん、岸和田さんに声掛けをしました。

左から安田さん、杉本、岸和田さん

デバイスR&Dで培ってきた光学技術や画像処理技術を強みを活かした各種のプロダクトを立ち上げてきた際の企画・開発の観点や市場調査の進め方等を共有いただき、先端デバイスのプロダクトマネジメント特有の工夫した点、苦労した点などセーフィーだけでは経験しきれない様々な貴重なお話を伺うことができました。その中で、メンバーから特に印象に残ったという声が多かったお話をいくつか紹介します。

ユーザー体験に着目したコンセプト提案及びMVPを通じた顧客とのユーザー体験の創り込み

研究開発していた光学技術を取り入れた表示デバイスを製品化する際に、新しい市場に向けたコンセプトの提案及びMVPを通じた顧客とのプロダクトの創り込みをした事例を伺いました。主なポイントは下記となります。

  • ユーザー体験に着目したコンセプト提案

    • 技術的な特徴を活かすためにどのようなプロダクトにすれば良いか検討をしていたが、最終的には従来製品との性能比較ではなく、デバイスの特徴を活かした視覚効果を積極使用した表示方法を含めてユーザー体験を変えることに着目したコンセプトを提案

  • PoCの段階から有償とすることで顧客を巻き込む

    • 顧客にコンセプトを提案する際にあえて企画・開発部隊だけでなく、顧客の営業部隊を巻き込み、PoCの段階から有償で進めることによって、顧客の投資決裁を通じてPoCの本気度を上げる

  • MVPによるユーザー体験の創り込み

    • ハードウェアであってもコンセプトの仮説検証をするために、MVPを開発して顧客の声を聞きながら検証、改善サイクルを回して顧客と共にユーザー体験を創り込む

デバイスR&Dで培った要素技術をプロダクト化する際においても、技術ありきのプロダクト化ではなく、ユーザー体験に着目したコンセプトの提案、コンセプトを検証するためのMVPの開発、顧客とPoCを通じてユーザー体験を創りこむというリーン開発の考え方が先端デバイスのプロダクトマネジメントに取り入れられている点は印象的です。

ハードウェア開発は開発期間が長く、仕様変更の影響が大きいため、一度決めた仕様に対して開発をすることがまだまだ多い状況にも関わらず、新しいコンセプトの仮説検証のためにMVPを開発して顧客の声を聞きながら検証、改善サイクルを回すために、顧客の投資決裁を通じてPoCの本気度をあげるという取り組みが非常に興味深い事例でした。

PdM座談会の様子(リコーTHETAにて撮影)

市場の成長性と自社の強みを掛け合わせたプロダクト展開と世界最小への挑戦

研究開発をしていたステレオカメラによる測距技術の製品化にあたり、環境分析、市場調査を通じて自動車向けのADAS(Advanced Driver Assistance System: 先進運転支援システム)用、その後産業用車両などへプロダクト展開をした際の事例を伺いました。主なポイントは下記となります。

  • 市場の成長性と自社の強みを掛け合わせた用途探索

    • ステレオカメラの測距技術の製品化を検討した際に、環境分析、市場調査を通じて、市場の成長性が高く、自社の強みである広角・高精度での高速処理と小型化技術が活かした用途としてADASに着目して市街地をセンシングするコンセプトを提案

  • 世界最小のADAS用ステレオカメラへの挑戦と成功

    • プロトタイプを提案した際に、顧客から車に搭載するにはさらなる小型化が必要と要求があったが、逆に顧客要望を満たすステレオカメラが世の中にないことの裏返しであり新しい市場が切り開けることに気付くことができた。「世界最小のADAS用ステレオカメラの実現」と高い目標を設定して、開発チームが一丸となり粘り強く開発を進めることで、最終的には顧客が求めるプロダクトの実現に成功

  • 自社技術の強みを活かしたプロダクト展開

    • ADASで培ったステレオカメラ技術をさらに広げる際に、自社の強みを改めて棚卸しして環境分析、市場調査を進めることで、路面モニタリング、物流用車両の安全監視などADASだけでなく、他の市場へのプロダクト展開に成功

デバイスR&Dを通じてどのようにプロダクトに展開するか、という観点では本事例は自社技術の強みを武器に環境分析、市場分析を通じてプロダクトに展開している好事例と言えます。市場の成長性が高く、自社の強みが活きる用途としてADASに着目してコンセプトを提案し、プロダクト化に成功しているためです。

また、顧客からの車に搭載するための厳しい小型化の要求に対して、逆に新しい市場を切り開くチャンスとして開発チームが一丸となって「世界最小のADAS用ステレオカメラの実現」の開発に挑戦してやりきっているところが印象的です。

プロダクトの企画提案に際して顧客ニーズに対して自社の技術で実現可能な範囲で考えてしまいがちですが、「真に顧客の課題を解決するプロダクトになっているか」という顧客軸の切り口と、「難易度は高いが、自社の技術力なら実現できるか」という技術軸の切り口のバランスをPdMとしてどう確保するか非常に考えさせられる事例でした。

顧客課題の解決に向けたウェアラブルタイプのSafie Pocketシリーズのプロダクト展開

セーフィーでは「Safie GO」シリーズ(セーフィーゴー シリーズ)や「Safie Pocket」シリーズ、「Safie One」のように顧客ニーズに合わせた特長のあるデバイスを提供しており、今回の座談会の事例のようにユーザー体験に基づいたプロダクト開発や自社の強みを活かしたプロダクト展開をしています。今年は最新モデルである「Safie Pocket2 Plus」(セーフィー ポケット ツー プラス)をリリースしましたので、ウェアラブルタイプの「Safie Pocket」シリーズのプロダクト展開についてご紹介します。

Safie Pocketシリーズのプロダクト展開
  • 顧客課題の仮説検証に向けた「Safie Pocket」

    • 業務効率化のため建設現場を遠隔で確認する「遠隔臨場」を導入したい顧客課題に対して、クラウドを経由して遠隔で映像が見れる自社の強みを活かしたデバイスとして「Safie Pocket」のコンセプトを策定

    • ウェアラブル型のクラウドカメラというコンセプトの仮説検証のため、システムとして動作させるのに必要なバッテリーとLTE通信をあえて除いた最小限の仕様で開発

    • 顧客課題を解決できることの確証を得てから、ユーザー体験に寄り添った「Safie Pocket2」(セーフィー ポケット ツー)の開発に着手

  • 遠隔臨場を誰でも手軽に実現する「Safie Pocket2」

    • 遠隔臨場を実施する建設現場の管理者と作業者の2軸でユーザー体験を作り込み、遠隔臨場を誰でも簡単に実現するコンセプトを策定

    • コンセプトを実現するために業務時間である8時間動作するバッテリーと、屋外でのクラウド接続のためのLTE通信を内蔵したオールインワンにこだわったデバイスを開発

    • ユーザー体験として手元に届いたら電源ONするだけで使えるように、初期設定せずに使えるようなカメラのFW開発、クラウド契約やLTE契約などはセーフィー側でまとめてお客様に提供できる体制を整えて提供

  • 遠隔業務に必要な機能をフルパッケージした決定版のモデル「Safie Pocket2 Plus」

    • 「Safie Pocket2」の顧客の声を集め、より使いやすく進化させた決定版のモデルとしてコンセプトを策定

    • 「Safie Pocket2」とほぼ同等のサイズかつオールインワンなどの基本機能は踏襲した上で、モバイル給電、スピーカー通話、手ぶれ補正、デジタルズームと機能拡張を実現

上記のようにセーフィーでもウェアラブルタイプの「Safie Pocket」シリーズの立ち上げの際に「Safie Pocket」、「Safie Pocket2」と2段階でリリースしており、その際に「Safie Pocket」をモバイルバッテリーとLTEルーターが別途必要という最小限の仕様で開発して仮説検証を行い、顧客の課題解決ができることの確証を得てから、バッテリーとLTE通信を一体化してプロダクトの完成度を高めた「Safie Pocket2」を開発するアプローチをしました。

また、「Safie Pocket2」の販売と同時に顧客の声を集め、より使いやすく進化させた決定版のモデルとして「Safie Pocket2 Plus」を展開することで、様々なシーンで使えるようにプロダクトを展開しています。ハードウェアを含んだデバイス開発は開発期間が長く、仕様変更が難しいからこその工夫をし続けることで「Safie Pocket」シリーズのプロダクト展開をしています。

セーフィーのカルチャーには「夢を語りまきこみやりきる」というのがあるのですが、今できる範囲の妥協の産物ではなく、ユーザー体験に着目したコンセプト提案及びMVPを通じた顧客とのユーザー体験の創り込みによるプロダクト開発を実現してきた両社だからこその、想いや夢を語り、人をまきこみ、 粘り強くやり切ることの重要性について、座談会の参加者からの質問をきっかけにディスカッションが盛り上がり、プロダクトの展開方法について様々な知見を共有することができて充実した座談会となりました。

PdM座談会後の記念写真(リコーTHETAにて撮影)

セーフィーのプロダクトマネージャーに興味を持っていただいた方へ

 セーフィーでは「Safie GO」シリーズや「Safie Pocket」シリーズ、「Safie One」のように顧客ニーズに合わせた特長のあるデバイスを提供していますが、位置情報連携機能Store People Detection Pack (ストア ピープル ディテクション パック)のようにデバイスだけに限定されずに、クラウドとアプリケーションを組み合わせたプロダクトの企画・開発ができるので、お客様への提案の幅が広いところが非常に面白くやりがいを感じています。デバイスを軸に映像データとクラウドを組み合わせることで、お客様の課題やニーズに応じて映像を中心とするトータルソリューションを生み出せることこそが、セーフィーでプロダクトマネージャーをする醍醐味だと思っています。

電気メーカーのエンジニア、SaaSメガベンチャーのPdM、IoTスタートアップの商品企画など様々なバックグラウンドを持ったメンバーがセーフィーには集まってきており、一人ひとりが「自分ができること」だけではなく、「自分がやりたいこと」を提案し、周囲を巻き込みながらチャレンジできる環境が整っていると考えています。新しい領域や新しい課題に対して果敢に挑戦し、一緒にお客様に喜んでもらえるようなプロダクトを創り出していきたいので、もしセーフィーでやりたいことのイメージをお持ちであれば是非声を掛けていただきたいです!(セーフィーの採用サイトはこちら

最後になりますが、講師の安田さん、岸和田さん、また積極的に意見交換していただいた参加者の皆さん、本記事のレビューやタイトル画像作成を実施していただいた皆さま、ご協力ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

※過去のセーフィーのPdM座談会のnote記事リンク
 ・社内向けプレスリリースで顧客課題を分析 ~ PdM座談会 第4回
 ・他企業から学び、気づきを得る。プロダクト企画チームのPdM座談会
(都合により非公開とする場合もあり、番号が飛んでますがご容赦ください)