吾輩は白クマである。〜プロローグ〜
吾輩は白クマである。
幸いにも名がある。
僕の名はちゅんちゅん。
主人と共に暮らす白クマである。
年齢は僕にも分からないが、
主人よりは少しは長く生きている。
どこで生まれたかは覚えていない。
でも家族に迎えられた時の事はうっすらと覚えている。
だが語るほどでもない。
白クマというと白い毛がもふもふしてて
某柔軟剤に出てくるような、いかにも愛らしいクマを想像すると思うが、
期待させて申し訳ない。
そこそこの年数生きているのと最近は目が悪くたびたび主人に診て貰っており
何よりも毛の色が【白と灰色の間】の色をしている。
もちろん、もふもふもしていない。
主人を紹介しよう。
彼女は都内OL。バツイチ。人間の年齢で言うと30代くらい。
趣味はお酒を飲むこと・フェスやライヴに行くこと・アウトドアという
一見、社交的が高い人間性に思うが、
読書・ゲーム・アニメ鑑賞も好きらしく、
僕から見たら本来の性格はインドア傾向の性格にあるように思える。
とにかく常に何かしら趣味に時間を割いている。
そのせいか休日は一人でいることが多いようだ。
最近の悩みは
少し前に部署移動した先の上司との接し方が難しいこと、
実家との距離感だそうだ。
1日の終わりには日記を書いていて
記憶が正しければもう5年続けている。
彼女の癖の一つに物に名を付けるというものがある。
自転車にはサリー
お気に入りのエアマックスにはノエル
猫の置物にとろみ
ブックカバーにワトソン君
そしてその日記帳にはミミーと名を付けている。
どんなこと書いてあるかは僕は知らない。
でもいいストレス発散にはなっているようだ。
主人との暮らしは
刺激的なものでなければ穏やかというほど落ち着いているものでもない。
1日中読書して時間をかけて丁寧な料理を作る日が続く時もあれば
年甲斐も無く無断で朝まで飲んで翌日の昼頃まで帰らず
心配をさせる時もしばしばある。
変化がない日常より良いのかもしれないが
振り回されるこっちの身にもなって欲しいものだ。
だが、
昼まで寝る口実を寝ぼけながらも淡々と語る姿や、
家でお酒を飲みながら屈託のない笑顔で好きなバンドの曲で踊っている時
録画したお笑い番組で同じ所で何度も爆笑する姿
それらを見守れるのは白クマ冥利に尽きると言った所か。
今日も主人は僕に話しかける。