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それぞれの世界の中で

私の恐怖体験

自分と子供の人生を守るため意を決して夫から逃げた私。
夫から逃げさえすれば、この生活から脱することさえできれば
平和で穏やかな生活が手に入ると思っていました。

ところが残念ながら
私のこのささやかな願望が叶うことはありませんでした。
それどころか私を待ち受けていたのは
トラウマによるPTSD体験でした。

PTSDとは・・・
災害や事故、犯罪被害などの体験がトラウマとなり
何度も繰り返し同じような恐怖を感じ続けるもの
4つの主要な症状といわれているのが
・フラッシュバック(再体験)
・回避症状
・過覚醒
・思考と感情の否定的な変化

PTSDについての知識は持ってはいましたが
「知識がある」と「体験する」のでは大違い。雲泥の差です。
しかも初めて経験することで、何が起こっているのか分からないまま
まるで突然、大きな波に飲み込まれたように
その苦しみと混乱に翻弄されてしまいました。

PTSDについて、カウンセラーがとても分かりやすく説明してくれたことがあります。

「人は命の危険を感じるような体験をした時に
無意識に恐怖を感じないようにしています。
何故なら人は恐怖を感じると思考が停止し
身体も動かなくなってしまうからです。
そうなると「命を守るための行動」を取れなくなります。
そのため「命を守るため」に恐怖を一時的に感じないようにします。
そして命の危険を感じる状況から脱した時、安心・安全が確保できた時に
それまで押さえ混んできた恐怖を解放します。
堰き止めて、溜まりに溜まった恐怖が一気に押し寄せてきます。
それがPTSDです」

どうでしょう。とても分かりやすいと思いませんか?
私が感じた「まるで大きな波に飲まれたような」感覚も、これを聞くと納得できますね。

そしてPTSDが発症する、ということは良いことでもあります。
「危険」な状態から脱した、状況が良くなった、前進したとも言えるからです。

とは言え、このPTSD・・・なかなか凄まじいものです。
症状も、その強度も、人によって様々で個人差があるようですが
それまでに経験したことのない圧倒的なその波は
飲み込まれたことに気付く暇さえ与えてはくれません。

そんな私のPTSD体験を、できるだけ具体的に言語化してみたいと思います。想像しながらお付き合い下さいね。

恐怖の始まり

それは家を出た翌日
弁護士さんと電話で話していた時のことでした。
「今まで大変でしたね。(夫と生活している間、夫のことが)怖かったでしょう?」
その言葉を聞いた途端、頭の中に「怖い」という言葉が強く響きました。
「怖い?怖いって何?怖いなんて思ったことなかった。でもどうして?あれ?なんかおかしいな・・・どうして怖くなかったんだろう。あれ?」

その瞬間、私の心の中から「恐怖」が勢いよく噴き出してきました。
それはまるで噴火した火山の火口からマグマが噴き出しているかのようでした。そしてもの凄い勢いで私を飲み込み、さらに溢れだしてあっという間に部屋中に充満し、それが私の身体に覆い被さりました。
その重みで身体が圧迫され、呼吸をするだけで精一杯になりました。
これが始まりで、ここからあらゆる症状を経験していきます。

世界から見捨てられた

私を襲った「孤独感」
まるで世界中から見放されてしまったような「孤独感」です。
「自分は必要の無い存在」
「誰も私のことなんて気にしていない、どうでもいい存在」
「こんな私がここで生きているなんておこがましい」
「存在していることが恥ずかしい」
自分という存在そのものが「恥」に思えて
今すぐにでも消えてしまいたいと感じていました。

監視されている

常に「監視されてる」「追い詰められている」という脅迫概念。
家の中にいても安心できず、常に追われているようで不安感と恐怖感が常に付きまとっていました。
窓を閉め切った家の中にいても怖くてたまらず、押し入れの中に隠れていたいという衝動に駆られていました。(これは「1度入ったら出て来られなくなる」と思い、必死で我慢しました)

蟻地獄

それらのあらゆる恐怖をただ感じるだけでなく、感情が「落ちて」行きます。蟻地獄に落ちていくような感覚です。
私は穴の中に落ちていく砂の上に座っていて、砂と一緒に落ち続けていくのです。止めたくても止まりません。
何かに捉まりたいのだけれど、そこには落ちていく砂があるだけでした。
私はいつも心の中で「怖いよー!誰か助けて!」と叫んでいました。

悪い知らせ

電話の着信、メール、玄関のインターホン
全てが「恐怖」でした。その向こうには私を更なる「絶望と苦しみ」へ突き落とすための「悪い知らせ」が待っているように思えて、全てに怯えて過ごしていました。

悪夢

同じ内容の夢を繰り返し見ていました。
例えば初期の頃によく見ていたのは「逃げ回る夢」でした。
私を探し、追いかけてくる夫から必死で逃げている夢です。
最後まで夫が出て来ることはないのですが、姿が見えない夫から逃げ回り、身を隠して怯えている夢でした。

その他、パニック発作や過呼吸などの症状を繰り返していました。

ざっとではありますが、これが私のPTSD、「恐怖体験」です。

これを読んで、どんなことを思われたでしょうか。
気のせい、妄想、思い込み・・・
様々なご意見や感想があるかと思います。

でもこれは事実なのです。紛れもなく私が体験した事実なのです。
本当に恐怖が重くて呼吸がうまくできず、とても苦しかったのです。
終わりの無い穴を延々と落ちていく感覚を今でも覚えています。

「恐怖が重い」とか「蟻地獄におちていく」とか・・・
もちろん、これは現実に起こった出来事ではありません。
恐怖というものが現実に物質的に存在している訳ではなく
ましてや蟻地獄が存在している訳でもありません。
でも私にとってこれは実際に経験した「事実」であって
(当時の)私にとっては私が生きている「現実」でした。

私と一緒に生活していた子供達は
私が実際に蟻地獄に落ちているのを見たことはないでしょうし
私の身体の上に「恐怖」が乗っているのも見たことはないでしょう。
だけど私はそれを「経験」している。

これらの体験・経験から私は思うのです。
人は皆、自身が作り出す「世界」の中を
それを自分の「現実」として生きているんだな、と。

あなたの知らない世界

昔こんなタイトルのテレビ番組があったっけ。
(これが分かる方は私と同世代かな 笑)

私が体験した世界は他の誰にも分かりません。
つまり「あなたの知らない世界」です。
そして誰もがそんな「あなたの知らない世界」を生きているのではないでしょうか。

同じ場所で同じ光景、同じ出来事を共有していたとしても
人それぞれ体験している「世界」は全く違うものでしょう。
そして同じ人でも自分自身の状況や心境が変われば
それだけで、また世界はガラリと変わってしまうのだと思います。

電車に乗って周りを見渡すと自分以外にも沢山の乗客がいます。
そんな大勢の方達を眺めながら時々こんなことを考えます。
「あそこに座っている女性はもしかしたら昨日彼氏と別れたばかりで
今にも泣き出しそうになるのを我慢しているのかも」
「あそこに立っているサラリーマンは、昨日の夜奥さんから離婚したいと言われて、ショックで会社に行くのも辛いのかも」
「あそこの学生は、志望校の受験に失敗して何もかも嫌になってしまっているのかも」

そんな妄想を・・・と思われるでしょうが(笑
内容はともかく、こんなふうに人それぞれ誰もが様々な環境や事情の中で
自分だけが知る自分だけの世界の中を生きているのは事実だと思うのです。
私に見える風景は、他の人には全く違う風景に見えるのです。

今日の私には「美しい」と思える風景が
他の誰かにとっては「哀しい」風景に見え
他の誰かにとっては「灰色」のように空しい風景に見え
そして同じ風景が明日の私にはまた違う風景に見える
そうやって人は同じ世界を、日々違う世界として生きている
人の心が作り出す世界

そしてそれは逆に考えると
自分が生きている世界から自分自身の「心」を知ることができます。

そして更に自分の心の風景を変えることができれば
自分が生きている世界も変えることができる。
もし今自分が生きている世界が
自分の望むものではないと感じるのなら
自分の心を自分の望む「在り方」にすることで
自分の望む世界を作ることができる。

「創造は自分の内側から始まる」

あなたは今どんな「世界」を生きているでしょうか。
そしてそれは、あなたのどんな「心」が作りだしているのでしょうか。
それはあなたが望む「世界」でしょうか。
もし違うなら、あなたが本当に望む「世界」はどんな世界でしょうか。
あなたはどんな世界で生きていたいでしょうか。




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