にっぽん味ごよみ Hiroko Inaba

日本料理店での勤務や料理教室運営を経て、現在は東京のとある街で小料理屋を経営しています…

にっぽん味ごよみ Hiroko Inaba

日本料理店での勤務や料理教室運営を経て、現在は東京のとある街で小料理屋を経営しています。 昔の食文化や郷土料理に興味があり、当時の料理に思いを馳せて本を読むのが好きです。

最近の記事

【小料理屋レシピ】おつまみらっきょう

梅の季節と同時に、らっきょうも旬を迎えた6月。あらかじめ下処理された、“洗いらっきょう”も売っていますが、手間をかけられるならば、“泥付きらっきょう”を使って、旬の楽しさを味わって下さい。 泥付きらっきょうは、出回る時期が短く、古くなると緑がかってきたり、芯の部分も固くなりますので、仕込む時期を逃さないのが大切です。 手間をかけて下処理したらっきょうは、今年は4種類の味で仕込みました。塩抜き不要の直漬けなので、下処理さえ終わればあとは漬けるだけ。 色々な味わいでつくると、

    • 【小説の料理】定食屋「雑」/原田ひ香

      《本当の手作りコロッケにはそれにしかない味がある。衣が薄く、箸で割るとその下には柔らかいじゃがいもとスパイシーな肉。口に入れるととろりととける。》 《スパゲッティサラダが絶妙で、洋風とも和風ともつかない、今まで食べたことのない味だった。》 表紙のイラストがとにかく美味しそうで、どんな料理が登場するかワクワクしていた一冊。 つやつやの茶色いソースがたっぷりとかかったコロッケは、甘酸っぱい香りがしてきそう。 そしてつけあわせが、スパゲッティサラダというのも嬉しい! ハムカツ

      • 【小説の料理】いとしいたべもの/森下典子著@ポテトサラダ・サンドイッチ

        《ポテトサラダは、食パンに挟まるとなぜか一層美味しさが増す。私はその日のポテトサラダ・サンドイッチほど美味しいサンドイッチを、その後も食べたことがない。》 食品加工機械を作る株式会社カジワラさんのホームページで連載された、森下典子さんのエッセイ集です。 桃屋のご飯ですよ、サッポロ一番味噌ラーメン、ハウスバーモントカレーなど、昭和のCMとともに思い出す懐かしい味が、森下さん流のユーモア溢れる表現で描かれています。 カジワラさんのホームぺージの連載は現在は停止していますが、

        • 【小説の料理】彼女のこんだて帖/角田光代著@ピザという特効薬

          自宅の本棚の、いつでも手に取れる場所に置いてある大好きな一冊のひとつ。主人公の違う15話のストーリーは、それぞれの章が10ページほどの短編小説で、1話終わるたびに次の物語が気になってしまうような【しかけ】があります。 食べることの大切さが、優しくふんわりと描かれています。 巻末には、写真付きのレシピが掲載されて、作りたくなるものばかり。 今日はその中から、思春期の恋に悩む妹と、それを見守る兄のほんわかしたストーリー【ピザという特効薬】でふたりが作る手作りピザを作ってみました

        【小料理屋レシピ】おつまみらっきょう

          【小料理屋ツマミ】レーズンバター

          BARのおつまみの定番のひとつ、レーズンバター。 ふわっと香る洋酒と、甘くとろけるバターの味わいは、まさに大人のためのデザート。 銘酒のウイスキーやブランデーとのマリアージュは口福の瞬間です。 私のお店でも、お腹はいっぱいだけど軽くつまんで飲みたいというお客さんに出すと喜ばれます。 焼酎ロックなんかにもよく合うんですよ。 試してみたけど日本酒には合わなかったかな…。 日本酒に残る僅かな酸味とバターの油分が、 口中でどうしてもぶつかるような感じがしました。 バターにクリー

          【小料理屋ツマミ】レーズンバター

          【小説の料理を再現】そうざい料理帖/池波正太郎著@蕎麦のうす焼き

          池上正太郎さんがお酒とともに楽しんだおつまみ、【蕎麦のうす焼き】。 おやきをペタンコにしたような蕎麦粉のクレープのようなもの。 池波さんのエッセイによく登場する名店のビフテキとか、緊張感が張りめぐらされるどこかの寿司屋さんとかの料理ではない、素朴で懐かしい信州の郷土料理。 この料理も池波さんの長野出身の知人の方から教わったそう。 もし江戸の町にこんなクレープ屋さんがあったら、江戸っ子達に人気になっていたのでは?と感じます。 出来たてをそのまま提供すれば江戸の3代ファーストフ

          【小説の料理を再現】そうざい料理帖/池波正太郎著@蕎麦のうす焼き

          【小説の料理を再現】ベーコン/井上荒野著@アイリッシュ・シチュー

          複雑な男女関係や家族関係に、ひとしなの料理が携わるストーリーの短編小説集。人間関係の不協和音の中でもふわっといい香りが漂ってきそうな料理が登場して、少し暗いストーリーが多いですが、読んでいるとお腹が空いてきます。 主人公の女性が作るアイリッシュ・シチューは羊肉ではなく豚のばら肉。彼女の母親が残した古いレシピ本の中のメニューだそう。 アイリッシュという響きに推され、めったに使わないストウブの鍋を戸棚から引っぱり出して作ってみました。(やはり洋風煮込みはこれがないと完成しない

          【小説の料理を再現】ベーコン/井上荒野著@アイリッシュ・シチュー

          【小料理屋ツマミ】ホタルイカの田舎煮

          そろそろ終わり時期のホタルイカ。 2月~3月ごろから市場に出回り始めたときに比べて今が一番大きくて肝が詰まっていて美味しいです。                           今年は去年の5倍近くの漁獲量があったとか!でも獲りすぎると来年いなくなったりするから、高値にならないと良いけど…。 今日はホタルイカの田舎煮を作ります。 日本酒好きなお客さんにお通しで出すととても喜ばれます。ふきの煮物も添えて。 うちはカウンター7席の小料理屋なので、刺身用が余ったときによく作る

          【小料理屋ツマミ】ホタルイカの田舎煮

          生桜えびでかき揚げ蕎麦を

          駿河湾の春漁で獲れた生の桜えびです。 新鮮なうちはもちろんお刺身で。 鮮度がすぐ落ちるので、そんな時はかき揚げや炊き込みご飯にしたり。 地元の料理屋さんで食べるのが一番新鮮で美味しいかと思いますね、 あ~駿河湾行きたい。 揚げ物は家庭だとハードル高めですが、少ない油でも揚げれるのでお試しください。 最後までご覧いただき有難うございました。

          生桜えびでかき揚げ蕎麦を

          蕎麦打ち

          コロナ時代の緊急事態宣言中は、お店を休んでいた期間が長かったので以前から挑戦したかった蕎麦打ちを習いに行っていました。 500gの玉で慣れたあと、750g、1kg、最終的には1.5kgまで打ちましたが玉が大きくなるほど力もいるし大変な作業です。 お蕎麦屋さんは毎日何キロも打って凄いなと思いました。最近では女性の打ち手の方もお店を経営されていたりしますしね!憧れます✨♥ 毎日打っても自分で納得できるお蕎麦はなかなか出来ませんが、ひたすら打って早く上達したいです。

          鱈の白子の下処理

          冬到来! 秋の食材と入れ替わるように、鱈や白子や牡蠣、あんこうや肝、カニなど、鍋に欠かせない魚介が美味しくなってくる時期になりました。 飲食店もこれから暮れに向けて忙しくなってくるし、私も健康管理に気を付けて乗り切ろうと思ってます。 今お店で出しているメニューの中で一番人気は、鱈の白子です。 家だとなかなか食べないからね~と皆さんおっしゃいます。 お店で売っていても自宅で調理するのも下処理が難しそうだし、面倒だし…やはりお店で食べようという方が多いのでしょうか。 お鍋に入

          【小説の料理を再現】イワシのなめろう/下鴨料亭味くらべ帖

          ここ数年は食やグルメ系の小説や漫画がとても多いですよね。人気になるとドラマ化されたりして、夜中に観ていると急にお腹がすいてきたり… 話の中に出てくる料理を再現して作っている方がSNSで発信している記事も楽しくてつい読んでしまいます。 仕事柄、料理の雑誌ばかり読んでいた私ですが、【みをつくし料理帖】に出会ったのをきっかけに、いろいろな食系の小説なども読むようになりました。特に時代小説に出てくる食べ物など、和食屋の私には興味が湧きます。 さて、最近読み始めた「下鴨料亭味くら

          【小説の料理を再現】イワシのなめろう/下鴨料亭味くらべ帖

          黒枝豆の炊き込みごはん 

          黒枝豆は、夏のフレッシュな枝豆とは味と食感も異なる秋の枝豆です。 お正月用の黒豆を色づく前に収穫したものですが、とにかく粒が大きくてしっかりした豆の旨味があります。 兵庫県の丹波地方が有名ですね。昔から栗や豆などを育てるために粘土質の豊かな栄養が作物に影響しているそうです。 丹波栗なんかも大きくて立派ですよね。 今日は黒大豆を主役にして、五目炊き込みご飯を作ります。たっぷり2人分の量です。 米1合   ご飯の炊き汁:水170cc/醤油15cc/酒15cc  黒枝豆150g

          黒枝豆の炊き込みごはん 

          子持ち鮎も終わりの季節

          夏のイメージが強い鮎ですが、食べられる時期は一年を通じて意外と長かったりします。  4月から5月に出回る稚鮎(ちあゆ)は8センチほどの大きさで、骨も柔らかいので揚げれば丸ごと食べれます。市場に並ぶようになると、あ~もう夏かと一年の早さを感じるようになります。 初夏からはいよいよ成魚が出回る季節。 スーパーなどで気軽に手に入る鮎はたいてい養殖のものですが、鮎特有のスイカの香りはしっかりとあるし脂ものっていて美味しい。 もし天然ものと並べてあったらむろんそちらに手が伸びると思い

          子持ち鮎も終わりの季節

          江戸の庶民はふわふわが好き?

          江戸の料理書の中でよく登場する【しんじょう】。 柔らかいはんぺんのような食感で、日本料理の【椀物】では主役の椀種としても使われます。 歴史を遡ると1690年(江戸中期)に書かれた料理書【茶湯献立指南 ちゃのゆこんだてしなん】 には、魚のすり身に山の芋をすりまぜて形どり、茹でたり蒸したり揚げたりしたものとして、しんじょうの歴史の中では最も古い文献として紹介されているようです。 江戸料理研究家の松下幸子さんの本を読んでいたら急に作りたくたったので、今日は1764年に発刊された

          江戸の庶民はふわふわが好き?