【小説の料理】定食屋「雑」/原田ひ香
《本当の手作りコロッケにはそれにしかない味がある。衣が薄く、箸で割るとその下には柔らかいじゃがいもとスパイシーな肉。口に入れるととろりととける。》
《スパゲッティサラダが絶妙で、洋風とも和風ともつかない、今まで食べたことのない味だった。》
表紙のイラストがとにかく美味しそうで、どんな料理が登場するかワクワクしていた一冊。
つやつやの茶色いソースがたっぷりとかかったコロッケは、甘酸っぱい香りがしてきそう。
そしてつけあわせが、スパゲッティサラダというのも嬉しい!
ハムカツとポテトサラダみたいに、間違いない組み合わせ。
主人公は、「雑 ざつ」という定食屋を営む、70代の女性店人“みさえ”と、ひょんなことからアルバイトすることになった30代の‘’沙也加‘’。
世代の違う2人が料理を通じて心の支えとなり、苦難を乗り越えて生きていくストーリーです。
年老いて、足腰が悪くなるまで毎日厨房に立つみさえがたくましくて、
同じ飲食店を生業とする私は、物語の中に入り込んだ気持ちで読んでいました。
今日は「定食屋雑」の人気メニュー、手作りコロッケを作ってみました。
デリバリーサービスの繁栄、都市計画や再開発によってどんどん無くなっていく、昭和の匂いのする小規模飲食店。
場末でも、古くても、そんな居場所を求めてやってくる人たちはまだたくさんいる。そしてみさえや沙也加のように、強く生きる女性たちも。
雑のような、温かい定食屋さんがいつもそばにある街に、これからも住んでいきたいと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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