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【1分で読了!即興小説】理想的な海辺

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理想的な海辺


【本文】


私はデッキブラシとバケツを持って、現場に向かうため、歩いていた。

この堤防沿いの、人気のない道に目的の場所がある、と依頼者に告げられたのは、

これから就寝しようとしていた真夜中のことだった。


私の仕事はいつも突然、舞い込んでくる。

仕方がない。ここからは時間との勝負だ。



現場に着いた。


派手にやってくれたわ。

アスファルトには大量の血。
バラバラになった遺体。

夜明けまでに片付くだろうか。



私は堤防を乗り越えて、海水を汲んできて、
とりあえずブラシで血を流した。

遺体はごみ袋に入れて、私のすぐあとに到着した別業者に引き渡した。


路面にこびりついた血はなかなかとれない。

薬品をぶっかけて洗い流し、
また薬品をぶっかけて洗い流す。

その繰り返し。


秋の夜長に冷たい海風。
そんな中でも、額には汗。


もうすぐ朝日が昇る。



血糊はなかなかとれない。

それでもやっとのことで、元通りのアスファルト路面に戻すことができた。




私は堤防に腰掛け、朝日が昇るのを待ちながら煙草を吹かした。



海は良い。

嫌な臭いも、嫌な血糊も、
すべて海風や海水が取り除いてくれる。



今日の仕事は、これでも楽な方だった。


また海辺だったら良いのにな。




朝日を見た。
とてもきれいだった。

さぁ、家に帰って寝直すとするか。


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