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【1分で読了!即興小説】天国の野球

【お題】


天国の野球


【本文】


夢のような時間だった。



そこでは、ごはんも出るし、暖かい布団で寝ることもできたし、
何より風呂には入ることもできた。

仕事も用意されている。

まさに至れり尽くせりだったよ。



こんな最高な生活、またしてみてぇな。

友達もたくさんできたしよ。



そうそう、

一番の思い出と言ったら、
月に一回行われる、野球大会だ。


子どもの時以来だよ。
あんなに楽しかったのは。


体は思うように動かねぇけど、
それはみんな同じなんだな。

すっころんだり、息切れしてちょっとしたゴロがランニングホームランになっちまったり、

端から見たら野球に見えねぇんじゃねぇか?

とにかく面白かった。
大笑いしたよ。




でもよ、俺たちはやっぱり元々ろくでなしなわけでさ、
やっぱり起こっちゃうわけよ、喧嘩。


俺が打席に立ったときに、ルームメイトの池田ってやつが、
とんでもない球を投げてきやがって、頭にきちまってさ。


思わず、バットでぶん殴ってやったのさ。



ああ、またやっちまったと思ったよ。




そんでいろいろ揉めて大乱闘なって、
結局、俺が一番ペナルティ食らっちゃってさ。






独房入りよ。

みんなとは離ればなれになっちまった。




寂しかったなぁ。
それから出所までは、ずっと一人だった。

寂しかったなぁ。


ああ、
またやりてぇな。

野球。



今日は渋谷公園で炊き出しやってるみたいだから、

それ食ったら、やってみるか?
野球。



あ、だめだ。

バットとボールがねぇわ。

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