高校野球とわたし
自宅の川向こうに野球場がある。春夏秋と高校野球の地区大会が行われるが、打ち鳴らされる太鼓の音と野太い声援が聞こえてくるといてもたってもいられなくなる。母校でもなければ甲子園常連校でもない、縁もゆかりもない高校同士のカードであっても構わなかった。いつぞやの夏、日焼け対策に失敗し広範囲にわたって軽度の火傷を負ってからは春と秋しか行かなくなったが、ちょっとコンビニ行ってくるみたいなノリで球場に足を運ぶのだ。
この連休中にも行って来た。上の画像はそのとき撮ったものである(加工したら河原和音先生のマンガ「青空エール」のように!)。日頃の疲れがドッと出たのか体調がよろしくなく野球観戦はいかがなものかとも思ったが「部屋でゴロゴロしているうちに10連休は終わりました」ではあんまりである。日本を出国する規模の遠出だって可能な大型連休なのにあんまりすぎるだろ!と軽くブチ切れて、わたしは車のキーを掴んだのだった。
以前観た試合のことだ。 ピッチャーがフォアボール、デッドボール、ワイルドピッチと相手チームの出塁に貢献した挙句とどめと言わんばかりに打ち込まれても「いいぞピッチャー!ナイスボールナイスボール!!」とのどから血が出るんじゃないかってほど声を張り上げて盛り立て続けるライトがいた。ナイスボールではないから満塁になったのだし、ナイスボールではないから3失点、4失点とコールドゲームに刻一刻と近づいていっているのに、逆にピッチャーから「ナイスボールって嫌味か!」とか突っ込まれそうなのにライトはナイスボールナイスボール叫び続けていた。何でもかんでもナイスボール。失礼を承知で申し上げると、ちょっとバカっぽい。
スタンドではベンチ入りできなかった部員たちが跳んだり跳ねたりして応援しているが、ソックスのせいで滑って転んだりする。危ない。即座に起き上がって振付に追いつこうとしてまた転ぶ。失礼を承知で申し上げると、やっばりバカっぽい。しかし高校生ならそれが許されるし、むしろ高校生らしいとさえ思う。まったくもって微笑ましい。キレッキレに踊りジャンプすることにより転倒は十分考えられるのだから、そーっと慎重に踏み切ろうなどとは一切思わないのが高校生なのだろう、きっと。何なら、このステップからのジャンプは大変危険なのでなしで、と振付を変更してもいいはずなのに。
年齢を重ねるにつれバカではいられなくなるのが悲しいが現実だ。年齢なんて関係ないなどといったきれいごとはやめていただきたい。バカを拒絶し、否定しまくるのが社会ってヤツである。いずれは否が応でもバカではいられなくなるのだからやれるうちにバカやっといたほうがいい。
わたしはスタンドで、あーいいなあバカで……と思って観ている。正直言ってうらやましいことこの上ないのだった。
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