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【読了1分!即興小説】あいつとピアニスト

【お題】

あいつとピアニスト

【本文】


私の友人はほぼ毎日、夕暮れ時になると、
早々と自営の仕事を切り上げて、とある場所に赴く。

崖の上、断崖絶壁、太平洋が一望できるポツンと佇む木造の小屋。

そこに、一人の男に会いに行く。



友人は、男のピアノの演奏を聴きに行っているらしい。



ある時、私は、
友人を見かけ、なんとなく時間をもて余していたので、こっそり着いていくことにした。


友人が男の家に入った後、
しばらくしてピアノの音が聴こえてきた。

私はそれを、小屋の外から窓越しに覗いた。





何だか様子がおかしい。

友人は何故か素っ裸で、四つん這いになり、
ピアノを演奏する男の方に顔を向けていた。


何をしているんだ…


演奏が激しくなるにつれ、
友人もそれに合わせるように体を震わせる。


おいおい、どうなってやがるんだ…



秋風が冷たい日であったが、私は額に汗をかきながら、
しばらくその様子を観察していた。




友人の動きが激しくなり、悶えるように体制を崩し、床でもがくような動きになったのを見て、


これは、まずい。
助けなければ!



私は意を決して、
部屋に突入した。



すると、
彼らは驚いて、動きが止まった。



見てみると、
ピアノの鍵盤のいくつかには糸が繋がっていて、

それは友人のいくつかの敏感なところに結びつけられていた。




これは…



彼らはばつが悪そうに、俯き、


「内緒にしてな」


と、頼んできた。






私はごくりと生唾を飲み込んだ。

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