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小説を書く/読むことが好きです! 音楽はメタルをよく聴きます。 どうぞよろしくお願い致…

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小説を書く/読むことが好きです! 音楽はメタルをよく聴きます。 どうぞよろしくお願い致します。

最近の記事

【短編小説】ガラクタ置き場の夜

 一口に東京と言っても、浅草の浅草寺やその周辺と、渋谷の繁華街、用賀の高級住宅街、ましてや西の奥多摩の方とでは雰囲気は全く異なっている。しかし、こと一般的な住宅街、特に一人暮らしの男が暮らすようなアパートがところどころにあるような23区内の住宅街に限定するのであれば、大体どこでも同じような風景であると言っても許されるだろう。そこに暮らしている者は、例えば少し離れたスーパーから総菜コーナーで選んだかき揚げの入った手提げ袋を片手に帰宅する時、自分が今正確にどの所番地の通りを歩いて

    • 【中編小説】 Deneutralized, neutralized (Part 4, 最終回)

      第67回群像新人文学賞に応募した作品です(結果は一次落ちでした)。 面白いのでぜひご覧ください😆 なお、縦書きでもご覧いただけるように縦書きverのpdfを用意いたしました。 よろしければご活用ください。 こちらはPart 4(最終回)となります。 ・Part 1はこちら ・Part 2はこちら ・Part 3はこちら それでは以下より本文になります。  御岳山岳救援隊のメンバー、リキ、ドンキ、マナブ、メイの四名は、朝日が昇るにつれて薄く緑色になり始めた伸び放題で背の

      • 【中編小説】 Deneutralized, neutralized (Part 3)

        第67回群像新人文学賞に応募した作品です(結果は一次落ちでした)。 面白いのでぜひご覧ください🙂‍↕️ なお、縦書きでもご覧いただけるように縦書きverのpdfを用意いたしました。 よろしければご活用ください。 こちらはPart 3となります。 ・Part 1はこちら ・Part 2はこちら それでは以下よりPart 3本文になります。  爪が割れ、剥がれ落ちるのにも気づかぬままに、男はハンマーを打ち下ろしていた。ハンマーと金属がぶつかる度に火花が散って、暗い作業場が

        • 【中編小説】 Deneutralized, neutralized (Part 2)

          第67回群像新人文学賞に応募した作品です(結果は一次落ちでした)。 面白いのでぜひご覧ください😉 なお、縦書きでもご覧いただけるように縦書きverのpdfを用意いたしました。 よろしければご活用ください。 こちらはPart2となります。 ・Part1はこちら それでは以下よりPart2本文になります。  小坂雄二は私だ。証拠の一つ目は、"身体的特徴"である。少年サッカークラブで地面とぶつかって少し曲がってしまった鼻梁、抜歯寸前に歯医者から脱走してそれっきりの親知らず、

        【短編小説】ガラクタ置き場の夜

          【中編小説】 Deneutralized, neutralized (Part 1)

          第67回群像新人文学賞に応募した作品です(結果は一次落ちでした)。 面白いのでぜひご覧ください😌 なお、縦書きでもご覧いただけるように縦書きverのpdfを用意いたしました。 よろしければご活用ください。 それでは以下より本文になります。  茶色に枯れていく植物を見て、植物が死ぬ瞬間というのは一体どの瞬間のことなのだろう、と誰かが呟いても答えを得る前に季節は移り、草花が新たな生命の喜びを発散させる、そうしたサイクルが何千年と繰り返されているために我々人類はかろうじて生き

          【中編小説】 Deneutralized, neutralized (Part 1)

          【掌編小説】不埒な墓荒らし

           小学生くらいの男の子が、母親、というには若いので恐らく歳が離れた姉だと思うのだが、その姉と2人で河川敷を歩いている、そして周囲から孤立して灌木の中をただ一本生えているシダレヤナギの根元の地面を掘り、何かを穴に入れ、また土を被せて埋めていった。埋めるのに使っていたスコップの青い塗装は剥げていた。2人は黙ったまま、両手を合わせて祈るようなポーズをとると、その場を離れてやってきた道を正確に逆戻りし、やがて見えなくなった。その一連のシーケンスを私は少し離れたところで柔軟体操をしなが

          【掌編小説】不埒な墓荒らし

          【掌編小説】 何のための花束だったか

           こんな古ぼけた、陰惨な感じさえする小さな通りに「素敵」で「可愛らしい」と評判の花屋が本当に存在するとも思えなかったが、妻がベリーダンス教室のロゴ入りのペンでメモ用紙に描いた粗雑な地図を頼りに通りを歩くと、まだ昼間だから人の気配のしない紫の看板のスナックやら居酒屋やらに挟まれてちょこんとした店構えの花屋が実際に現れたものだから、妻のことをからかい半分に信じなかった自分を恥じる以上に、この花屋では常連客には麻薬か違法な植物か何かが売られているんじゃないか、でないとこんな気味の悪

          【掌編小説】 何のための花束だったか

          【掌編小説】 緑の誘導灯

           四十歳になった日に書いた遺書を一年が経ってから読み直すと、その字の美しさには我ながら惚れ惚れとさせられる。私は書道は習ったことはなかった。生まれ育った街に、書道教室がなかったためである。一方でその街にはピアノ教室が三軒あった。どのピアノ教室も内装やインテリア、建築的な構造が非常に似通っており、中に入るとほとんど区別できなかった──見学に行き、玄関を開けるとすぐに、壁に取りつけられた鹿の頭部が目に入る。その頭部の、普通の鹿ではあり得ない、何十本も枝分かれた明らかに病的な形の角

          【掌編小説】 緑の誘導灯